正吉河童

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竜斎閑人正澄画『狂歌百物語』より「河童

正吉河童(しょうきちかっぱ)とは、豊後国(現在の大分県)に伝わる河童伝承寛永時代の古書『川太郎伝』や、大分県日田郡(現・大分県日田市)の地誌『日田郡誌』に記述がある[1]。「正吉河童」の名称は妖怪漫画家・水木しげるの著書によるもの[2]

概要[編集]

その昔、日田郡竹田村に正吉という12歳の少年がいた。父親は相撲の力士で、正吉も子どもながらに力持ちであった。

ある夏の日。正吉が川で水浴びをしていると、何者かにいたずらをされた。正吉は川にもぐり、正体のわからない相手を懲らしめて帰った。

その夜のこと。正吉は家で寝ていたが、なぜか水浴びがしたくなり、川までやって来た。すると川の中から数人の子供が現れ、相撲をとろうと言い出した。正吉はこれを河童と気付き、すぐに相撲を取り、2人の子供を倒した。すると今度は十数匹もの河童が現れ、正吉は無数の河童を相手に、夢中で相撲を続けた。

一方で自宅では、正吉の父が息子の姿が無いのに気付き、川へやって来た。すると正吉が、何やら1人で暴れ回っているので、父は無理やり連れ帰った。

その後も正吉は正気を失った様子で、目に見えない何者かと相撲をとっているかのようなので、父は河童に憑かれたと考えた。ある者が河童の祟りに効くものとして、郷義弘の銘入りの脇差しを正吉のそばに置いたところ、正吉は布団をかぶって震え始めた。だが脇差しをどけると、正吉はまた暴れ出す始末だった。その後、修験者祈祷により、ようやく河童の祟りは去ったという[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b 石川純一郎『河童の世界』(新版)時事通信社、1985年、166-167頁。ISBN 978-4-7887-8515-1 
  2. ^ 水木しげる『図説 日本妖怪大全』講談社〈講談社+α文庫〉、1994年、2344頁。ISBN 978-4-06-256049-8