ロリカタ類

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ロリカタ類
三畳紀ポストスクス(上)
現生のイリエワニ(下)
地質時代
前期三畳紀オレネキアン - 現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 四肢動物上綱 Tetrapoda
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
階級なし : 偽鰐類 Pseudosuchia
階級なし : ロリカタ類 Loricata
学名
Loricata Merrem1820
下位分類群

ロリカタ類(ロリカタるい、学名Loricata[1]は、ワニとそれに関連する三畳紀の複数の分類群を含む、主竜類に属する爬虫類系統群。特に、ワニ形上目側系統群である大部分のラウイスクス類が内包される[2]。ロリカタ類は側ワニ形類Paracrocodylomorpha[3]の系統を二分するうちの一つであり、もう一方の枝は植物食性のものや背部に帆を持つものなど特異的な形態のラウイスクス類からなるポポサウルス上科英語版である。典型的なラウイスクス類の大部分は主として四足歩行の捕食動物であり、ワニ形類に至るロリカタ類の基盤的位置を占める[2]

歴史と分類[編集]

ロリカタ類は1820年にドイツの博物学者ブラシウス・メレム英語版により彼の著書 Versuch eines Systems der Amphibienで命名されたが、その文脈は完全に異なるものであった。メレムはロリカタ類を爬虫類の Pholidota の三大グループの1つであると考え、残る2つを Testudinata(カメ)と有鱗目トカゲヘビ)と考えた[4]。ロリカタ類は2011年に新たな系統学的定義を与えられた。古生物学者スターリン・ネスビット英語版は初期主竜類の系統を研究し、Crocodylus niloticus を含むが Poposaurus gracilisOrnithosuchus longidens および Aetosaurus ferox を含まない最も包括的な系統群としてロリカタ類を定義した。後者3種は恐竜よりもワニに近縁な三畳紀の絶滅した主竜類である[2]

ネスビットは以下の形質状態をロリカタ類の共有派生形質と考えた。

  • 4本の前上顎骨歯。
  • 鱗状骨の下側の枝に存在する1本の稜。
  • 上側頭窓に侵入する、鱗状骨の1個の突出。
  • 前後に狭く上下に高い眼窩
  • 腓骨長の下半分に位置する、腸腓骨筋の付着する1本の稜。
  • 第四遠位足根骨の関節と踵骨結節の先端との間に位置する明瞭な間隙。
  • 第五中足骨の端から窪んだ間隙によって隔てられた、当該の骨の基部に位置する突起。

ネスビットの系統解析では、ワニ形上目とラウイスクス類の列がロリカタ類に置かれた。ラウィスクス科は小規模な系統群として再現され、ワニ形類の姉妹群に位置付けられた。一方でプレストスクス科英語版側系統の段階群として組み込まれ、より基盤的な一連のロリカタ類を形成した。ロリカタ類は三畳紀のラウイスクス類であるポポサウルス上科英語版の姉妹群とされた。以下のクラドグラムは Nesbitt (2011) に従う[2]

Paracrocodylomorpha 

ポポサウルス上科英語版

 ロリカタ類 

Prestosuchus

Saurosuchus

Batrachotomus

Fasolasuchus

ラウィスクス科

ワニ形上目

側ワニ形類英語版

França, Langer and Ferigolo (2011) は Nesbitt (2011) の解析に内群を加え、デクリアスクス英語版を最も基盤的なロリカタ類に位置付けた。この追加はチキノスクス英語版の位置にも影響しており、ネスビットの解析でロリカタ類の外に位置付けられていた本属はロリカタ類の基盤的な属として再配置された[5]

2011年以前には、ポポサウルス上科はラウィスクス科やプレストスクス科よりもワニ形上目に近縁な分類群として見られることがあった。側ワニ形類英語版は、ポポサウルス科とワニ形上目を内包する系統群として1993年に命名された。側ワニ形類は元々ラウィスクス科とプレストスクス科を除外する系統群であったが、Nesbitt (2011) は側ワニ形類に属する大部分の属がポポサウルス上科よりもワニ形上目に近いことを明らかにした。このため、側ワニ形類は2つに分岐したグループとして再定義され、ポポサウルス上科を含む系統とロリカタ類を含む系統を纏めたものとなった。この再定義により、ロリカタ類は側ワニ形類の下位分類群となった[2]

なお、Paracrocodyliformesと呼ばれる系統も2007年に設立されており、この系統の中ではラウィスクス科とプレストスクス科がワニ形上目に近縁に位置付けられ、より基盤的位置にポポサウルス上科が位置付けられている[6]

出典[編集]

  1. ^ 土屋健『地球生命 水際の興亡史』技術評論社、2021年7月28日、105頁。ISBN 978-4-297-12232-4 
  2. ^ a b c d e Nesbitt, S.J. (2011). “The early evolution of archosaurs: relationships and the origin of major clades”. Bulletin of the American Museum of Natural History 352: 1–292. doi:10.1206/352.1. https://digitallibrary.amnh.org/handle/2246/6112. 
  3. ^ スティーヴ・パーカー編、日暮雅通・中川泉 訳「第5章 爬虫類」『生物の進化大事典』養老孟司 総監修・犬塚則久 4-7章監修、三省堂、2020年、228–229頁。
  4. ^ Merrem, B. (1820). Versuch eines Systems der Amphibien. Krieger. pp. 191. https://www.biodiversitylibrary.org/item/24624#page/5/mode/1up 
  5. ^ Marco Aurélio G. França; Max C. Langer; Jorge Ferigolo (2011). “Incorporating Decuriasuchus quartacolonia (Pseudosuchia) into the archosaur phylogeny”. Ameghiniana 48 (Supplement to 4): R63. http://www.ameghiniana.org.ar/index.php/ameghiniana/article/view/614/1232. 
  6. ^ Weinbaum, J.C.; Hungerbühler, A. (2007). “A revision of Poposaurus gracilis (Archosauria: Suchia) based on two new specimens from the Late Triassic of the southwestern U.S.A.”. Paläontologische Zeitschrift 81 (2): 131–145. doi:10.1007/BF02988388.