軽業 (落語)

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軽業』(かるわざ)は上方落語の演目の一つ。原話は不明。

道中噺『伊勢参宮神乃賑』の一編。主な演者として、3代目 桂米朝6代目 笑福亭松鶴等がいる。

軽業。江戸職人歌合. 石原正明著 (片野東四郎, 1900)

あらすじ

喜六と清八のコンビが、伊勢参りの帰り道にある村へ到着。妙に賑やかなので聞いてみると、『氏神さん六十一年目の屋根替えの正遷宮』だという返事が返ってきたのでそのまま見物することにする。

【一間の大イタチ】や【天竺の孔雀】などというインチキ興行に振り回された後、軽業の舞台を発見した二人は「これなら大丈夫だろう」と見学することに。

二人が入った直後、時刻がきたと見えて口上いいが登場して流暢に謝辞を述べ、太夫を紹介。現れた"和屋竹の野良一"なる太夫は手早く身支度を終え、綱の上へあがってく。

「小手調べに、深草の少将は小町が元へ通いの足どり…邯鄲は夢の手枕…義経は八艘飛び…」

順調に曲芸は進み、いよいよ目玉である『千番に一番の兼ね合い』になった。

「あ、さて、あ、さて、さてに雀は仙台さんのご紋。ご紋所は菊と桐~♪」

囃子方の演奏に合わせ、太夫は逆さになって綱から飛び降りる。そのまま、両足首を綱にひっかけ、蝙蝠よろしく宙ぶらりんになる…予定だったのだが、タイミングを誤ったのかそのまま墜落してしまった!

あわてた観客が声をかけると、太夫は「足が痛い…頭が痛い…」とあちこちが痛いと言い出す。結局、どこが痛いのかと客が質問すると。

「軽業中(体中)が痛いわな!!」

概要

江戸期の村祭りの風景が描かれた佳作。【軽業】の描写だけでは短いため、前半部分に変なインチキ興行(通称「モギトリ」)の描写が入る。

詳しくは『蝦蟇の油 (落語)』の項に譲るが、銭を客からもぎ取ってしまえば、あとは一切構わない…というひどい見世物が多かったため客は散々な目に合わされていたらしい。

インチキ興行のほかにも、喜六が節穴をお金と見間違えて支払いを誤るくだりなど見所・聞きどころは多い。

後半の主役になる軽業師の和屋竹の野良一は、地獄八景亡者戯にも登場して活躍する。

サゲはこのほかに、軽業師の事故でうろたえた口上役が「あ、さて、さて、さてさて、さて・・・・」と繰り返すので、客が業を煮やし「おい、いつまで口上言うてんのや。」「長向上は大怪我の基や。」(生兵法は大怪我の基)で終わる型がある。(5代目 笑福亭松鶴演)

軽業の演じ方

太夫が登場したあたりから、右手中指と人差し指で人の足を現し、扇を綱に見立てて「太夫さんの足元をご覧に入れます」と断りを入れたうえで演じる。

【義経は八艘飛び】では太夫の足に見立てた二本の指をあちこちに飛びまわらせた後、自分のおでこにとまらせて「どないでもなりまっさ」と落とす。

ちなみに、太夫"和屋竹の野良一"の師匠とされる早竹虎吉は幕末期に実在した軽業師で、アメリカ遠征までした人。

出典