マルコム・ムーニー

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マルコム・ムーニー
Malcolm Mooney
生誕 1944年(79 - 80歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ジャンル クラウトロック
職業 ミュージシャン
担当楽器 ボーカル
共同作業者 カン、テンス・プラネット
公式サイト malcolmmooney.com

マルコム・ムーニーMalcolm Mooney1944年 - [1])は、アメリカ合衆国の歌手、詩人、アーティストであり、ドイツクラウトロック・バンドであるカンのオリジナル・ボーカリストとして最もよく知られている。

略歴[編集]

ムーニーは高校から歌い始め、「Six-Fifths」として知られるアカペラ・ボーカル・グループのメンバーを務めた[2]。ニューヨークで彫刻家として名声を得た後、ドイツに移り、バンドを結成していたイルミン・シュミットホルガー・シューカイの友人となった。ムーニーはリード・ボーカリストとしてバンドに参加。バンドは当初「インナー・スペース (The Inner Space)」として知られていたが、ムーニーが「ザ・カン (The Can)」の名を思いつき、後にカンに短縮された[2]

最初は『Prepared To Meet Thy Pnoom』と題されたアルバムのマテリアルが録音されたが、リリースする意思のあるレコード会社はなかった。それは後の1981年に『ディレイ1968』としてリリースされている[3]。カンのセカンド・アルバムが、1969年にリリースされた彼らのデビュー作『モンスター・ムーヴィー』となった。それはドイツのアンダーグラウンド・シーンにおいて成功を収めた。この期間にムーニーがバンドとともに録音した他のさまざまな楽曲は、コンピレーション・アルバムの『サウンドトラックス』と『アンリミテッド・エディション』に収録されている。ムーニーはバンドを脱退し、『モンスター・ムーヴィー』のレコーディング直後にアメリカへと戻っていった。精神科医から、カンの混沌とした音楽から離れることが、彼の精神衛生にとってより良いと言われたためである。アルバムのライナーノーツでは、ムーニーが神経衰弱に苦しみ、「上がってんの、下がってんの(upstairs, downstairs)」を繰り返し叫んでいたと主張している。

1986年、再びカンに参加して、1回限りの再結成アルバム『ライト・タイム』をレコーディングした。彼はまた、サンフランシスコ・ベイエリアのバンドであるテンス・プラネットで3枚のアルバムをリリースした。その1枚目には、『モンスター・ムーヴィー』の「Father Cannot Yell」の新バージョンが収録されている[2]。2枚目のテンス・プラネットのアルバムでは、別のラインナップが導入され、アルバムはPヴァイン・レーベルから日本限定でリリースされた。Unfortunate Miracleレーベルは、その発売に先立ち、次のアルバムからの2つの初期ミックスを含む限定7インチ・ピクチャー・ディスク・シングルをリリースした。2002年、ムーニーは、アンディ・ヴォーテルのアルバム『All Ten Fingers』にて、同名のムーニーによる詩のバージョンによる「Salted Tangerines」で歌うよう招かれた。その後、テンス・プラネットは「Milviason Records」から『inCANtations』というタイトルのアルバムをリリースした。ムーニーは現在、自身のビジュアルアートの仕事に焦点を当てている[4]。2007年、マシュー・ヒッグスがムーニーを招待し、ニューヨークの由緒あるホワイト・コラムに作品を展示した[5]

2013年、ムーニーは、ドラマーにしてソングライターで音楽プロデューサーのショーン・ヌーナンとのコラボレーションを開始し、ジャマラディーン・タクマ、アラム・バジャキアンと共に『Pavees Dance: There's Always the Night』をレコーディングした。このグループは、2014年6月にリリースされたCDと、その歌詞やムーニーのアートワークを含む書籍の発売に先立って、2014年2月にフランスのSons d'hiverフェスティバルにて演奏を行った。

2017年4月、ムーニーはロンドンのバービカン・センターに「The Can Project」のリード・シンガーとして出演した。それはイルミン・シュミットとの再会を果たしたコンサートで、ソニック・ユースのサーストン・ムーアとマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのデビー・グッギが参加した。カンのドラマー、ヤキ・リーベツァイトは最近亡くなった。コンサートはさまざまなレビューを受け、特にムーニーのボーカルではサウンドの問題を抱えていた[6]

ディスコグラフィ[編集]

カン[編集]

  • モンスター・ムーヴィー』 - Monster Movie (1969年)
  • サウンドトラックス』 - Soundtracks (1970年)
  • 『アンリミテッド・エディション』 - Unlimited Edition (1976年) ※1968年–1975年のレア音源集
  • 『ディレイ1968』 - Delay 1968 (1981年) ※1968年–1969年の未発表曲集
  • 『ライト・タイム』 - Rite Time (1989年)
  • 『アンソロジー』 - Anthology (1993年) ※ベスト・アルバム
  • 『ザ・ロスト・テープス』 - The Lost Tapes (2012年) ※1968年-1977年のスタジオ&ライブ未発表音源集
  • 『ザ・シングルス』 - The Singles (2017年) ※シングル・コレクション

テンス・プラネット[編集]

  • 『マルコム・ムーニー・アンド・ザ・テンス・プラネット』 - Malcolm Mooney and the Tenth Planet (1998年)
  • 『ヒステリカ』 - Hysterica (2006年)
  • inCANtations (2011年)

参加アルバム[編集]

With アンディ・ヴォーテル

  • All Ten Fingers (2002年)

With デイヴ・タイアック

  • Rip Van Winkle (2003年)

With ショーン・ヌーナン

  • Pavees Dance: There's Always the Night (2014年)
  • Tan Man's Hat (2019年)

With ジェーン・ウィーヴァー

  • Modern Kosmology (2017年)

ビデオグラフィ[編集]

  • Romantic Warriors IV: Krautrock (2019年)

脚注[編集]

  1. ^ Young & Schmidt 2018, p. 71.
  2. ^ a b c Malcolm Mooney”. AllMusic (2015年). 2015年1月26日閲覧。
  3. ^ Czukay, Holger (2005年). “Holger Czukay's Short History of the Can”. furious.com. 2008年4月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月26日閲覧。
  4. ^ Malcolm Mooney”. Spoon Records (2015年). 2015年1月26日閲覧。
  5. ^ White Columns (Exhibitor) in New York, NY”. Re-title.com (2015年). 2016年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月26日閲覧。
  6. ^ The Can Project review”. The Guardian (2017年). 2020年8月18日閲覧。

引用作品[編集]

  • Young, Rob; Schmidt, Irmin (2018). All Gates Open: The Story of Can. London: Faber and Faber. ISBN 978-0571311491 

外部リンク[編集]