コンテンツにスキップ

カイカシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

カイカシー: कैकसी, Kaikasī)は、インド神話に登場するラークシャサの女性(ラークシャシー)である。ラークシャサの王スマーリンの娘で、ヴィシュラヴァスの妻、ラーヴァナクンバカルナシュールパナカーヴィビーシャナの母。

神話

[編集]

叙事詩ラーマーヤナ』によると、スマーリン王の時代、ラークシャサはランカー島から追い払われ、地下世界パーターラに亡命し、王都ランカーはヤクシャ族の王であり富の神であるクヴェーラ神の支配するところとなっていた。そこでスマーリンは一族の再興のため、娘のカイカシーを1人の男と結婚させた。それがクヴェーラ神の父ヴィシュラヴァスであった。カイカシーはヴィシュラヴァスとの間にクヴェーラ神の異母兄弟であるラーヴァナ、クンバカルナ、シュールパナカー、ヴィビーシャナを生んだ。ラーヴァナが長じると、カイカシーはクヴェーラ神と戦って都を取り戻すよう諭した。そこで彼女の子供たちは苦行を積み、ブラフマー神に認められて強大な力を与えられた。そしてクヴェーラ神と戦って都を取り戻し、ラークシャサ族の再興を果たした[1][2][3]

もう一方の叙事詩『マハーバーラタ』では、ヴィシュラヴァスの妻と結婚してラーヴァナの母となったラークシャシーの名はプシュポートカターとなっている[4][5][6]

脚注

[編集]
  1. ^ 阿部知二訳、p.459-460。
  2. ^ 上村勝彦、p.221-222。
  3. ^ 『インド神話伝説辞典』p.84「ヴィシュラヴァス」の項。
  4. ^ 『マハーバーラタ』3巻259章3-7行。
  5. ^ 上村勝彦、p.223。
  6. ^ 『インド神話伝説辞典』p.284「プシュポートカター」の項。

参考文献

[編集]
  • 『ラーマーヤナ 世界文学全集III-2』阿部知二訳、講談社、1966年。 
  • 『原典訳 マハーバーラタ4』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2002年。ISBN 4-480-08604-8 
  • 『インド神話 マハーバーラタの神々』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2003年。ISBN 4-480-08730-3 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年。ISBN 4-490-10191-0