ETRM

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ETRM:Energy Trading and Risk Management)は、エネルギー取引におけるリスク管理業務全般(ツールを含む)のことで、例えば、金融市場での商品取引のためのナレッジやノウハウを、エネルギー資産の取引に対して適用して分析するための業務またはツールを指す。また、より範囲を広げた表現としてCTRM(英:Commodity Trading and Risk Management)と呼ばれることもある。

概要[編集]

ETRMはリスクマネジメントを行う領域を、大きく以下のように定義することができる。

  • 在庫リスク
  • 信用リスク
  • 需給リスク

在庫リスク[編集]

時価評価の必要性[編集]

石油に代表されるエネルギー資産は価格変動が激しく、そういった意味では常に価格変動リスクにさらされている。このようなリスク資産は一般的にエクスポージャーと呼ばれる。またこれらのリスク資産は同時に外貨で決済される割合も多く、為替変動リスクも同時に内在している場合が多い。このため、正確な資産価値把握のためには、在庫資産の現在時価及び現在為替による値洗いが必須となる。

最大損失額の計算[編集]

金融工学を用いることによって、市場価格で値洗いされた時価(Mark To Market)に対して、その資産が価格変動、または為替変動によって最大どの程度の価値毀損が生じうるかの計算を行い、その損失インパクトが事業に及ぼす影響を金額的に評価することができる。この際利用されるのがVaR(Value at Risk)計算となる。

ガス・石油在庫への配慮[編集]

揮発性の高い燃料は保存が難しく、パイプラインや船舶等の輸送や保管中における減損などの事象が発生しやすい。こういった在庫数量の微調整についても、正確な管理が必要となる。

信用リスク[編集]

デフォルトリスク[編集]

エネルギー取引では、売り掛けで決済される契約も多く、取引先のデフォルト(倒産)により債権が回収できなくなるリスクが内在している。このため、取引先のレーティング評価と債権の回収率を定義し、デフォルトシミュレーションを実行することで、最悪のリスクが発生した場合の債権の毀損額について金額評価を行う必要が生じる。

需給リスク[編集]

電力取引における留意点[編集]

電力の取引では30分ごとの供給量と需要量が、同時同量であることが求められる。このため、発電またはJEPX市場からの電力購入量が、需要量と常に一致していることが確認できなければならない。

自然エネルギーへの対応[編集]

太陽光発電や風力発電など、電力供給量の安定しない発電設備において、電力供給量の予測が必要となる。

主なツール[編集]

ETRMの概念は広く欧米で先行しており、ETRMのツールとしては以下のものが流通している。

その他の用法[編集]

  • エンタープライズテクニカルリファレンスモデル (Enterprise Technical Reference Model)を意味する。[要出典](→Open形式