LIMEX

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LIMEX(ライメックス)は、TBM社により開発・販売・製造されるストーンペーパーの一種。炭酸カルシウムなど無機物を含む、無機フィラー分散させたプラスチック材料。廃棄の際に、既存の紙(古紙回収)やプラスチックの回収ルートに混ぜることはできない[1]

概要[編集]

由来[編集]

もともとは、台湾の「Run Men Environment Friendly Paper Product社」が製造していたものを[2]、TBM社が改良して製造販売を始めたものである。なお、Run Men社の日本国内特許は出願のみで権利化されていない[2]

原料[編集]

TBM社の出願特許によるとLIMEXの「無機物質粉末を60から80%程度、残りを熱可塑性樹脂で補い、数パーセントが補助剤」となっている[3]。無機物質粉末は炭酸カルシウム(石灰石)である[3][注釈 1]。また「熱可塑性樹脂」とは、ポリエチレンポリプロピレンポリスチレンおよびポリエチレンテレフタレートの中から一種類以上の樹脂を使用を指している[3]

ただし、コート紙や光沢紙とも呼ばれる塗工紙には、顔料として炭酸カルシウムが1960年代より使われている[4][5]。日本では特に、軽質炭酸カルシウム(PCC)が特に使用されている[5]。軽質炭酸カルシウムはコート紙などでも白色度を高めるために使用されており、日本では100%自給可能で比較的安価である[5]

製造[編集]

TBM社の特許によると以下の手順で製造される[3]

  1. 原料である炭酸カルシウムと熱可塑性樹脂・補助剤を、二軸混練機を使用して混合ペレットを生成する。
  2. 混合ペレットをTダイ方式の押出機で中間体を成形する。
  3. 中間体を圧延機により引き伸ばし、薄膜シート化する。

TBM社の主張[編集]

TBM社はLIMEXについて以下の主張を行っている。

代替紙としての利点[編集]

  • 従来のストーンペーパーより軽量、安価[6]
  • 高耐水性 - 浴室などの水回りや屋外で利用可能[6]、水中での筆記も可能[6]

製造時の優位性[編集]

石灰石を主原料とすることで森林保護、製造時の水使用の削減ができる[6]

アップサイクル[編集]

LIMEXの廃棄時には、TBM社で再生ペレット化し、「LIMEXの製造時に一部投入」「プラスチックの代替成形物として再利用(アップサイクル)」「燃料として使用」できるとしている[1]。TBM社は「LIMEXを既存の紙(古紙回収)やプラスチックの回収ルートに混ぜないでください」と記載している[1]

問題点と批判[編集]

TBM社はLIMEXをエコロジーなSDGsに適応する製品と主張しているが[6]、ストーンペーパーは環境負荷が低いとは言えないという指摘がなされている[7][4][8]

リサイクル[編集]

LIMEXの主成分は炭酸カルシウムと熱可塑性樹脂のため、古紙の回収やプラスチックの回収サイクルにのせることはできない[7]。プラスチック混入により出来上がった再生紙の品質が下がり、炭酸カルシウムが製紙汚泥になる[9]。またストーンペーパー類が多量に入るとパルパーで目詰まりを起こすことがあり、操業を停止して取り除く必要がある[9]

公益財団法人古紙再生促進センター(東京・中央区)が発行する『古紙ハンドブック2019』には、禁忌品A類に「ストーンペーパー(プラスチックと鉱物でつくられているので、正確には紙でない)」と記載されている[9]。LIMEXなどストーンペーパーが古紙から再生紙を生成する工程に混ざると、スクリーンや配管を詰まらせる原因となりうる[9]。このため「再生紙の製造工程にLIMEXが混入すると迷惑」(大阪府の再生紙工場)という声もある[9]。TBM社も「LIMEXを既存の紙(古紙回収)やプラスチックの回収ルートに混ぜないでください」と記載している[1]

環境負荷[編集]

製造時環境負荷[編集]

TBM社は「通常、普通紙1トン生産する場合、木を約20本、水を約85トン使うが、LIMEX は原料に木や水を使用しない」と主張している[9]。しかし、日本製紙連合会の技術環境部長は「『木を約20本使う』という表現は、森林伐採を連想させるが、日本の紙パルプ産業が使用する木材原料の約90%は他に用途の少ない低質材や間伐材、製材残材、製紙用に植林された小径木」であるとし、水についても「紙を作る際に川から取水し、洗浄などに利用した後はきれいにして川に戻しているので、利用はするが消費しているわけではありません」と述べている[9]。従ってTBM社の主張について「紙の生産が森林伐採や水の大量消費につながるかのようなこの文言は不適当と言わざるを得ません」と批判している[9]

廃棄時環境負荷[編集]

パルプ原料の紙は生分解性があるが、LIMEXの主成分である炭酸カルシウムと熱可塑性樹脂は生分解性ではない[7]。特に熱可塑性樹脂は海洋汚染で問題となっているマイクロプラスチック化する懸念がある[9]。炭酸カルシウムは生分解性ではないが酸に弱いこともあり、ストーンペーパー類はプラスチック部分のマイクロプラスチック化を促進する可能性がある[9]

地球温暖化抑制の観点[編集]

工学院大学の川嶋らにより、原料調達・輸送・製造・印刷・廃棄までの範囲で上級印刷紙とストーンペーパーの環境比較が公表された[10]。これによるとストーンペーパーを焼却処理した場合、原料由来の二酸化炭素の排出は上級印刷紙の焼却処理と比較すると多くの二酸化炭素を排出する[10][注釈 2]。上級印刷紙については相当量がリサイクルされている一方で、LIMEXなどストーンペーパーなどのリサイクルは確立していない[1]。このため、地球温暖化抑制の観点からは上級印刷紙の方がLIMEXを始めとするストーンペーパーより優位性が見られる[10]。一方、埋め立てによるストーンペーパーの廃棄は、二酸化炭素の排出を抑制できる一方で、生分解できないプラスチックによる影響が生じる[10]

リサイクル費用逃れ[編集]

LIMEXでトレイや包装紙などの容器包装を製造販売したとしても、主成分の50%以上が石灰石であるLIMEXは、プラスチック製容器包装や紙製容器包装の定義には当てはまらない[9]。従って、容器包装リサイクル法で定められている「再商品化委託料金」を支払わなくて済む[9]。つまり、合法的にリサイクル費用の供出義務を免れられる[9]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお、特許の発明者にはTBMのCEOの山崎敦義の名前はない
  2. ^ 一方、酸化硫黄物の発生は上級印刷紙の焼却処理の方が大きい[10]

出典[編集]

参考文献[編集]

TBM社[編集]

TBM社以外[編集]

  • 田中 宏一、西口 浩之「日本における製紙塗工用軽質炭酸カルシウムの現状と将来」『日本海水学会誌』第54巻第2号、日本海水学会、2000年、 85-90頁、 NAID 10008275601
  • 川嶋 琢幹、嵐 紀夫、稲葉 敦、本下 晶晴「ストーンペーパーの環境影響評価」『日本LCA学会研究発表会講演要旨集』第2011巻0、日本LCA学会、2011年、 184-184頁、 NAID 10008275601
  • 特開平11-277623”. 2019年11月8日閲覧。
  • 特開2013-010931”. 2019年11月8日閲覧。
  • 緊急連載「石灰石ペーパー類」は本当にエコか(上)”. alterna. 2019年11月8日閲覧。アーカイブ
  • 緊急連載「石灰石ペーパー類」は本当にエコか(中)”. alterna. 2019年11月8日閲覧。アーカイブ
  • 「石灰石ペーパー類」の環境負荷は本当に低いのか(下)”. alterna. 2019年11月8日閲覧。アーカイブ
  • Stone Paper, Not as Recyclable as You Might Think”. 2019年11月8日閲覧。アーカイブ
  • This Paper Is Made From Stone, But It Isn't Exactly Eco-Friendly”. WIRED. 2019年11月8日閲覧。