魚沼鉄道1号形蒸気機関車

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1号形は、かつて魚沼鉄道(後の日本国有鉄道魚沼線)に在籍した、特殊狭軌線タンク式蒸気機関車である。

なお、魚沼鉄道では機関車に形式を付していなかったため、この呼称は便宜的に付与したものである。

概要[編集]

魚沼鉄道が、1911年(明治44年)の開業に際して製造した、車軸配置0-4-0(B)飽和式で単式2気筒のタンク機関車である。同年、雨宮鉄工所(雨宮製作所の前身)で2両(1, 2製造番号不明)が製造された。この機関車は、運転整備重量5.5トンで、ベルペヤ式火室を持ち、ボイラー上に角型の水タンクを載せたサドルタンク機であった。

この地方ではが容易に手に入ることから、石炭と薪の併燃であったようだが、引張力に難があり、コッペル製の増備機(3, 4)が入線すると、これに置き換えられた。魚沼鉄道での廃車1917年(大正6年)11月で、2両とも鉄道材料社に譲渡された。鉄道材料社は、雨宮敬次郎の腹心で姻戚関係にもあった佐藤秀松[1]の経営で、譲渡された機関車はそのまま雨宮鉄工所の門をくぐり、更新修繕を受けたと推定されている。これらの譲渡先は、1918年(大正7年)3月11日馬力から蒸気動力に変更された、北海道登別温泉軌道である。同社では、1925年(大正14年)11月10日電化と1,067mmへの改軌まで使用されたものと思われる。

主要諸元[編集]

  • 全長:3,925mm
  • 全高:2,591mm
  • 軌間:762mm
  • 車軸配置:0-4-0(B)
  • 動輪直径:559mm
  • 弁装置グーチ式
  • シリンダー(直径×行程):140mm×305mm
  • ボイラー圧力:9.8kg/cm2
  • 火格子面積:0.3m2
  • 全伝熱面積:10.7m2
  • 機関車運転整備重量:5.6t
  • 機関車動輪上重量(運転整備時):5.6t
  • 機関車動輪軸重(各軸均等):2.3t
  • 機関車性能
    • シリンダ引張力:825kg
  • ブレーキ方式:手ブレーキ

同形機[編集]

本形式の同形機は、1908年(明治41年)に信達軌道(後の福島交通飯坂東線)へ1両(26)、1911年に鞆鉄道の開業用として2両(1, 2)が製造されている。

脚注[編集]

  1. ^ 1919年に大日本軌道から独立した雨宮製作所の監査役に就いている『日本全国諸会社役員録. 第28回』(国立国会図書館デジタルコレクション)

参考文献[編集]

  • 中川浩一 他「軽便王国雨宮」1972年、丹沢新社刊
  • 臼井茂信「国鉄狭軌軽便線 8」鉄道ファン1983年9月号(No.269)