イゼベル
イゼベル(ヘブライ語: אּיזָ֫בֶל(ee-zeh'-bel)、古代ギリシア語: Ιεζάβελ、 英語: Jezebel)は、旧約聖書の列王記に登場する古代イスラエルの王妃。イザベル、ジザベルとも表記される。
概要
[編集]紀元前9世紀前半の人物。イゼベルについての記事は列王記上16章に初出し、以後列王記下9章までに散見される。
列王記によれば、イゼベルはフェニキア人で、イスラエル王アハブの后。父はシドン王エトバアル。列王記にはアハブの子らについての記述があるが、イゼベルが母であるとは明言されていない。
イゼベルはイスラエル(ユダヤ)人にとって異教であるバアル信仰をイスラエルの宮廷に導入し、ユダヤ教の預言者たちを迫害した。預言者の一人エリヤが偶像神バアルとアシェラの預言者たちと対決してこれを倒すと、イゼベルは以下のように述べてエリヤを殺そうとした[1]。
「もしわたしが、あすの今ごろ、あなたの命をあの人々のひとりの命のようにしていないならば、神々がどんなにでも、わたしを罰してくださるように」。 — 列王紀上19章2節(口語訳)
アハブ王の死後、ヨラム王およびアハズヤ王の時代も権力を握っていたイゼベルだったが、ヨシャファトの子イエフが反乱を起こしてヨラムとアハズヤを殺害すると、イゼベルは宦官数人に見限られて城門から突き落とされ、馬で踏まれた上に犬に食いちぎられるという非業の死を遂げた(列王記下9章)[2]。これはナボトという男のぶどう畑を望んだイゼベルが、不当にそれを奪ってナボトを死に追いやったことの報いであり、エリヤの予言したとおりの結末であったと聖書は書いている。このクーデターは紀元前842年頃と考えられている。
子孫
[編集]息子にアハズヤとヨラム、娘にアタルヤがいる。息子2人は子を残さなかった。アタルヤはユダ王国の王ヨラムの妻となり、アハズヤの母となった。
ヨハネの黙示録におけるイゼベル
[編集]新約聖書『ヨハネの黙示録』のなかでは、イゼベルの名はある教会のなかの「大淫婦バビロン」、教会への敵対者として現れる[3]。これが実在の人物に相当するのか、キリスト教への敵対者の隠語なのかはさだかではない。
しかし、あなたに対して責むべきことがある。あなたは、あのイゼベルという女を、そのなすがままにさせている。この女は女預言者と自称し、わたしの僕たちを教え、惑わして、不品行をさせ、偶像にささげたものを食べさせている。 — ヨハネの黙示録2章20節(口語訳)
脚注
[編集]関連項目
[編集]- 偶像崇拝
- パンとサーカス
- 聖書の登場人物の一覧
- 鋼鉄都市 - アイザック・アシモフのSF小説。主人公イライジャ・ベイリと妻ジェゼベルの名はそれぞれエリヤ、イゼベルの英語名であり、本編中でも旧約聖書におけるエピソードに言及している。
- 奈多夫人 - 大友宗麟の正室。領内のキリシタンを迫害したため、「イザベル」と呼ばれて批難された。