アランビック
アランビック(英: Alembic)は、2つの容器を管で接続した蒸留器 (Still) 。錬金術において、化学物質を蒸留するために使用された。「アランビック」の語は一般的に蒸留装置全体を指して用いられるが、より厳密には、蒸留されるべき物質を蓄えるフラスコをククルビット(cucurbit 蒸留瓶)と呼び、その上部にかぶせる管のついた蓋(蒸留器の頭部 still-head)のことをアランビックと呼ぶ。ククルビットの中の液体を加熱・沸騰されることによって生じた蒸気は、頭部(アランビック)へと上昇して内壁によって冷却され、受けフラスコ (receiving flask) の中に降下する仕組みである。ククルビットと頭部(アランビック)を一体化した器具をレトルト(retort)と呼ぶ。
アランビックの近代的な形は単式蒸留器 (pot still) であり、現代においても蒸留酒の製造に用いられている。
名称
[編集]アランビックという語は、アラビア語で「蒸留器」を意味する الأنبيق / al-'anbiq から来ている。この言葉を辿ればギリシャ語 ἄμβιξ / ambix に由来し、 おそらくセム語派の言語に至る[1]。
シェイクスピアの戯曲には、limbeck という語形で登場する。フランス語形の alambic は、コニャックの製造に用いられる装置を指して用いられる(たとえば、単式蒸留器を Alambic charentais 「シャラントのアランビック」と呼ぶ)。日本では江戸時代に用いられた蒸留器に「ランビキ」という名称が用いられた。
歴史
[編集]アランビックを最も早い時期に使用したのは、ジャービル・イブン=ハイヤーン(ゲベルス)のような古代ペルシャの錬金術師たちである[2]。アル・ラーズィー(ラーゼス)もその仕事にアランビックを用い、蒸留について最初の科学的記録を書き残した[3]。その研究は、中世においてイブン・スィーナー(アウィケンナ)やファーラービー(アルファラビウス)らイスラム教徒の錬金術師によって広げられた。
シンボル
[編集]Unicode U+2697 にはアランビックのシンボルが含まれている。
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
⚗ | U+2697 |
- |
⚗ ⚗ |
ALEMBIC |
脚注
[編集]- ^ Forbes, Robert James (1970) A Short History of the Art of Distillation: from the beginnings up to the death of Cellier Blumenthal. Leyden: E. J. Brill ISBN 978-90-04-00617-1; p. 23
- ^ Encyclopædia Britannica 1911, Alchemy.
- ^ Forbes, Robert James (1970) A Short History of the Art of Distillation: from the beginnings up to the death of Cellier Blumenthal. Leyden: E. J. Brill ISBN 978-90-04-00617-1; pp. 20-23
- ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『ゾシモス』 - コトバンク
関連項目
[編集]- ランビキ - 江戸時代の日本で使われた蒸留装置
- ジャービル・ブン・ハイヤーン