ブーバ/キキ効果
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ブーバ/キキ効果(ブーバ キキこうか、Bouba/kiki effect)とは心理学で、言語音と図形の視覚的印象との連想について一般的に見られる関係をいう。心理学者ヴォルフガング・ケーラーが1929年に初めて報告し、命名はV.S.ラマチャンドランによる[1]。
概要
[編集]それぞれ丸い曲線とギザギザの直線とからなる2つの図形を被験者に見せる。どちらか一方の名がブーバで、他方の名がキキであるといい、どちらがどの名だと思うかを聞く。すると、98%ほどの大多数の人は「曲線図形がブーバで、ギザギザ図形がキキだ」と答える[2]。しかもこの結果は被験者の母語にはほとんど関係がなく、また大人と幼児でもほとんど変わらないとされる。このブーバ/キキの対比は一般には、「円唇母音または唇音/非円唇母音または非唇音」と捉えられる[3]。
どのような音からどのような概念を連想するか(音象徴)に関しては、文化・言語の枠を超えた法則はないとされている。しかしこの効果は、少なくとも図形の印象に関してはある程度、そのような関係があることを示している。「フワフワ」「ギザギザ」という擬態語も基本的にはこの関係に基づいていると考えられる[4]。
なお、大脳皮質角回に損傷のある人や自閉症の人では、上のような顕著な結果は得られず[5]、ラマチャンドランらは、これらの人が不得意とする隠喩の解釈と関係があるのではないかと考えている[6]。
脚注
[編集]- ^ V.S.ラマチャンドラン & E.M.ハバード 2007, p. 50.
- ^ V.S.ラマチャンドラン & E.M.ハバード 2007, p. 49.
- ^ 清水祐一郎 2016, p. 27.
- ^ 清水祐一郎 2016, p. 23.
- ^ 松本直子 2012, p. 33.
- ^ 熊野雅仁 2007, p. 37.
参考文献
[編集]- 「自閉症の原因に迫る」(V.S.ラマチャンドラン・L.M.オバーマン):日経サイエンス2007年2月号
- 「脳のなかの幽霊、ふたたび」(V.S.ラマチャンドラン著、山下篤子訳、角川書店)ISBN 4-04-791501-7-C0098
- D. Maurer et al. Dev Sci. 2006 May;9(3):316-22: The shape of boubas: sound-shape correspondences in toddlers and adults.[1]
- V.S.ラマチャンドラン、E.M.ハバード「数字に色を見る人たち--共感覚から脳を探る」『別冊日経サイエンス』第157号、日経サイエンス、2007年、30-39頁、ISSN 09170626、NAID 40015641047。
- 熊野雅仁「解説:映像の言語と文法(6) -言語・文法の自律と言語・文法能力獲得へのミラーニューロン・音楽の関与-」『龍谷理工ジャーナル』第19巻第2号、龍谷大学理工学会、2007年、31-45頁、OCLC 919070682。
- 松本直子「認知考古学からみた新人・旧人の創造性」『考古資料に基づく旧人・新人の学習行動の実証的研究』第2号、東京大学、2012年、32-38頁、OCLC 1183053096。
- 清水祐一郎『音象徴に基づくオノマトペの印象評価システムと生成システムの設計』 電気通信大学〈博士(工学) 甲第868号〉、2016年。NAID 500001048556 。