板宮清治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

板宮清治(いたみや せいじ、1935年(昭和10年)2月22日[1] - )は、岩手県金ケ崎町生まれの歌人

昭和30年代農村生活と自然を主な内容とする第一歌集『麥の花』は、青春期のみづみづしい作品を特色とする[2]。現在までに六冊の歌集を発行しており、何れも東北風土に根差した鋭敏な感性と清新な詠風によって貫かれている。病を克服して後の作品を収めた『杖』[3]により、平成18年度の日本歌人クラブ賞を受賞。

地元の金ケ崎町立図書館には特設文庫として「板宮文庫」があり、板宮寄贈による現代歌人の歌集を中心とした書籍が収められている[4]

経歴[編集]

  • 1935年(昭和10年) 岩手県に生まれる。
  • 岩手県立水沢農業高等学校卒業[1]
  • 1953年(昭和28年) 歩道短歌会入会、佐藤佐太郎に師事。
  • 1954年(昭和29年) 「短歌研究」第二回五十首詠(現・短歌研究新人賞)に入選。同年の受賞者は寺山修司
  • 1957年(昭和32年) 森山耕平を中心とする歌誌「岩手短歌」に参加。
  • 1959年(昭和34年) 佐藤佐太郎夫妻の八幡平行に同行。「榛の木について」で第5回角川短歌賞最終候補。
  • 1964年(昭和39年) 第一歌集『麥の花』を短歌研究社より発行。
  • 1966年(昭和41年) 「冬森」三十首により「歩道賞」を受賞。
  • 1973年(昭和48年) 第二歌集『風塵』を短歌新聞社より発行。
  • 1978年(昭和53年) 現代歌人協会会員。
  • 1982年(昭和57年) 第三歌集『待春』を短歌新聞社より発行。
  • 1983年(昭和58年) 『待春』により、岩手県芸術選奨を受ける。
  • 1984年(昭和59年10月)に雑誌「短歌」に発表した「桃の実」21首により第二十一回短歌研究賞を受ける。
  • 1985年(昭和60年) 昭和歌人集成第20巻として第四歌集『春暁』を短歌新聞社より発行。
  • 1988年(昭和63年) 『自解百歌選 板宮清治集』を牧羊社より発行。
  • 1989年(平成元年) 第五歌集『木枯らしののち』を短歌新聞社より発行。
  • 2005年(平成17年) 第六歌集『杖』を短歌新聞社より発行。
  • 2006年(平成18年) 歌集『杖』により「第三十三回日本歌人クラブ賞」を受賞。

代表作品[編集]

  • 野菜市場に冬日さしつつ乾きたる人参或ひは吾のてのひら 歌集『麥の花』
  • 今日ひと日はげしき風に森ありき森をいたはる言葉はなきか
  • 空高くなりししづけさ昼過ぎて芝生のうへの晩夏のひかり 歌集『風塵』
  • 貯水池の水のむかうにくれなゐの桃の花照りわが心照る
  • かへりゆく今年の雁のつひの声病みおとろふる母も聞くべし 歌集『待春』
  • ことごとく水田となりて水さわぐひと日めまひに似たる寂しさ
  • 雉鳴きて時間のゆらぐ春山は木々の梢の空にかがやく 歌集『春暁』
  • 薪割りてわが働けばよみがへる戦後はるけき冬日の匂ひ
  • 息づまるまで寒ければ雪明りのなか目前の冬木々ひびく 『木枯らしののち』
  • 月光に路上の雪の凍る夜帰り来て刺立つごときわが髪
  • ただ歩くことのみにたる一時間田の水にほふ日にかがやきて 『杖』
  • ひと冬を越えて黄に枯るる畔のはて雲遊び裸木の梢がけむる

参考文献[編集]

  • 第一歌集『麥の花』 短歌研究社 1964年(昭和39年)
  • 第二歌集『風塵』 短歌新聞社 1973年(昭和48年)
  • 第三歌集『待春』 短歌新聞社 1982年(昭和57年)
  • 第四歌集『春暁』 短歌新聞社 1985年(昭和60年)
  • 『自解百歌選 板宮清治集』 牧羊社 1988年(昭和63年)
  • 第五歌集『木枯らしののち』 短歌新聞社 1989年(平成元年)
  • 第六歌集『杖』 短歌新聞社 2005年(平成17年)

脚注[編集]

  1. ^ a b 『読売年鑑 2016年版』(読売新聞東京本社、2016年)p.442
  2. ^ 歌集『麥の花』は、短歌研究社より1964年(昭和39年)12月15日に発行された歌集で、1955年(昭和30年)から1964年(昭和39年)6月までの479首を収める。本文194頁。
  3. ^ 歌集『杖』は、短歌新聞社より2005年(平成17年)10月1日に発行された歌集で、1998年(平成10年)から2004年(平成16年)までの作品を収める。本文203頁。
  4. ^ コレクション”. 金ケ崎町立図書館. 2018年2月9日閲覧。