杏仁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
杏仁として使用されるのは仁(画像下)の部分である。

杏仁(きょうにん、あんにん[注釈 1])は、アンズの種子の中にある仁(さね)を取り出したもの。長さは11 - 15ミリメートルで、形状は扁平の先の尖った卵円形である[1]。基部は左右対称ではない[1]

漢方[編集]

古くからバラ科植物の仁は生薬や食用に利用され、杏仁(アンズ)のほか、桃仁(モモ)、梅仁(ウメ)、アーモンドなどがある[2]

杏仁には苦みの強い苦杏仁(くきょうにん、Prunus maximowiczii)と、甘みのある甜杏仁(てんきょうにん)があり、前者は薬用に、後者は杏仁豆腐(あんにんどうふ)やアマレットなどの材料として用いられている。ここでは生薬としての杏仁について説明する。

杏仁は、三国時代3世紀)頃に編纂されたもっとも古い漢方薬書である『傷寒論』にあり、麻黄湯、大青竜湯などの重要な処方に配剤されている大切な薬味である。

古くから「毒のある薬味」とされており、処方する際には分量を慎重に決めるものとされていた。現代においては、分解されると青酸を発生するアミグダリンが含まれていることが判っている。

漢方では鎮咳剤として多く用いられている[1]

なおバラ科植物の仁の区別は、アーモンドなどを除ききわめて難解である[2]。『本草辨疑』には桃仁は見分けやすいが、杏仁と梅仁はよく似ているため、杏仁と梅仁が混じって売られていることがあると記されている[3]。現実の生薬市場では、『本草辨疑』で見分けやすいとされている桃仁にも杏仁が混入している場合がある[1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 漢方薬の薬味として使うときには「きょうにん」、菓子などに使うときには「あんにん」と発音。なお「あんにん」という読み方は、もとは南京上海周辺の方言であり、日本で明治時代以後中国料理がさかんになったことにより広まった。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 村上光太郎『よく効くウメ・ウメ干し療法』1994年、154頁
  2. ^ a b 村上光太郎『よく効くウメ・ウメ干し療法』1994年、153頁
  3. ^ 村上光太郎『よく効くウメ・ウメ干し療法』1994年、153-154頁