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'''エイジズム'''(ageism、agism)とは年齢に対する偏見のこと。年齢主義ともいう。
'''エイジズム'''(ageism、agism)とは年齢に対する偏見のこと。年齢主義ともいう。
== 概要 ==
== 概要 ==
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エイジズムは年齢差別や高齢者差別の原因となる。
エイジズムは年齢差別や高齢者差別の原因となる。


ロバート・バトラー(Robert N Butler)により1969年に提唱された言葉である。
ロバート・バトラー(Robert N Butler)により[[1969年]]に提唱された言葉である。


今世紀最後の偏見・差別ともいわれる。
今世紀最後の偏見・差別ともいわれる。


一般的に、1928年アメリカで提唱された年齢差別age discriminationは雇用問題を対象にしていたため、エイジズムとは区別される傾向がある(詳しくは”年齢差別との相違”を参照)
一般的に、[[1928年]]アメリカで提唱された年齢差別age discriminationは[[雇用]]問題を対象にしていたため、エイジズムとは区別される傾向がある(詳しくは”年齢差別との相違”を参照)


個々人がもつ個性や人間性を無視して、年齢に付随する固定観念(Stereotype)や年齢規範(age norm)をもとに個人またはある一定の年齢集団を一面的に捉えること。
個々人がもつ個性や人間性を無視して、年齢に付随する[[固定観念]](Stereotype)[[年齢規範]](age norm)をもとに個人またはある一定の年齢集団を一面的に捉えること。
また、その観念に基づく差別行為。
また、その観念に基づく差別行為。
エイジズムは、[[人種差別]](racism)や[[女性差別]](sexism)にも密接にかかわるものであり、それによってそれぞれの差別をさらに「二重の危険」(Double Jeopardy)として複雑化する傾向をもつ。
エイジズムは、[[人種差別]](racism)や[[女性差別]](sexism)にも密接にかかわるものであり、それによってそれぞれの差別をさらに「二重の危険」(Double Jeopardy)として複雑化する傾向をもつ。
またエイジズムには個人的(他者や自己)側面と社会的・制度的側面を持ち、意図的なものと非意図的なものがある。<ref>Erdman B.Palmore ''AGEISM Negative and Positive cnceps.'' New York 'Springer Pub' 1999</ref>
またエイジズムには個人的(他者や自己)側面と社会的・制度的側面を持ち、意図的なものと非意図的なものがある。<ref>Erdman B.Palmore ''AGEISM Negative and Positive cnceps.'' New York 'Springer Pub' 1999</ref>


エイジズムは、多くの場合高齢者が対象となるため、一般的には「高齢者差別」ともいえるが子供や中年など他の年齢層などもその差別の対象となる。
エイジズムは、多くの場合[[高齢者]]が対象となるため、一般的には「高齢者差別」ともいえるが子供や中年など他の年齢層などもその差別の対象となる。


== 特色 ==
== 特色 ==


エイジズムは、年齢や加齢を死や障害、時には性的な意味と結びつけることによって生じる傾向にある。
エイジズムは、年齢や加齢を[[]][[障害]]、時には性的な意味と結びつけることによって生じる傾向にある。


また他の差別と異なる点は、被差別の対象者が、固定的ではなく時間の経過(加齢)とともに差別する側から差別される立場になる可能性を持つという特色がある。
また他の差別と異なる点は、被差別の対象者が、固定的ではなく時間の経過(加齢)とともに差別する側から差別される立場になる可能性を持つという特色がある。


近年には、カリシュ(Richard A Kalish ,PhD)が主張する「New Ageism」つまり福祉・医療におけるサービス提供者による高齢者に対するネグレクトや、赤ちゃん言葉を発生させる思考形式や対応が注目されつつある<ref>Richard A Kalish ''The new ageism and the failure models: A polemic''The Gontrogical society of America 1979</ref>。
近年には、カリシュ(Richard A Kalish ,PhD)が主張する「New Ageism」つまり[[福祉]][[医療]]におけるサービス提供者による高齢者に対する[[ネグレクト]]や、[[幼児語|赤ちゃん言葉]]を発生させる思考形式や対応が注目されつつある<ref>Richard A Kalish ''The new ageism and the failure models: A polemic''The Gontrogical society of America 1979</ref>。


== 年齢差別(Age discrimination)との相違 ==
== 年齢差別(Age discrimination)との相違 ==
欧米では、ageismとage discrimination は異なった意味で使われている<ref> John Macnicol ''Age Discrimination - An historical and contemporaary analysis'' Cambridge university press 2006 p6~p7</ref>。
欧米では、ageismとage discrimination は異なった意味で使われている<ref> John Macnicol ''Age Discrimination - An historical and contemporaary analysis'' Cambridge university press 2006 p6~p7</ref>。


年齢差別(age discrimination)という言葉は、20世紀初頭にはすでに使われており、1927年9月27日付のニューヨークタイムス紙の`YEARS PROVEHANDICAP TOWOMEN IN BUSINESS’における記事に見ることができる。そこでは主に女性に関して年齢の若い者が職についているため、連邦当局が年齢よりも働く者の個性や能力を重視すべきことが述べられている。こうした点から欧米では、一般にage discriminationが主に雇用問題から使われ始めた用語であるため、経済的な意味合いで使われる傾向があるのに対し、1969年に提唱されたエイジズムは、‘ism’つまり個人的な固定概念などを基に雇用問題ばかりでなく、社会的文化的なより広い意味で使われる傾向がある。
年齢差別(age discrimination)という言葉は、20世紀初頭にはすでに使われており、[[1927]][[9月27]]付の[[ニューヨーク・タイムズ|ニューヨークタイムス]]紙の`YEARS PROVEHANDICAP TOWOMEN IN BUSINESS’における記事に見ることができる。そこでは主に女性に関して年齢の若い者が職についているため、連邦当局が年齢よりも働く者の個性や能力を重視すべきことが述べられている。こうした点から欧米では、一般にage discriminationが主に雇用問題から使われ始めた用語であるため、経済的な意味合いで使われる傾向があるのに対し、1969年に提唱されたエイジズムは、‘ism’つまり個人的な固定概念などを基に雇用問題ばかりでなく、社会的文化的なより広い意味で使われる傾向がある。


==脚注節==
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2018年8月2日 (木) 14:54時点における版

エイジズム(ageism、agism)とは年齢に対する偏見のこと。年齢主義ともいう。

概要

エイジズムは年齢差別や高齢者差別の原因となる。

ロバート・バトラー(Robert N Butler)により1969年に提唱された言葉である。

今世紀最後の偏見・差別ともいわれる。

一般的に、1928年アメリカで提唱された年齢差別age discriminationは雇用問題を対象にしていたため、エイジズムとは区別される傾向がある(詳しくは”年齢差別との相違”を参照)

個々人がもつ個性や人間性を無視して、年齢に付随する固定観念(Stereotype)や年齢規範(age norm)をもとに個人またはある一定の年齢集団を一面的に捉えること。 また、その観念に基づく差別行為。 エイジズムは、人種差別(racism)や女性差別(sexism)にも密接にかかわるものであり、それによってそれぞれの差別をさらに「二重の危険」(Double Jeopardy)として複雑化する傾向をもつ。 またエイジズムには個人的(他者や自己)側面と社会的・制度的側面を持ち、意図的なものと非意図的なものがある。[1]

エイジズムは、多くの場合高齢者が対象となるため、一般的には「高齢者差別」ともいえるが子供や中年など他の年齢層などもその差別の対象となる。

特色

エイジズムは、年齢や加齢を障害、時には性的な意味と結びつけることによって生じる傾向にある。

また他の差別と異なる点は、被差別の対象者が、固定的ではなく時間の経過(加齢)とともに差別する側から差別される立場になる可能性を持つという特色がある。

近年には、カリシュ(Richard A Kalish ,PhD)が主張する「New Ageism」つまり福祉医療におけるサービス提供者による高齢者に対するネグレクトや、赤ちゃん言葉を発生させる思考形式や対応が注目されつつある[2]

年齢差別(Age discrimination)との相違

欧米では、ageismとage discrimination は異なった意味で使われている[3]

年齢差別(age discrimination)という言葉は、20世紀初頭にはすでに使われており、1927年9月27日付のニューヨークタイムス紙の`YEARS PROVEHANDICAP TOWOMEN IN BUSINESS’における記事に見ることができる。そこでは主に女性に関して年齢の若い者が職についているため、連邦当局が年齢よりも働く者の個性や能力を重視すべきことが述べられている。こうした点から欧米では、一般にage discriminationが主に雇用問題から使われ始めた用語であるため、経済的な意味合いで使われる傾向があるのに対し、1969年に提唱されたエイジズムは、‘ism’つまり個人的な固定概念などを基に雇用問題ばかりでなく、社会的文化的なより広い意味で使われる傾向がある。

脚注節

  1. ^ Erdman B.Palmore AGEISM Negative and Positive cnceps. New York 'Springer Pub' 1999
  2. ^ Richard A Kalish The new ageism and the failure models: A polemicThe Gontrogical society of America 1979
  3. ^ John Macnicol Age Discrimination - An historical and contemporaary analysis Cambridge university press 2006 p6~p7