柚子湯
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解説
日本では、江戸時代に冬至の日、銭湯に柚子を輪切りにして入れて沸かす柚子湯があった。ひび・あかぎれ・感冒などの予防のためという。京阪には柚子湯がなかった[2]。江戸の町は、急激な町づくりが進み埃っぽい状態だったため、毎日風呂に入ることが、江戸の人々の楽しみであった[3]。古来催し湯というのがある。新年の丁子湯、暑中の桃の湯などそれぞれ悪疫、災厄をはらう縁起の湯として、端午の節句の菖蒲湯、冬至の柚子湯がある[1]。ことわざにも「冬至に柚子湯に入ると風邪を引かぬ」と言われている[4]。冬至の日において、柚子湯を用意する銭湯もある。
柚子湯の作り方としては、柚子の果実を5 - 6個輪切りにして、湯に浮かべる。皮膚が弱い人は、輪切りにした柚子の果実を熱湯で20 - 30分蒸らし、その後、布袋に入れて湯に浮かべるとよい。
冬至と柚子との関連は必ずしも明らかではないが、柚子湯の習慣は銭湯の登場以後のことであり、一説に湯治(とうじ)と冬至(とうじ)との語呂合わせで、身体息災であれば融通(ゆうずう)が利くとのこじつけであるという。または黄色い柚子を太陽に見立てお湯を海に見立てて、日の入りと日の出に仕立てた遊びとも。
科学
現代科学において、血液の流れを良くする血行促進効果があり、風邪の予防だけではなく、冷え性や神経痛、腰痛などを和らげる効果があるとされている。
検査では、更湯(普通のお湯)と柚子湯に入浴後のノルアドレナリンを比べたところ、4倍の差が出た[5]。ノルアドレナリンは血管を収縮させる効果のある成分なので、それだけ血管が拡張していたことが分かる。果皮に含まれるクエン酸やビタミンCにより、ひび・あかぎれを改善したり、皮の芳香油が湯冷めを防ぐとされている。
脚注・参考文献
- ^ a b 大島建彦 編『日本を知る事典』社会思想社、1971年。
- ^ 清水桂一『たべもの語源辞典』(新訂版)東京堂出版、2012年。ISBN 978-4-490-10822-4。
- ^ 棚橋正博、村田裕司編著『絵でよむ江戸のくらし風俗大事典』柏書房、2004年、200頁。ISBN 4760125825。
- ^ 西谷裕子『たべものことわざ辞典』東京堂出版、2005年。ISBN 4-490-10665-3。
- ^ 『東京ガス通信』2007秋冬号 p.6-7