AN/SPY-3

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
AN/SPY-3
AN/SPY-3・4のAESAアンテナを貼り付けた「ジェラルド・R・フォード」の艦橋構造物
種別 3次元レーダー
目的 多機能 (捜索捕捉追尾)
開発・運用史
開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
送信機
周波数 Xバンド
アンテナ
形式 アクティブ・フェーズドアレイ(AESA)
固定型アンテナ×3面
素子 半導体素子
方位角 1面あたり約120度
テンプレートを表示

AN/SPY-3とは、レイセオン社が開発したフェーズドアレイレーダー。艦載用の多機能レーダーとして用いられている。

概要[編集]

アメリカ海軍は、将来水上戦闘艦(DD(X); 後のズムウォルト級)の建造にあたり、広域捜索に適した長波長と近距離精密捕捉に適した短波長の2種類の周波数で動作するレーダー(Dual Band Radar, DBR)を開発して搭載することを構想した[1]。このうち、後者に相当する多機能レーダー(Multi-Function Radar, MFR)として開発されたのが本システムである[1][2]

使用周波数はXバンドで、低高度目標や潜望鏡の探知対処のほか、精密な目標追尾・識別や艦対空ミサイルに対するセミアクティブ・レーダー・ホーミング誘導電波の照射、更には指令誘導リンクの送受信も行うことができる[2]アンテナは略矩形状で縦2.7メートル×横2.1メートル大、アクティブ・フェーズドアレイ(AESA)方式で、1面あたり約120度の方位角をカバーできることから、3面を設置することで自艦を中心とする半球空間内の目標に対処できる[2]。ズムウォルト級ではDBRとしての搭載が断念され、本レーダーが主レーダーを担うことになったことから[注 1]、限定的な広域捜索機能を付与するためのソフトウェア改修が行われており[2]AN/SPY-1を凌駕する広域捜索能力を実現したとされる[3]

搭載艦[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 本システムと対になる広域捜索レーダー(Volume Search Radar, VSR)は、当初は動作周波数Lバンドとして計画されていたが、後にSバンドに変更され、ロッキード・マーティン社のAN/SPY-4として結実した[1][2]。ただし出力不足などのために性能が思わしくなく、価格も高騰したことから、2010年には、ズムウォルト級への搭載を断念する決定が下された[2]。その後、「ジェラルド・R・フォード」ではSPY-3・4の両方を搭載してDBRとして運用する本来の形態が実現したものの、やはり性能・コスト面の問題から、同級2番艦以降ではSPY-4のかわりにAN/SPY-6(V)3が搭載されることになった[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c 多田 2023.
  2. ^ a b c d e f g 多田 2022, pp. 159–160.
  3. ^ 大塚 2013.

参考文献[編集]

  • 大塚好古「1番艦進水へ! DDG-1000級の超絶技術 (特集 近未来の米水上艦隊)」『世界の艦船』第788号、海人社、82-85頁、2013年12月。 NAID 40019837765 
  • 多田智彦「現代の艦載兵器」『世界の艦船』第986号、海人社、2022年12月。CRID 1520012777807199616 
  • 多田智彦「SPYファミリーの話」『世界の艦船』第995号、海人社、108-111頁、2023年6月。CRID 1520577840223086720 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]