ラマヌジャンのタウ函数

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ラマヌジャンのタウ関数(ラマヌジャンのタウかんすう)は, Ramanujan (1916) によって研究された関数で,次の等式によって定義される関数 τ: NZ である:

ただし Im z > 0 なる z に対し q = exp(2πiz) であり,ηデデキントのイータ関数であり,関数 Δ(z)ラマヌジャンのデルタ関数と呼ばれる,ウェイト12,レベル1の正則尖点形式である.それは整数を24個の平方数の和として表す方法が何通りあるか、数えるときの「誤差項」に関連して現れる.イアン・G・マクドナルド英語版 (Ian G. Macdonald) による公式が Dyson (1972) において与えられた.

対数スケールでの n < 16,000 に対する |τ(n)| の値.青い線は 121 の倍数であるような n の値だけを拾い出している.

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タウ関数の最初のいくつかの値は以下の表で与えられる(オンライン整数列大辞典の数列 A000594):

n 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
τ(n) 1 −24 252 −1472 4830 −6048 −16744 84480 −113643 −115920 534612 −370944 −577738 401856 1217160 987136

ラマヌジャン予想[編集]

Ramanujan (1916)τ(n) の次の3つの性質を観察したが証明はしなかった:

  • τ(mn) = τ(m)τ(n)gcd(m, n) = 1 のとき成り立つ(つまり τ乗法的関数である).
  • τ(pr + 1) = τ(p)τ(pr) − p11τ(pr − 1)p が素数で r > 0 のとき成り立つ.
  • |τ(p)| ≤ 2p11/2 がすべての素数 p に対して成り立つ.

最初の2つの性質は Mordell (1917) によって証明され,ラマヌジャン予想と呼ばれる3つ目は,Deligne により1974年にヴェイユ予想の彼の証明の結果として証明された(具体的には,彼はヴェイユ予想をクガ・サトウ多様体に適用することによって証明した).

タウ関数の合同関係[編集]

kZnZ>0 に対して,σk(n)n の約数の k 乗の和として定義する.タウ関数はいくつかの合同式を満たし,その多くが σk(n) を用いて表せる.いくつかを挙げる[1]

  1. [2]
  2. [2]
  3. [2]
  4. [2]
  5. [3]
  6. [3]
  7. [4]
  8. [5]
  9. [5]
  10. [6]

素数 p ≠ 23 に対して,次が成り立つ[1][7]

  1. [8]

τ(n) に関する予想[編集]

f はウェイト k の integer newform でありフーリエ係数 a(n) は整数であるとする.次の問題を考える: f虚数乗法をもたないとき,ほとんどすべての素数 p という性質を持つことを証明せよ.実際,多くの素数はこの性質を持たなければならず,したがってそれらは ordinary と呼ばれる.ドリーニュとセールによってガロワ表現について大きな進展があり,p と互いに素な n に対して a(n) mod p が決定されたが,a(p) mod p の計算方法の手掛かりは得られていない.この点での唯一の定理はエルキースのモジュラー楕円曲線に対する有名な結果であり,それは確かに無限個の素数 p に対して a(p) = 0 でありしたがって 0 mod p であることを保証する.無限個の素数 p に対して a(p) ≠ 0 mod p なるウェイト > 2 の虚数乗法を持たない f の例は知られていない(ほとんどすべての p に対しては正しいのであるが).無限個の p に対して a(p) = 0 mod p であるような例もまた知られていない.本当に無限個の p に対して a(p) = 0 mod p であるのかどうか疑い始めた人々もいた.証拠として多くの人は(ウェイト 12 の)ラマヌジャンの τ(p) を挙げた.τ(p) = 0 mod p であることが分かっている最大の pp = 7758337633 である.方程式 τ(p) ≡ 0 mod p の解は 1010 まででは p = 2, 3, 5, 7, 2411, 7758337633 のみである[9]

Lehmer (1947) はすべての n に対して τ(n) ≠ 0 であると予想し,これはレーマーの予想と呼ばれることもある.レーマーは n < 214928639999 に対して予想が正しいことを証明した (Apostol 1997, p. 22).次の表はこの条件がいくつまでの n について成り立つかの進展をまとめたものである.

n 文献
3316799 Lehmer (1947)
214928639999 Lehmer (1949)
1015 Serre (1973, p. 98), Serre (1985)
1213229187071998 Jennings (1993)
22689242781695999 Jordan and Kelly (1999)
22798241520242687999 Bosman (2007)
982149821766199295999 Zeng and Yin (2013)
816212624008487344127999 Derickx, van Hoeij, and Zeng (2013)

脚注[編集]

  1. ^ a b Page 4 of Swinnerton-Dyer 1973
  2. ^ a b c d Due to Kolberg 1962
  3. ^ a b Due to Ashworth 1968
  4. ^ Due to Lahivi
  5. ^ a b Due to D. H. Lehmer
  6. ^ Due to Ramanujan 1916
  7. ^ Due to Wilton 1930
  8. ^ Due to J.-P. Serre 1968, Section 4.5
  9. ^ Due to N. Lygeros and O. Rozier 2010 Archived 2014年4月7日, at the Wayback Machine.

参考文献[編集]