S・M散
S・M散(エスエムさん)は、胃腸薬の健胃消化薬のひとつで、消化薬、制酸薬、また生薬を配合している。後にS・M配合散に改名。生薬はカンゾウ、オウレン、ケイヒ、ウイキョウなど。第一三共エスファ、のちにアルフレッサファーマが処方用の胃腸薬として製造販売している。
概要
[編集]S・M散のような健胃消化薬は、より現代的な胃腸薬が登場する以前から使われてきた[1]。また安価である使われることが多い[2]。胃の諸症状に使われる[3]。慢性胃炎、胃もたれ、食欲不振、胸やけ、吐き気など。
S・M散には制酸薬、タカジアスターゼなどの消化薬、生薬が調合されている。生薬に苦味があるが、これが食欲中枢に作用する。制酸薬では、速効性のある炭酸水素ナトリウムおよび、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウムなどの胃酸を中和する。機能性胃腸症に伴う胃の諸症状や[4]、鎮痛薬など他の薬の摂取に伴う胃腸症状を予防するために用いられる。
適応症
[編集]効果効能は、次の消化器症状の改善である。食欲不振、胃部不快感、胃もたれ、吐き気、嘔吐。
注意事項
[編集]以下の持病のあるものには、処方に注意が必要。
塩分摂取制限が必要であれば禁忌になっており、本剤を1日3回服用すると0.63グラムの食塩相当量になる[2]。これは少ない部類であり、重曹(炭酸水素ナトリウム)の多い薬では、1日当たり1.5 - 3.5グラムとなる[2]。
- 飲み合わせに注意:
- テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬。(以上は薬効を減弱させる作用があるため、時間を置く)
- ビタミンD3製剤 (高カルシウム血症を起こす可能性あり、腎臓の悪い人は注意を要する)
副作用
[編集]発売と同効薬
[編集]処方箋薬には、つくしA・M配合散、KM散、FK配合散など、同種の薬がある[3]。市販薬でも、生薬と消化剤、制酸薬を使った同様の配合剤は様々に販売されている。
19世紀末には消化酵素剤のタカジアスターゼが開発され三共から発売されたが、1949年にはこれを配合した本剤をS・M散として発売した[5]。S・Mの由来はSankyo の Magen Mittel(ドイツ語で胃薬)[5]。2009年にS・M配合酸に改名した[5]。2009年には厚生省より、配合剤の販売名に関する指示が出ていた[6]。
S・M散に似た薬に「つくしA・M酸」がある[1]。「つくしA・M散」は富山化学から1968年に発売された薬で、2012年には酵素のリカーゼの入手困難に伴いジアスメンに変更した「つくしA・M配合散」が発売されている[7][8]。
出典
[編集]- ^ a b “太田胃酸・星胃腸薬・AM散 今は昔 売薬歴史シリーズ2 (おくすり博物館)”. 北多摩薬剤師会. 2022年7月29日閲覧。
- ^ a b c 平松さやか「健胃薬の食塩含有量について」(PDF)『鹿児島市医報』第52巻第6号、2013年、13頁。
- ^ a b “総合健胃薬の解説 処方薬事典”. 日経メディカル. 2022年7月29日閲覧。
- ^ 尾島英知、宮本潤一「消化酵素配合剤 (S・M散) 服用を契機にポリファーマシーを伴った機能性ディスペプシアが寛解できた一例」『日本臨床内科医会会誌』第33巻第3号、2018年、S122。
- ^ a b c インタビューフォーム 2019.
- ^ 『医療事故を防止するための医薬品の表示事項および販売名の取扱いについて (医薬発第935号)』(PDF)(レポート)厚生省、2009年9月19日 。2022年7月29日閲覧。
- ^ 『つくしA・M配合酸 医薬品インタビューフォーム 2019年4月改訂(第4版)』(PDF)(レポート)2012年12月 。 2012年12月初版
- ^ 『つくしA・M酸 医薬品インタビューフォーム 2010年6月(第3版)』(PDF)(レポート)2010年6月 。 2010年6月第3版
参考文献
[編集]- 『S・M配合酸 医薬品インタビューフォーム』(PDF)(レポート)2019年3月 。 2019年3月初版