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「スタンリー・メイヤーの水燃料電池」の版間の差分

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== 日本での言及 ==
== 日本での言及 ==
日本では、[[古歩道ベンジャミン|ベンジャミン・フルフォード]]が自著でメイヤーの死について石油利権による暗殺して言及している<ref>ベンジャミン・フルフォード『日本を貶めた「闇の支配者」が終焉を迎える日』[[ベストセラーズ]]、2010年3月26日。</ref><ref>ベンジャミン・フルフォード闇の支配者に握り潰された世界を救う技術[[武田ランダムハウスジャパン]]20094月23日。</ref><ref>[https://www.heeday.com/car/stanley-meyer/ 故スタンリーマイヤーは83Lの水でアメリカ大陸を自動車で横断成功] - Heeday's Official Blog</ref>。[[さいとうたかを]]は[[漫画]]『[[ゴルゴ13]]』でメイヤーの一件を元にしたエピソード「ゼロ・ミッション 排ガスゼロ(第419話)<ref>[https://blog.goo.ne.jp/golgo13togo_duke/e/fac2b64224a360cc5f8912da271fe899 ゴルゴ13第126巻-2ゼロ・ッショ 排ガスゼロ] - ゴルゴ13総合研究所『俺背後に立つな!』</ref>」を製作したとされてい<ref>[http://deco-pon.org/index.php/page/stanley_meyer ゴルゴ13ネタにもなったタンリ・マイヤ氏の究極のエコ・カー【水で走る車】について] - DECO-PON 我楽多電子盤 凸</ref>(ただし、当該エピソードの発表年は1997年9月で、メイヤーの死去以前のものである)
日本での言及あまり多くないが、[[古歩道ベンジャミン|ベンジャミン・フルフォード]]はメイヤー水燃料電池を画期的な新技術として著書取り上げ、メイヤーの死石油利権による暗殺だったのではないか述べている<ref>{{Cite book|和書|author=[[古歩道ベンジャミン|ベンジャミン・フルフォード]] |title=闇の支配者に握り潰された世界を救う技術 |publisher=[[武田ランダムハウスジャパン|ランダムハウス講談社]] |date=2009-4-22 |isbn=978-4-270-00487-6 |pages=76-77, 81-83}}</ref><ref>{{Cite book|和書|author=ベンジャミン・フルフォード |title=日本を貶めた「闇支配者が終焉迎え ― 世界”裏”権力崩壊からアジアの時代へ |publisher=[[ベトセラズ|KKベストセラズ]] |date=2010-4-5 |isbn=978-4-584-13222-7 |pages=188-195}}</ref>。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

2022年5月25日 (水) 22:07時点における版

水燃料電池とは、アメリカ人発明家のスタンリー・アレン・メイヤー(Stanley Allen Meyer、1940年8月24日 - 1998年3月20日)が発明したある種の「永久機関」である。この装置を市販の自動車に取り付ければ、ガソリンの代わりに燃料にして走ることができるとメイヤーは主張した。しかしオハイオ州裁判所は、こうしたメイヤーの主張が詐欺に当たると1996年に認定した[1][2]

概要

水燃料電池は、水をその構成元素である水素酸素に分解するとされており、次に水素ガスを燃焼させる事でエネルギーを生成した。これは水分子を再構成するプロセスである。メイヤーの主張では、水燃料電池は電気分解を実行する為に必要なエネルギーが、従来の科学により予測又は測定された最小エネルギー要件より小さくて済むとされており[1]作用機序は液体としての水と同じ2:1の比率で混合された酸水素ガスである「ブラウン・ガス」に関係しているとされていた。ブラウン・ガスは周囲の空気(窒素、酸素、二酸化炭素一酸化炭素メタンクロロフルオロカーボンフリーラジカル電子放射線など)と混合され[3]、得られた水素ガスを燃料させてエネルギーを生成し、水が分解された装置とは別の装置で水分子が再構成された。メイヤーの主張通りに装置が働いている場合、熱力学の第一法則及び第二法則の両方に違反し[1][3]、所謂永久機関として動作する事を意味していた[3]

「燃料電池」という用語

水燃料電池の回路図[4]

メイヤーは自身の出願した一連の特許[4][5][6]で、通電によって水素と酸素を生成する装置のことを一貫して「燃料電池」(fuel cell)または「水燃料電池」(water fuel cell)と呼んでいる。しかしこれは科学工学分野における通常の用語の意味に反しており、正しくはむしろ「電解槽英語版」(electrolytic cell)と呼ぶべきものである[7]。更には「燃料電池」という用語は通常、化学的な酸化還元反応から電気を生成する電池という意味で用いられるものである[8][9][10]が、メイヤーの「燃料電池」は彼の特許と右の画像の回路図に示されているように、電力を生成するのではなく消費するものとなっていた。メイヤーは1990年の特許で「水燃料電池アセンブリ」の使用について言及しており、「燃料電池水キャパシタ」についての幾つかの図面を描いている。特許によれば、「燃料電池」という用語は「本発明の方法に従って燃料ガスを生成する水キャパシタ電池を含む単一の装置」を示すことになっていた[5]

メディア報道

水燃料電池コンデンサ[5]

オハイオ州のテレビ局のニュース報道で、メイヤーは自身の水燃料電池を動力源としていると主張するデューンバギーを公開した。報道の中で、メイヤーはロサンゼルスからニューヨークへの移動に必要な水は僅か22米ガロン(83リットル)であると述べており[11]、更には、メイヤーは点火プラグを水素・酸素混合物をエンジンのシリンダーに導入するインジェクターに置き換えたと主張した。水は電気共鳴に晒され、それにより水は基本的な原子構成に分解される。水燃料電池は水を水素ガスと酸素ガスに分解し、その後従来型の内燃機関で燃焼して水蒸気に戻し、正味のエネルギーを生成するとされた[2]

なお、メイヤーのデューンバギーに搭載された自動車エンジンは、フォルクスワーゲン・タイプ1の1.6L空冷ガソリンエンジン英語版であり[12]火花点火内燃機関から点火プラグを除去した後、どの様に燃焼室内で酸水素ガスに点火させていたのかについては言及が無かった。もしもガソリンエンジンをディーゼルエンジンのように圧縮着火させていたのであれば、予混合圧縮着火を世界に先駆けて実用化させていた事になる[13]。メイヤー自身のバギーの動力装置についての説明は一貫性が無く、ある時には「点火プラグを水分解装置に置き換えた」と説明したりもしていた[14]

フィリップ・ボール英語版は、2007年の学術雑誌ネイチャー」への寄稿でメイヤーの主張を疑似科学と定義し、次の様に記述した。「メイヤーの車がどのように機能するかを確認するのは容易ではない。しかし、放出されるよりも少ないエネルギーで水を分解できる燃料電池が含まれているのは確かだ。疑似科学に反対する十字軍はこれに対して好きなだけ怒鳴ったり絶賛したりする事が出来るだろうが、最終的には燃料としての水の神話が消えることはないことを受け入れた方が良いだろう[3]。」

2021年現在、メイヤーの装置に対する査読済みの研究は科学文献には発表されていない。ネイチャーの記事はメイヤーの主張を「燃料としての水の神話」の一つとして取り上げていた[3]

訴訟

スタンリー・メイヤーの「発明」は、彼から水燃料電池技術の販売権を購入した2人の投資家によって1996年に訴訟を起こされて以降、「詐欺」と見なされるようになった。裁判の中で、メイヤーの車は法科学検証が行われる事になっており、電気工学の専門家としてロンドン大学クイーン・メアリー校教授で、王立工学大学英語版フェローを務めるマイケル・ラトン英語版が招聘されていた。しかし、メイヤーはラトン教授が試験当日に「下手な言い訳」と見なした行為を行ったとして、試験の続行を許可しなかった[2]。その後、メイヤーの車は3名の専門家証人によって調査が行われたが、証人は法廷で「セルについて革命的な要素は全く無く、単に従来の電気分解を使用していただけだった」と報告。裁判所はメイヤーが「著しく悪質な詐欺」を犯していたと認定し、2人の投資家に25,000米ドルを返済する様に命じた[2]

メイヤーの死

1998年3月20日、スタンリー・メイヤーはレストランで食事をしている際に急死した。メイヤーの兄弟は彼が2人のベルギー人投資家と会食中、メイヤーは突然店外に飛び出し「彼らが私に毒を盛った」と叫んでいたと主張した[1]。後日、グローブシティ (オハイオ州)英語版警察は、高血圧を患っていたメイヤーが、脳動脈瘤により死亡したとするフランクリン郡検死官の報告書を公表した[1]。メイヤーの支持者の何人かは、メイヤーが彼の発明を抑圧する為に暗殺されたと信じている[1][3][15]。なお、メイヤーの死の当日に会食の席に居合わせた人物とされているベルギーの投資家の1人であるフィリップ・ヴァンデモールテレは、メイヤーを数年間財政的に支援しており、彼を個人的な友人と見なしていたが、噂がどこから来たのか見当がつかないと証言している。同時に、ヴァンデモールテレは自身には工学的な専門知識は無く、メイヤーの車はデモ走行で見たのみであると前置きした上で、メイヤーの発明が虚偽ではなく本物であったと今でも信じているが、メイヤーの死後の遺族の行動に不審なものを感じ、資金援助を打ち切った事。メイヤーの発明は奇跡と陰謀論について多大な議論を巻き起こしたが、結局の処彼の技術を模倣できた者は誰もおらず、彼の遺族も誰一人金持ちにならなかったと総括もしている[16]

余波

2021年現在、メイヤーの特許は全て失効しており、彼の発明の全てがパブリックドメインとして制限やロイヤルティの支払い無しに全ての人が利用する事が出来る状況となっている[17]。しかし、エンジンや車両の製造メーカーで彼の研究を採り入れた会社は存在しない[18][19]

日本での言及

日本での言及はあまり多くないが、ベンジャミン・フルフォードはメイヤーの水燃料電池を画期的な新技術として著書で取り上げ、メイヤーの死は石油利権による暗殺だったのではないかと述べている[20][21]

関連項目

水を燃料として発電するシステム (文献開示のみで特許申請なし。みなし取り下げとなる)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-2006-244714/FD7F2B64E58EE10205E83DCA672DC3E7DE5E544B568D413C4327DCDE08DD63BC/11/ja

脚注

  1. ^ a b c d e f Dean Narciso (2007年7月8日). “The Car that Ran on Water”. コロンバス・ディスパッチ英語版. 2008年2月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年3月24日閲覧。
  2. ^ a b c d Edwards, Tony (1996年12月1日). “End of road for car that ran on Water”. サンデー・タイムズ (Times Newspapers Limited): p. Features 12 
  3. ^ a b c d e f Ball, Philip (September 14, 2007). “Burning water and other myths”. Nature News. doi:10.1038/news070910-13. https://www.nature.com/news/2007/070914/full/news070910-13.html 2008年12月8日閲覧. "You start with water, you break it apart into its constituent elements (hydrogen and oxygen), and then you recombine them by burning. (...) Extracting net energy from this total cycle is impossible, if you believe in the first and second laws of thermodynamics. Otherwise, you have the basis of a perpetual-motion machine. (...) He died in 1998 after eating at a restaurant; the coroner diagnosed an aneurysm, but the conspiracy web still suspects he was poisoned." 
  4. ^ a b アメリカ合衆国特許第 5,149,407号: Process and apparatus for the production of fuel gas and the enhanced release of thermal energy from such gas
  5. ^ a b c アメリカ合衆国特許第 4,936,961号: Method for the production of a fuel gas
  6. ^ アメリカ合衆国特許第 4,826,581号: Controlled process for the production of thermal energy from gases and apparatus useful therefore; アメリカ合衆国特許第 4,798,661号: Gas generator voltage control circuit; アメリカ合衆国特許第 4,613,779号: Electrical pulse generator; アメリカ合衆国特許第 4,613,304号: Gas electrical hydrogen generator;アメリカ合衆国特許第 4,465,455号: Start-up/shut-down for a hydrogen gas burner; アメリカ合衆国特許第 4,421,474号: Hydrogen gas burner; アメリカ合衆国特許第 4,389,981号: Hydrogen gas injector system for internal combustion engine
  7. ^ コロンビア百科事典 (コロンビア大学出版, 2004) では、「燃料電池」を「ガス燃料の酸化による化学エネルギーが連続的プロセスによって電気エネルギーに直接変換される電池」と定義しており、「電気分解」は「通電によって導電性溶液または溶融塩を分解すること」と定義されている。
  8. ^ Whittingham, M. S.; Savinell, R. F.; Zawodzinski, T. (2004). “Introduction: Batteries and Fuel Cells”. Chem. Rev. 104 (10): 4243–4244. doi:10.1021/cr020705e. PMID 15669154. 
  9. ^ Winter, M.; Brodd, R. (2004). “What Are Batteries, Fuel Cells, and Supercapacitors?”. J. Chem. Rev. 104 (10): 4245–4270. doi:10.1021/cr020730k. PMID 15669155. 
  10. ^ Chem. Rev.; 2004; 104(10), entire issue
  11. ^ ラルフ・ロビンソン(リポーター)、トム・ライアン(ニュースキャスター)、ゲイル・ホーガン(ニュースキャスター)「Unknown Episode [Videorecording (Broadcast)]」『Action 6 News英語版Station call sign: WSYX. Filmed in Groveport. Length: 1 Minute 45 seconds. Republished by Annaheim, Kurt W. "Media Page - See, Hear and Discover Free Electricity." File name: stan_meyers_bb.wmv Archived 2008-06-25 at the Wayback Machine.. Last updated 7 May 2008 Archived 14 February 2009 at the Wayback Machine.. Befreetech.Com. Accessed 23 June 2008.
  12. ^ スタンリーマイヤーの不思議な死–「水力車」を発明した男 - Mysteriesrunsolved
  13. ^ HCCI Engine - Advanced Technology Consultants
  14. ^ It runs on water, Part 2”. waterpoweredcar.com. 2018年4月12日閲覧。
  15. ^ [1][リンク切れ] Lieutenant Steven Robinette of the Grove City Police Department talks about the investigation into Stanley Meyer's death. Robinette was in charge of the detective bureau at that time. quote: "The one thing that was based on science."
  16. ^ Pepijn van Erp (2020年11月10日). “Stanley Meyer, the inventor of the water-powered car, was not killed by Belgian investors” (英語). pepijnvanerp.nl. 2020年12月15日閲覧。
  17. ^ General Information Concerning Patents”. uspto.gov. 2021年4月15日閲覧。
  18. ^ HHO "run your car on water", a guide for journalists”. aardvark.co.nz. 2021年4月15日閲覧。
  19. ^ I get mail: Brown's Gas and Perpetual Motion”. scientopia.org. 2021年4月15日閲覧。
  20. ^ ベンジャミン・フルフォード『闇の支配者に握り潰された世界を救う技術』ランダムハウス講談社、2009年4月22日、76-77, 81-83頁。ISBN 978-4-270-00487-6 
  21. ^ ベンジャミン・フルフォード『日本を貶めた「闇の支配者」が終焉を迎える日 ― 世界”裏”権力の崩壊からアジアの時代へ』KKベストセラーズ、2010年4月5日、188-195頁。ISBN 978-4-584-13222-7 

外部リンク