赤頭

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赤頭(あかあたま)は、鳥取県に伝わる伝説の人物である。

「赤頭」を「あかがしら」と読む高知県に伝承される妖怪も存在するが両者に深い関係は見られず、別種のものである。

赤頭(あかあたま)[編集]

鳥取県西伯郡名和村に伝わる伝説に登場しており、非常に力自慢の男。その怪力米俵(こめだわら)を12俵まとめて運ぶほどだった。

昔、赤頭が観音堂でひと休みしていたところ、4、5歳程度の男の子が現れ、観音堂の柱に五寸釘(ごすんくぎ)を素手で刺しはじめた。その力もさるものながら、今後は素手で釘を抜き取ったかと思うと、やがて釘を刺す、抜くを繰り返して遊び始めた。しかも、よく見ると素手どころか、使っているのは指1本のみだった。赤頭は「子供に負けるか」とばかりに自分も釘を刺すが、怪力自慢の彼でも、両手で釘を刺すのがやっとで、抜き去るのは到底無理だった。男の子はその情けない様子を笑いつつ、どこかへと去っていった。

赤頭の死後、村の若者たちの何人かは、彼にあやかって怪力を授かろうと彼の墓に集まるようになった。ところが夜になると、墓のもとにいる者たちの背中に大変な重みが伝わり、とても我慢ができなくなった。その様子はまるで、目に見えない重石のようなものが背中に乗せられ、何者かがそれを背中に押しつけてきたようだったという[1]

『名和村郷土誌』およびそこから再録をした荻原直正『因伯伝説集』(1951年 鳥取県図書館協会・発行)の「赤頭」の項目には同様に怪力を持った人物の伝説として、鳥取県高草郡にいた三田七蔵(通称は三田七)が竹やぶをかるがると根こそぎ抜いて、畑地にしたという話も併記されている[1]

解釈[編集]

昭和後期の妖怪に関する図鑑や書籍には、赤頭が出会ったさらなる怪力の男の子のほうが「赤頭」という名の妖怪であると紹介しているもの[2]も存在したため、「赤頭」が妖怪として表現されることがあった(なお、人を驚かすだけで傷つけたりはしない[3]等と解説されており、実際の伝説に登場した怪力の男の子の性質そのままの場合が多く、単なる誤解による名称化である)。2000年代以後は、実際の伝説における記述が紹介されるようになっており[4]、混乱は解消している。

高知県の妖怪「赤頭」[編集]

『土佐化物絵本』より「赤頭(あかがしら)」

「あかがしら」と読む。土佐国吾川郡勝賀瀬(現・高知県同郡いの町)に伝わる妖怪。赤い髪が太陽のように輝き、あまりに眩しくてふた目と見られないほどという。2本足で歩くが、その足元は笹やカヤなど草むらに隠れてよく見えず、人に危害を加えることもないという[5]

土佐化物絵本での赤頭[編集]

江戸時代末期から明治時代初期にかけての作と見られる妖怪絵巻『土佐化物絵本』には「勝賀瀬の赤頭」として記載されており、「山北の笑い女」「本山の白姥[6]」と並んで土佐の3大妖魔の一つとされる。勝賀瀬(現・いの町勝賀瀬)である者がこれに出遭い、朝日に向かったかのように再び見ることができなくなり、赤頭のもとを立ち去った後で眼病を患って失明しかけたが、手当てを受けてようやく治癒したという[7]

江戸時代の妖怪絵巻『百鬼夜行絵巻』にも「赤がしら」という妖怪の絵が描かれている。同絵巻には名前と絵が記載されているのみで、どのような妖怪かは判明していない。赤い髪という特徴が土佐の赤頭と似ているのではないかとの指摘[8]も存在するが、推測の域を出ていない。

脚注[編集]

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  1. ^ a b 荻原直正『因伯伝説集』牧野出版社、1974年、256-257頁。NCID BA47101231
  2. ^ 水木しげる水木しげるの続・妖怪事典東京堂出版、1984年、26頁。ISBN 978-4-490-10179-9
  3. ^ 水木しげる『妖怪大図鑑』II、講談社〈講談社まんが百科〉、1996年、23頁。ISBN 978-4-06-259041-9
  4. ^ 水木しげる決定版日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様講談社講談社文庫) 2014年 ISBN 978-4-06-277602-8 29頁 以前までの「赤頭」から「赤頭と小僧の妖怪」と題が変更されており、主人公の人間の名も「赤頭」であると明記された。
  5. ^ 「近世土佐妖怪資料」『日本民俗文化資料集成』第8巻、広江清編、三一書房、1988年、313頁。ISBN 978-4-380-88527-3
  6. ^ 「本山の白姥」については、『土佐化物絵本』に妖怪画とともに「土佐国三ツの妖魔随一本山の白姥」と記載されているのみで、具体的にどのような妖怪かは記載されていない(参考:後掲『あの世・妖怪・陰陽師』)。
  7. ^ 常光徹「土佐のお化けたち」『あの世・妖怪・陰陽師 異界万華鏡・高知編』梅野光興他編、高知県立歴史民俗資料館、2003年、15-16頁。
  8. ^ 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、5頁。ISBN 978-4-620-31428-0

関連項目[編集]