対地接近警報装置
対地接近警報装置(たいちせっきんけいほうそうち、Ground Proximity Warning System、GPWS、Terrain Proximity Warning Systemとも)とは、操縦士の自覚なしに航空機が地物に異常接近した場合、操縦者に警報する装置。地上接近警報装置とも言う。
概要
電波高度計の対地高度・気圧変化による昇降率・離着陸形態・グライドスロープからの偏差情報に基づき、航空機が地表に異常接近した場合に警告灯の点灯と、「上昇せよ(Pull Up)」や「降下するな(Don't sink)」など状況に応じた音声による警報が行われる[1]。警報は回避操作が行われてから航空機が危険な状態から脱するまでの時間的余裕をもって発せられ[2]、航空機が危険な状態から脱するまで継続する。なお、GPWSは他の警報装置と異なり警報の作動が直接操縦者による航空機の機動に結びつくため、主脚の状態を検知することで、通常の運航や通常の進入着陸の際は警報を発しないように設計されている[1]。
上記の機能に加えて、地球上の約95%の地形データ(空港の位置と周囲の障害物を含む)をデータベースに持ち、GPS等を利用して得られる航空機の正確な位置と照合して、従来のものに比べて素早く音声および画面表示による警告と情報が与えられる新型のもの (enhanced GPWS, EGPWS) もある。これは、従来の電波高度計によるGPWSでは、切り立った崖や急斜面では回避が間に合わない可能性があるためである[3]。近年では各種情報を統合し、自機と地面や他機との距離を立体的に表示する機能を備えたグラスコックピットも登場している。
音声一覧
警報(Warning)
・Pull up=機首を上げろ
・Too Low terrain=低すぎる、地表接近
・Too Low Gear=低すぎる、ギアが出ていない
・Too Low Flaps=低すぎる、フラップが出ていない
・Glide slope=グライドスロープの信号より低い。この音声は他の警報と違い音量が半分になっている。
・Don't sink=降下するな。離陸後の降下などで鳴る。
・Sink Late=降下率が大きい。
高度読み上げ(Altitude Callouts)
Altitude calloutsは、航空会社によって詳細が異なるが通常は「2500,1000,500,400,300,200,100,50,40,30,20,10,5」になっている。5ftの読み上げは最近の機体で鳴る。他には「minimums」「approaching minimums」「Radio altimeter」などがある。「minimums」は空港施設のある信号の地点に到達するとなる。Minimumで滑走路が視認できなかった場合は着陸復航となる。
エアバス製旅客機では「Retard」というのが鳴るが、それはスロットルを閉じろという意味である。
事故
- GPWSを搭載しなかったばかりに発生した事故の一つに、エールアンテール148便墜落事故がある。当時のフランスではGPWS搭載は義務化されておらず、エールアンテールにとってはGPWSは高速でのファイナルアプローチの邪魔でしかなく搭載をしていなかった。結果、最新鋭機であるエアバスA320に不慣れだった事も災いし大事故発生と相成った。
- ニュージーランド航空901便エレバス山墜落事故では、ホワイトアウトの中乗員が地形を認識できない状況で警報が作動し、ただちに上昇が試みられたものの低高度のため間に合わず山に衝突している。
出典
- ^ a b 「航空電子入門」日本航空技術協会、pp.189-200。ISBN 978-4-902151-66-4
- ^ GPWS : ground proximity warning system -航空実用辞典
- ^ 対地接近警報装置 -全日本空輸 Safety Information
関連項目
外部リンク
- Cockpit Warning Sounds - planecrashes.org