プロジェクト鳩
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プロジェクト鳩(プロジェクトはと、Project Pigeon、後に"organic control"の略称であるプロジェクトオルコン、Project Orconに改称)とは[1]、第二次世界大戦に米国の行動主義心理学者B.F.スキナーによって行われた鳩によってミサイルを誘導しようとする試みである[2]。
ミサイルの前部にはレンズがあり、ターゲットの像が内部のスクリーンに映し出される。オペラント条件づけによって訓練された鳩は、ターゲットの像を認識し、くちばしでつつく。スクリーンの中央がつつかれた場合は、ミサイルは真っ直ぐに飛ぶ。中心からずれた場所がつつかれた場合には、スクリーンが傾くことで制御機構が作働し、ミサイルの方向が変わる[3]。
このような発想に対して疑問を持つものもいたが、NDRC(国防研究委員会)は25,000ドルを研究費として支出した[4]。しかし、ペリカンミサイルの誘導に鳩を使おうとするスキナーの発想は、あまりに非現実的であると考えられた[5]。鳩の訓練はそこそこうまくいったものの、スキナーの考えが真面目に扱われることはなかった。1944年10月、このプロジェクトを真剣に追求すれば実戦応用がすぐに見込まれる他の研究に支障をきたすとして、軍はこのプロジェクトを中止した。
1948年、プロジェクト鳩は、プロジェクトオルコン(Project Orcon)として海軍によって復活した[1]。電気的な誘導システムの信頼性が証明されたことにより、このプロジェクトは1953年に終了した[6]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ a b 藤健一 2016, p. 168.
- ^ ニコラス・クリスタキス, 鬼澤忍 & 塩原通緒 2020, p. 195.
- ^ ジョエル・レヴィー & 浅野ユカリ 2015, p. 15.
- ^ 山口薫 2010, p. 186.
- ^ 渡辺茂 1993, p. 140.
- ^ a b 植木不等式 2018, p. 30.
参考文献
[編集]- B. F. Skinner (1959). Cumulative Record. New York: Appleton-Century-Crofts. ISBN 0-87411-969-3
- C.V. Glines: Top Secret WWII Bat and Bird Bomber Program, Aviation History, May 2005, Vol. 15 Issue 5, p38-44
- 渡辺茂「実験室の誕生 : 操作と測定」『慶応義塾大学大学院社会学研究科紀要 : 社会学心理学教育学』第36号、慶應義塾大学大学院社会学研究科、1993年、137-145頁、ISSN 0912456X、NAID 120002469948、OCLC 835433988、国立国会図書館書誌ID:3531578、2022年10月10日閲覧。
- 山口薫 (2010). 発達の気がかりな子どもの上手なほめ方しかり方. 学研プラス. p. 186. ISBN 9784059102601
- ジョエル・レヴィー; 浅野ユカリ (2015). あなたも心理学者! これだけキーワード50. ディスカヴァー・トゥエンティワン. p. 15. ISBN 9784799317648
- 藤健一「オペラント行動研究で用いられた給餌装置の変遷――1930年代から1970年代まで――」『行動分析学研究』第30巻第2号、日本行動分析学会、2016年、165-173頁、doi:10.24456/jjba.30.2_165、ISSN 24242500、NAID 130006832805、国立国会図書館書誌ID:9275421、2022年10月10日閲覧。
- 植木不等式「カモメの水兵さん♪ 動物の“新兵器化”プランあれこれ」『生物学史研究』第97巻第0号、日本科学史学会生物学史分科会、2018年、29-31頁、doi:10.24708/seibutsugakushi.97.0_29、ISSN 0386-9539、NAID 130007897780、国立国会図書館書誌ID:029228149、2022年10月10日閲覧。
- ニコラス・クリスタキス; 鬼澤忍; 塩原通緒 (2020). ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上). ニューズピックス. p. 195. ISBN 9784910063102