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オノレ・ド・バルザックHonoré de Balzac, 1799年5月20日 - 1850年8月18日)は、19世紀フランスを代表する小説家。なおド・バルザックの「ド」は、貴族を気取った自称である。

イギリスの作家サマセット・モームは、『世界の十大小説』のなかで、バルザックを「確実に天才とよぶにふさわしい人物」と述べている。バルザックは90篇の長編・短編からなる小説群『人間喜劇』を執筆した。これは19世紀ロシア文学ドストエフスキーレフ・トルストイ)のさきがけとなった写実的小説群である。

バルザックの小説の特性は、社会全体を俯瞰する巨大な視点と同時に、人間の精神の内部を精密に描くというところにある。高潔な善人が小説のなかに出てくるが、かれらは偽善的な社会のなかで苦悩のうちに死んでいく(『ゴリオ爺さん』、『谷間のゆり』など)。創作の天才で、多作にもかかわらず、死に至るまでアイデアが尽きることはなかった。社会のあらゆる人物、場面を描くことによって、フランス社会史を成す『人間喜劇』を構想したが、未完におわった。

パリの死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンと親しく交際があったと言われており、サンソン回想録を執筆している。