国鉄5860形蒸気機関車

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阪鶴鉄道 10(後の鉄道院 5862)

5860形は、かつて日本国有鉄道の前身である鉄道院・鉄道省に在籍したテンダー式蒸気機関車である。

概要[編集]

元は、阪鶴鉄道1898年(明治31年)にアメリカブルックス・ロコモティブ・ワークスから3両(製造番号2994 - 2996)を輸入した車軸配置4-4-0(2B)で2気筒単式の飽和式機関車である。阪鶴鉄道ではA4形(8 - 10)と称した。1907年(明治40年)の国有化にともなって国有鉄道に移籍し、1909年(明治42年)に制定された鉄道院の車両形式称号規程では、5860形5860 - 5862)に改番された。

アメリカ古典機スタイルの機関車であるが、曲線を用いた大きな鋼製の運転室や、溝型鋼をそのまま使用した前端梁、火室側部から前端梁に伸びる支柱(ブレース)がないなど、典型的なブルックス・スタイルである。ボイラーは緩やかなワゴントップ型で、第2缶胴上に蒸気ドーム、第1缶胴上に砂箱を設置している。炭水車は3軸固定式で、上縁部の飾りがブルックス・スタイルである。

国有化後は、旧所属の福知山線で使用されたが、1918年(大正7年)に宇都宮と小山に移され、その後北海道に渡って1923年(大正12年)に3両とも廃車となった[1]。5860と5862は払い下げられることなく解体されたが、5861は北海道帝国大学構内に教材として保存された。しかし、太平洋戦争開戦直前の1941年(昭和16年)、羽幌炭礦鉄道の開業用として使用することとなり、鉄道省の苗穂工場で更新修繕を受け、現役に復した。当時は、それほどまでに機関車が入手困難になっていたのである。羽幌炭礦鉄道では、1951年(昭和26年)まで使用され、廃車解体された。

主要諸元[編集]

  • 全長 : 13,450mm
  • 全高 : 3,620mm
  • 全幅 : 2,450mm
  • 軌間 : 1,067mm
  • 車軸配置 : 4-4-0(2B)
  • 動輪直径 : 1,524mm
  • 弁装置 : スチーブンソン式アメリカ形
  • シリンダー(直径×行程) : 356mm×610mm
  • ボイラー圧力 : 11.2kg/cm2
  • 火格子面積 : 1.33m2
  • 全伝熱面積 : 80.8m2
    • 煙管蒸発伝熱面積 : 73.7m2
    • 火室蒸発伝熱面積 : 7.2m2
  • ボイラー水容量 : 2.8m3
  • 小煙管(直径×長サ×数) : 44.5mm×2,749mm×192本
  • 機関車運転整備重量 : 32.37t
  • 機関車空車重量 : 29.07t
  • 機関車動輪上重量(運転整備時) : 22.19t
  • 機関車動輪軸重(第1動輪上) : 10.21t
  • 炭水車運転整備重量 : 24.76t
  • 炭水車空車重量 : 12.21t
  • 水タンク容量 : 10.90m3
  • 燃料積載量 : 5.47t

脚注[編集]

  1. ^ 寺島によると1916年10月西部鉄道管理局より東部鉄道管理局に転属、1919年11月に札幌鉄道管理局へ転属

参考文献[編集]

  • 臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1956年、鉄道図書刊行会
  • 臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社
  • 臼井茂信「機関車の系譜図 2」1972年、交友社
  • 金田茂裕「形式別 日本の蒸気機関車 III」エリエイ出版部刊
  • 寺島京一「機関車史のうらばなし8」『レイル』No9、1978年12月号、21-23頁