放熱グリス

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シリンジに封入された放熱グリス

放熱グリス(ほうねつグリス、: Thermal grease)とは、CPUパワートランジスタなど発熱の激しい電子部品の冷却のためにヒートシンクやウォーターブロックなどの放熱器を取り付ける際、両者の接合部の微細な隙間を埋めて発熱素子から放熱器に至る熱抵抗を下げるための物質である。

良好な断熱材である空気を接合面から追い出すことが第一義的な使用目的である。接合する両者の材質はほとんどの場合金属であり、それらの熱伝導率は放熱グリスのそれよりもはるかに高いため、空気を排除して密着接合できるならば熱伝導率が劣る放熱グリスを介在させる必要は無い。しかしその場合、部品表面の平滑度を上げる加工や組み付け精度を要するなど製造コストが上がってしまう。放熱グリスを介在させることで、熱膨張率が異なる材質間の熱伝導も低コストに高めることができる。

製品形態は、チューブやシリンジに封入されたペースト状のものが多い。ほとんどの製品では主成分はシリコーンで、性能を高めるためになどの金属粒子を混入したものもある。また主成分に液体金属やセラミックなどを用いた特殊な製品もある。

塗布直後は軟らかいままだが、使用後時間が経過すると劣化し硬化することがある。そのため固形化したグリスに、接合する材質の熱膨張率差によって亀裂(すなわち空気)が入る場合があり、発熱素子から放熱器に至る熱抵抗の経年増加が起きることがある。

使用方法[編集]

使用効果を上げるには塗布方法が重要である。成分などからグリス自体の熱伝導率を吟味選定した場合でも、塗布方法が不適切であれば吟味した効果は得られない。

一般的な放熱グリスの使用方法は次のとおり。

  1. 部品の表面と放熱器の表面をきれいに保つ。
    激しく擦って磨き上げると静電気で電子部品が故障したりコア欠けを起こす場合がある。ただし油分やごみが付着していると性能低下を招くため、柔らかい布などで丁寧に拭き取っておく。
  2. 部品あるいは放熱器の接合部に、少量の放熱グリスを置く。
    付けすぎると接合部からはみ出して思わぬトラブルの原因となったり、かえって熱伝導率が悪くなる場合もあるので注意が必要である。
  3. 放熱グリスを接合部の形に合わせて薄く伸ばす。
    伸ばす面積は接合部の大きさより小さめにしておく。プラスチックや木などの非導電性でかつあまり硬くない材質のへらで伸ばすと良い。
  4. 部品と放熱器をしっかり押さえて接合する。
    放熱グリスはよく伸びるので、少量置いたつもりでもはみ出すことがある。その場合は放熱グリスを拭き取った後、最初からやり直す。

主要製造メーカー[編集]