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満州鉄道まぼろし旅行

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
満州鉄道まぼろし旅行
著者 川村湊
発行日 1998年9月
発行元 文藝春秋
ジャンル 旅行記
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 283
コード ISBN 4-89036-980-5
ISBN 4-16-765637-X文庫版
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満州鉄道まぼろし旅行』(まんしゅうてつどうまぼろしりょこう)は、川村湊による日本小説

かつて日本が介入していた旧満洲国関東州を運行した鉄道(現在は中国交通運輸部が運営)などの資料に基づいた架空の旅行記。

文藝春秋より1998年に単行本化、2002年に文庫本化している。

概要[編集]

1945年まで、日本が主導して運航していた南満洲鉄道(旧・満州国及び関東州)を旅する物語。旧満州と主人公(作者)、満州国関係者などは実在の人物。

あらすじ[編集]

川村が第二次世界大戦前の日本にわたり、「サツキ」「ヤヨイ」と出会い、当時の満州(北京政府・東北地方)を旅する。二人の子供の引率者として旅をするが、大人な川村ならではの「ナイトライフ」コーナーもある。

登場人物[編集]

主要人物[編集]

主に作者かつ主人公である川村が、「サツキ」「ヤヨイ」と旅をする形をとっている。

川村 湊(かわむら みなと)
作者。主人公である彼が1937年(昭和12年)にタイムトリップして出会った、2人の子供と満州の鉄道旅行をすることになった。
本編では案内人の役割もしている。2人の子供は彼のことを「おじさん」と呼び、「このおじさんと満州旅行したい」と親を説得して、その年の夏、彼が2人の保護者として引率。
サツキ
作者の同伴者で、1925年(大正14年)5月5日生まれの小学6年男子。鉄道マニアで「満州」と聞いて、「ぜひ一緒に旅行したい」と志願して行くことになった。ちなみに(ヤヨイ曰く)算数は苦手らしい。ヤヨイのことは「ヤヨイちゃん」と呼ぶ。とりわけ満鉄の名機「パシナ」を運行する特急列車「あじあ」に乗るのを楽しみにしていた。
ヤヨイ
作者の同伴者で、1927年(昭和2年)3月3日生まれの小学4年女子。ちょっとませている。サツキの実妹。サツキのことを「サツキ兄ちゃん」と呼んでいる。サツキが作者と一緒に行くことになり、「私も行く」と言い、同伴。

その他[編集]

作者、サツキ、ヤヨイが道中で知り合うか、話に出てくる人物。なお、基本的に主要3人が旅した当時の役職。

松岡 洋右(まつおか ようすけ)
南満洲鉄道総裁。(主要3人が投宿した)大連ヤマトホテルで、夕食に招待。満州要人との宴なので、3人とも正装(作者、サツキはネクタイスーツ、ヤヨイはドレス)で参加した。
乃木 希典(のぎ まれすけ)
旅順で作者が2人に話した、日露戦争の人物。2人いる息子は戦死している。
秀夫(ひでお)
サツキの友人で、同じく鉄道マニア。彼は以前、満州を旅したことがあり、同乗客の駅スタンプに魅せられてサツキに話した。そのため、サツキが満州の駅スタンプを集めるきっかけとなった。
リン
熊岳城温泉で出会った、ヤヨイと同い年位の少女で中国人と思われる。人見知りで、ヤヨイとは片言で挨拶しただけで去った。
モンゴルの狩り好きハーン
作者が話した「ハロン・アルシャン温泉伝説」に登場した、君主。鹿が治療した温泉を家来経由で知る。
崔 承喜(さい しょうき)
奉天(現・瀋陽)のヤマトホテルで出会った高麗人のダンサーで「半島の舞姫」。主要3人が話したところ、「ダンサーは体力が資本なので、休養を十分にしたい。満鉄でコンパートメントはありますか。」と相談した。
愛新覚羅 溥儀(あいしんかくら ふぎ)
旧・満州国元首(1932年 - 1934年、執政・大同元号、1934年 - 1945年、皇帝・康徳元号)で、主要3人の旅行時はすでに帝位についていた。当時、世界中で「皇帝」だったのはほかに昭和天皇(日本)、レザー・パーレビ1世(イラン)、ハイレ・セラシエ1世(エチオピア)、阮福=保大帝(ベトナム)のみであった(ヨーロッパで一応、「皇帝」を名乗っていたイタリア・ヴィクトーリオ・エマヌエーレ3世、英国・ジョージ6世がいたが、終戦後は「皇帝」の称号を廃止し、西半球諸国では皇帝制度は廃止されて共和制となっている)。
李 香蘭(り こうらん)
満州首都・新京(現・長春)にあった満州映画の専属女優。主要3人は新京でタイムトリップして2年後に完成したスタジオを見学したときに見かけた。本当は日本人「山口淑子」だが、李家の義子にもなっていたことから、「李香蘭」を名乗っていた。