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最後の晩餐 (ギルランダイオ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

最後の晩餐』(さいごのばんさん、イタリア語: Ultima Cena)は、ルネサンス期のイタリアの画家ドメニコ・ギルランダイオが制作したフレスコによる壁画で、同主題の作品3件がフィレンツェ周辺の3カ所に現存している。いずれの作品も、最後の晩餐におけるイエス十二使徒たちを描いたものであり、イスカリオテのユダは、長いテーブルの手前側にひとりだけ配されるという、キリスト教芸術における最後の晩餐英語版において一般的な描き方が用いられている。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、最後の晩餐を主題としたギルランダイオの作品や、カスターニョの諸作品の描き方に通じていた可能性が高く、自身が描いた最後の晩餐において、これら先行した作品の静的な描写とは対称的な、より劇的な形態を描いて、より多くの感情を表現しようとした[1]ケネス・クラークは、ギルランダイオとペルジーノを引き合いに出して、当時の一般的な最後の晩餐の描き方の画一的な構図を指摘し、レオナルドの創意を賞賛している[2]。これに対して宮城徳也は「レオナルドの卓越性に関しては何の異論もない」とした上で、ほぼ同構図のオンニッサンティ教会とサン・マルコ教会の『最後の晩餐』において、「背景に鳥と植物によって楽園のイメージが描かれている」ことについて、一定の留保を付けながらも、ギルランダイオの独創性を見るべきだと論じている[3]

『最後の晩餐』
作者ドメニコ・ギルランダイオ
製作年1476年
種類フレスコ
所蔵バディア・パッシニャーノ教会イタリア語版フィレンツェ

バディア・パッシニャーノ教会の「最後の晩餐」

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ギルランダイオが最初に取り組んだ『最後の晩餐』とされ、使徒たちは伝統的な表現に従って一直線の長いテーブルの向こう側に描かれ、イスカリオテのユダだけが、手前側に描かれている[4]。構図については、アンドレア・デル・カスターニョの『最後の晩餐』との共通性が指摘されている[5]

『最後の晩餐』
作者ドメニコ・ギルランダイオ
製作年1480年
種類フレスコ
寸法400 cm × 810 cm (160 in × 320 in)
所蔵オンニッサンティ教会イタリア語版フィレンツェ

オンニッサンティ教会の「最後の晩餐」

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部分

本作の制作を依頼された当時、ギルランダイオは既に有名であり、他のフィレンツェの画家たちとともにシスティーナ礼拝堂の壁画を制作すべくローマへ向かう手筈になっていた[4]。後年、フレスコの修復作業中に、オンニッサンティ教会の食堂の左側の壁に、最初の下書きの素描が発見された[4]

『最後の晩餐』
作者ドメニコ・ギルランダイオ
製作年1482年/1486年
種類フレスコ
所蔵サン・マルコ教会イタリア語版フィレンツェ

サン・マルコ教会の「最後の晩餐」

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部分

この作品については、ギルランダイオはオンニッサンティ教会の作品よりひと回り小さい[4]、ほぼ同一の構図の下絵を制作しただけで、フレスコ制作は兄弟や工房に任せたとも考えられている[5]。オンニッサンティ教会の作品と異なるおもな点は、テーブルの両端の曲げられた部分に、横向きに着席する姿で描かれる使徒がいるところである[5]。また、ユダの手にパンが描かれていることから、裏切りの予言がなされた直後の場面を描いたものとされる[5]

日本イタリアンファミリーレストランチェーンであるサイゼリヤの店舗の内装にしばしば用いられている「ギルランダイオの最後の晩餐」は、サン・マルコ教会(修道院が美術館に転用されているため、サン・マルコ修道院、サン・マルコ美術館として言及されることもある)のフレスコである。

脚注

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  1. ^ Leonardo da Vinci, the Last Supper: a cosmic drama and an act of redemption by Michael Ladwein 2006 page 27
  2. ^ ケネス・クラーク丸山修吉/大河内賢治訳『レオナルド・ダ・ヴィンチ』法政大学出版局,1974,p.136.「彼らの構図は一〇〇〇年も前から信心深い人々を満足させてきた構図と根本的には同じで,およそ次の通りだ.使徒一一人はテーブルの向こう側にきちんと一人一人静かに座っている.ときには互いに話をしている場合もあるし,ぼどう酒を飲んでいる場合もある.キリストは中央に座っていて,聖ヨハネは窮屈そうにキリストの膝に顔を伏せている.ユダはただ一人テーブルのこちら側にいる」
  3. ^ 宮城徳也. “フィレンツェだより番外篇 2012年4月1日 フィレンツェ再訪 - その7”. 宮城徳也. 2015年7月2日閲覧。
  4. ^ a b c d 伊藤裕紀子 (2010年11月8日). “ギルランダイオの「最後の晩餐」オニッサンティヴァージョン”. 伊藤裕紀子. 2015年7月2日閲覧。
  5. ^ a b c d 伊藤裕紀子 (2010年11月8日). “ギルランダイオの「最後の晩餐」サンマルコヴァージョン”. 伊藤裕紀子. 2015年7月2日閲覧。