濡れ落ち葉

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濡れ落ち葉(ぬれおちば)とは

  1. 濡れた落ち葉
  2. 上記の「払っても払ってもなかなか離れない」様子から転じて、主に定年退職後の夫が、特に趣味もないために、妻が出かけようとすると必ず「ワシも(付いて行く)」と言って、どこにでも付いて来る様子を指すようになった。「濡れ落ち葉症候群」とも言う。またそのような「妻にべったりの夫」そのものを指すこともある。後者の場合は「濡れ落ち葉族」と呼ばれることもある。

本稿では、上記の2.について記述する。

解説[編集]

評論家樋口恵子が、「あるシンポジウムで伝聞として聞いたもの」として1989年の春頃に紹介した[1]ことで広まり、「濡れ落葉」として1989年流行語大賞新語部門・表現賞を受賞した[2]。一種の「男性差別」にあたる表現との指摘もある[3]

樋口恵子本人は自分の造語ではない事情を選者である自由国民社に話したが、以下のような事情により説得されたというエピソードを内閣府の平成14年度「高齢社会研究セミナー(平成21年度以降は「高齢社会フォーラム」)」で紹介している。

以下、平成14年度「高齢社会研究セミナー報告書」から引用

そのころ、「セクシュアル・ハラスメント」も賞を得ました。「セクシュアル・ハラスメント」というのは、今や改正男女雇用機会均等法においても、その防止努力義務が事業主に課せられています。ただ、日本の法律はカタカナをめったに入れませんから、別な表現になっています。「セクシュアル・ハラスメント」、いわゆるセクハラは造語でも新語でもないはずですが、その年に福岡ではじめて、全員女性から構成される弁護団がつき、セクシュアル・ハラスメントが福岡地裁で勝訴を収めたからです。「セクハラ」という絶妙な縮め語で流行語になりました。この賞は福岡の弁護団を代表する女性弁護士に与えられました。「ですから、樋口さんがもらって、ちっともおかしくない。やはり定年後の男性ウォッチャーとして、あなたより適切な人はおりません」と言われて、「そうですか。では、自分がつくり手だという人が出たら、いつでも渡しますからね」ということで、授賞式に行きました。元『週刊朝日』編集長をなさった扇谷正蔵先生が賞杯を渡してくださいました。よく存じ上げている先生で「うーん。おれはこういう表現はいやなのだよ。いやだな、いやだな。しかしよく時代を表しているな」と言いながら、賞杯を渡してくださいました。(引用ここまで)

なお、樋口が耳にしたのは「近ごろは、粗大ゴミではなく『濡れた落ち葉』と言うのですって」であり、当初は樋口も「濡れ落ち葉」ではなく「濡れ落ち葉」と「た」の入った状態で紹介していた[1]

定年退職に伴う「燃え尽き症候群」と共に語られることが多い[4]

働いている間は仕事に追われるあまり趣味を持つことはおろか、家庭を顧みることも、地域での活動に参加することもなかったため、退職後いざ何かを始めようと思ってもそのために必要な人間関係もなければノウハウもなく、またそれらを得るために努力しようという意欲もエネルギーもない状態である。

このような状態に陥るのは男性が多いとされ、その原因の1つには男性ホルモンの低下があると言われている[5]

類義語・関連語[編集]

ワシも族
「濡れ落ち葉族」と同義。「ワシも(付いて行く)」から[6]
粗大ゴミ
1981年、評論家の樋口恵子が毎日新聞に寄稿した論文の中で使用したことで広まったが、樋口本人が考えた表現ではなく、伝聞で聞いた表現(定年退職者を輩出している湘南地域の公民館で先輩の主婦から聞いた言葉「定年後の主人というのはなんて鬱陶しいのでしょう。かさばるばかりでものの役には立たず、今さら修理はきかず、捨てるといったって、手間隙かかる。まるで粗大ゴミでございます」)を紹介したものである[1]。「濡れ落ち葉族」とほぼ同義だが、休日に家でゴロゴロしている夫に対して用いられることもある。
毎日新聞に寄稿した際のエピソードを樋口恵子本人が内閣府の平成14年度「高齢社会研究セミナー(平成21年度以降は「高齢社会フォーラム」)」で以下のように紹介している。
翌日から毎日新聞学芸部への反響はすごく、結果としては半々だったそうですが、最初の反応は「男だって、何も好きで働いていると思うか。妻子を養うために、昔から男は外に出ると7人の敵あり。妻子を養わんがために、耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、働きに働いてきたというのに、定年後、粗大ゴミとは何事か。うぬ、この樋口恵子などという女は許しておけぬ」という感じです。私はちゃんと伝聞として書いたのに、こうした反応がありました。しかし、「そのとおりですわ」という声もまたいっぱい来ました。「夫に定年があるのに、なぜ家事には定年がないのですか」。たくさんの投書の中から、名記者増田れい子さんは2回の特集を組みました。そこにおいて「粗大ゴミ」という言葉は全国に知れ渡り、私が「そうじゃない」と言っているのに、私は命名者のごとく扱われたのです。気の早い男からは「あなたのような女は人間の風上にもおけぬ」とか、脅迫状まで来ました。(引用ここまで)
なお、1981年には定年後の男性を表現するこの言葉「粗大ゴミ」の所為で男性から脅迫状まで来たのに、1989年には定年後の男性を表現するこの言葉「濡れ落ち葉」は社会に認知され流行語大賞新語部門・表現賞まで受賞したのは、「(社会の)大きな変化であるが、実は男性自身が変わり始めたのです」と樋口恵子自身が同じセミナーの中で発言している。
産業廃棄物
1985年女子差別撤廃条約批准に伴い朝日新聞が開催した国際シンポジウムでフェミニスト上野千鶴子が「定年後の夫のことを『粗大ゴミ』などと言っている人たちがいるが、私はそれよりも『産業廃棄物』と呼びたい」と発言したことで広まった。これは上野の造語というよりは、既に一部で使われていたようである[1]。「粗大ゴミ」と同義だが、表現が激化したもの。
高齢社会NGO連携協議会共同代表堀田 力は会社人間だった男性の定年後の状態は、家庭にも地域にも居場所がなく、「濡れ落ち葉」、「粗大ごみ」、「粗大生ごみ」、「産業廃棄物」、そして、「核燃料廃棄物」──どこにも引き取り手がないという意味ですが──そのコースを辿ります、として高齢社会の男性の生き方に「生きがい」を見つける事を提唱している。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 高齢社会研究セミナー講演(平成14年度)”. 内閣府. 2010年8月4日閲覧。
  2. ^ ユーキャン新語・流行語大賞全受賞記録 第6回〔1989(昭和64/平成元)年〕”. 自由国民社. 2010年8月4日閲覧。
  3. ^ 治部れんげ (2007年2月22日). “【第2回】語られざる男性差別”. 数字で見る男と女の働き方. 日経ビジネス. 2010年8月9日閲覧。
  4. ^ 渋谷昌三 『60歳からの 人生を愉しむ心理学』 日本実業出版社2012年ISBN 4534049773ASIN 4534049773
  5. ^ 和田秀樹 (2013年5月15日). “男性ホルモンの維持がサバイバルにつながる”. 和田秀樹 サバイバルのための思考法. 日経BP. 2013年7月7日閲覧。
  6. ^ 高柳美知子 (2012年8月27日). “男は「粗大ごみ」か、「濡れ落ち葉」か”. ヨミドクター. 読売新聞. 2013年7月7日閲覧。

関連項目[編集]