遊び (工学)

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工学における遊び(あそび)とは、機械装置操作を行う機構(ユーザーインターフェイス/マンマシンインタフェース)に設けられる、操作が実際の動作に影響しない範囲のこと。あるいは、接合部(→接合法)などに設けられた隙間や緩み。

概要[編集]

遊びは、機械装置の設計段階で組み込まれる安全装置の一種で、操作できる範囲のうち、装置の動作に反映されない範囲のことである。こういった仕組みは、人間意識して行っている挙動のほか、無意識ないし予期しない動作を絶えず行っているために必要とされている。特に「動作しているか、していないか」という二極的な状況しかない装置や、「僅かな操作を大きな動作に拡大」して挙動に反映させる装置に操作を伝える際、操作する側の予期しない動作から事故が発生しないよう設計されている。

また、接合部に意図的に設けられた隙間も「遊び」と呼ばれる。これは素材膨張した際に素材同士が衝突しあって全体に歪みを生んだり、熱膨張率の違いからずれが生じたりするのを防ぐ、また木材のように湿度の変化で素材が伸縮する際の歪みを吸収し破損を予防するなどの理由から設けられる。このほか、振動のある環境下では余り強固に接合することで機構全体に振動が伝わり、末端に負担がかかる傾向があるため、この振動を吸収する意図から遊びが設けられる場合もある。機構が複雑で噛み合わせによって動作する場合にも、遊びが設けられる。

操作における「遊び」の例[編集]

こういった安全機構の通俗的な例としては、自動車(特に一般向けの乗用車)が挙げられる。

これらの装置はハンドルブレーキペダルの操作において、幾らかの遊びが設定されている。こういった遊びが無ければ、ドライバーがくしゃみをしたとか背中がむずむずしたので身じろぎしたとかいう些細な動作が急ハンドルや急ブレーキに直結しかねず、運転者はそういった動作を制限され、多大なストレスを継続的に強いられることにもなるだろう。その意味において、遊びは操作側の負担を軽減させている。

ただ、こういった遊びは大きく取り過ぎる設計も芳しくない。先の例に倣えば、ハンドル半回転分が遊びである自動車では大きくハンドルを操作せねばならず機敏な操作は難しくなるし、めいっぱい踏み込まなければならないブレーキは咄嗟の操作に制動が間に合わなくなる。

このため、遊びの幅は設計段階で過不足無く見積もられるが、更には遊びの範囲をユーザー自身やその要望に沿ってエンジニアが調整できるよう設計されている機器は多い。

「遊び」に類する概念[編集]

遊びは様々なユーザーインターフェイス上に見出せ、コンピュータ用のキーボードでも一定範囲以上に押し込まないと反応しないなどの構造が見られる。

こういった考え方の延長には、信頼性設計の中にも、一定の操作のうちは何度でも取り消せるようにできるという設計もあり、例えばタッチパネルを使った機器や電子商店街ショッピングカート機能では、最終的な決定操作をするまでは、それら操作が確定されないというものがみられる。

接合と「遊び」の例[編集]

所謂「レールの継ぎ目」

接合部に意図的に設けられる遊びでは、例えば鉄道軌条(レール)に設けられた隙間(→軌条#継ぎ目)が所謂「ガッタン、ゴットン」と列車の車輪が通過する際に音を立てるのはよく知られているところであるが、これは寒暖の差によってレールの金属棒が伸縮する際の遊びである。この継ぎ目が不足しあっていると、酷暑の折にレール同士が衝突しあって曲がってしまう(脱線事故につながる)し、長いレールが設置されている区間で予想以上にレールが冷えて縮むと、途中で破断する危険がある。

このほか、ドライブチェーンにも遊びが設けられる。これは噛み合わせ機構によるものだが、この遊びによって急な負荷が掛かるのが予防されるほか、噛み合わせ機構が十分に噛み合っている箇所と多少ずれている箇所があっても、この遊びがずれている箇所の余分な力を分散させる。

ただ、これらの遊びが必要十分以上にあると、その遊びに由来するトラブルの原因となる。接合部の隙間はその各々が僅かでもその合計が全体を大きく歪ませてしまう。ドライブチェーンなど噛み合わせ機構では、動作に際して噛み合わせの状態が維持できなくなったりする。いわゆる「(自転車オートバイの)チェーンが外れる」のは、ドライブチェーンが緩み過ぎ噛み合わせ状態が維持できなくなった状態で発生するが、その際には遊びを残して調整する必要がある。

関連項目[編集]