戸籍の附票

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戸籍の附票(こせきのふひょう)とは、日本において、本籍地の市町村特別区(以下「市区町村」という。)が戸籍の編製と同時に作成し、その戸籍の在籍者の在籍している間の住所等の履歴を記録する公簿である。「戸籍の附票」という名称ではあるが、戸籍法ではなく、住民基本台帳住民票)と同じ住民基本台帳法を根拠法としており、その第3章に規定されている。住民票は主に住所の異動や世帯の構成等の住民の居住関係を、戸籍は出生・婚姻・死亡などの親族的な身分事項等を記録する公簿だが、戸籍の附票は通知事務による住民票のある住所地と戸籍のある本籍地との情報連携によって住民票の記録の正確性を担保することを主な目的としている[1]

制度の変遷[編集]

戸籍の附票は1952年昭和27年)7月1日施行された住民登録法に基づく公簿として運用を開始しているが、寄留簿をその前身と見做した場合、明治初期まで遡ることになる。その変遷を示した場合、概ね次の表のとおりとなる。

身分登録と住民登録の連携制度の根拠法令名等 施行年 身分登録制度 住民登録制度 身分登録と住民登録の連携制度 備考
戸籍法(明治4年4月4日太政官布告第170号) 1873年(明治5年) 戸籍簿(壬申戸籍 戸籍簿(壬申戸籍)(本籍地に居住している場合)

寄留簿(本籍地以外に居住している場合)

寄留簿(本籍地以外に居住している場合のみ)
戸籍法取扱手続(明治19年10月16日内務省令第22号)

戸籍登記書式等(明治19年10月16日内務省訓令第20号)

1886年(明治19年) 戸籍簿 戸籍簿(本籍地に居住している場合)

入寄留簿(本籍地以外に居住している場合)

出寄留簿(本籍地以外に居住している場合のみ)
寄留法(大正3年3月30日法律第27号)

寄留手続令(大正3年10月27日勅令第226号)

1915年(大正4年) 戸籍簿 戸籍簿(本籍地に居住している場合)

入寄留簿(本籍地以外に居住している場合)

出寄留簿(本籍地以外に居住している場合のみ) 居所寄留簿と住所寄留簿の2つに別けられることになる。
住民登録法(昭和26年6月8日法律第218号)

住民登録法施行法(昭和27年4月28日法律第106号)

1952年(昭和27年) 戸籍簿 住民票 戸籍の附票 この時点で3つの公簿の役割が完全に分化され、現行制度とほぼ同じ役割を担うことになる。
住民基本台帳法(昭和42年7月25日法律第81号) 1967年(昭和42年) 戸籍簿 住民基本台帳(住民票) 戸籍の附票 戸籍の附票の根拠法は変わるが、住民登録法からの戸籍の附票が継続して使用される。
戸籍法及び住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成6年6月29日法律第67号) 1994年(平成6年) 戸籍簿 住民基本台帳(住民票) 戸籍の附票 この法改正により戸籍簿とともに戸籍の附票も電算化(コンピュータ化)が可能となった。
公職選挙法の一部を改正する法律(平成10年5月6日法律第47号) 1998年(平成11年) 戸籍簿 住民基本台帳(住民票) 戸籍の附票 戸籍の附票の記載事項に在外選挙人名簿に登録された旨と当該登録を行った選挙管理委員会の市区町村名が追加されることになる等の改正
住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成21年7月15日法律第77号) 2012年(平成24年) 戸籍簿 住民基本台帳(住民票) 戸籍の附票 住民票のある市区町村から本籍地の市区町村への法第19条第1項に規定される通知が住基ネットを介して行われることになる改正[2]

明治初期まで本籍は居住地そのものを示していたが、明治中期以降には本籍地以外で生活・就職する者が増えたため、本籍地=居住地(住所)という形態が崩れつつあった。そこで1914年(大正3年)に寄留法が制定され、寄留簿によって本籍地以外で生活する者の把握が行われた。その後1951年(昭和26年)に施行された住民登録法により、住所の把握は完全に住民票に任されることとなった。住民登録法の中で寄留簿の後を継ぐものとして戸籍の附票が制定され、これと共に寄留法は廃止された。

寄留簿が本籍地を離れて生活する者のみを記録したのに対し、戸籍の附票は戸籍に入っている者全てが記録されており、住民票の記録の正確性を維持するためのものとして位置づけられている。

1967年(昭和42年)には住民登録法が廃止され、住所に関する記録は現在の法律である住民基本台帳法に引き継がれたが、その中でも戸籍の附票の位置づけは変わっていない。

住民票が個人または世帯の住所を基準に編成されるのに対し、戸籍の附票は「ある戸籍に入っている者の」住所履歴を表す書類のため、戸籍を基準に編成される。このため、住民票は住所を置く市区町村が管理を行うのに対し、戸籍の附票は本籍地の市区町村が管理を行う。

なお戸籍に登録されない外国人については、戸籍の附票は作成されない。

戸籍の附票は住民基本台帳法に基づく記録だが戸籍とも密接な関係にあるため、同法の中で戸籍の附票に関する部分のみ、主務大臣が総務大臣および法務大臣とされている。(第40条)

戸籍の附票の記載内容について[編集]

戸籍の附票の記載事項(第17条)

  1. 戸籍の表示(=本籍および筆頭者)
  2. 氏名
  3. 住所
  4. 住所を定めた年月日

特徴[編集]

戸籍の附票は住民票と同様に住所履歴を表すが、前述したように本籍地が管理する記録である。このため、市区町村をまたぐ住所移動を繰り返した場合でも、戸籍の移動が行われていない場合、ひとつの戸籍の附票の中に全ての住所履歴が記録されることになる。逆に住所を移動していない場合でも、結婚・離婚・養子縁組・養子離縁・他市区町村への転籍などにより戸籍の移動が行われた場合、ひとつの戸籍の附票では住所履歴の確認ができなくなる。

これは戸籍の附票が「該当戸籍に入っていた当時の」住所履歴を記録したものだからである。

また、請求の際に特定する事項は本籍および筆頭者のため、この2つが分かれば現住所を調べることができる。 これらの特徴は、後述する戸籍の附票の写しを使用する際に活用される。

戸籍の附票の写し[編集]

戸籍や住民票同様、戸籍の附票も写しという形の証明書として発行されて初めて、対外的に住所の連続性を証明するものとなる。

戸籍の附票の写しの請求[編集]

戸籍の附票の写しは、次の場合に請求できる。基本的な条件は戸籍謄本等の請求時とほぼ同等である。

  • 戸籍の附票に記録されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属が請求する場合
  • 又は地方公共団体が、法令で定める事務の遂行に必要な場合
  • 特定事務受任者(弁護士司法書士など)が、職務上必要な場合
  • 次の1〜3に該当する者が請求する場合
    1. 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者
    2. 又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
    3. 1・2のほか、戸籍の附票の記載事項を利用する正当な理由がある者

実際の使われ方[編集]

住所移転の証明[編集]

不動産の登記や自動車の車検証など、登録者の住所を基準に作成される物は多い。これらの名義変更などの際に登録時とは住所が異なっていると、登録されている住所と現在の住所の連続性を証明し、手続きしようとする者が同一人物であることの証明を求められる場合がある。 住所の連続性の証明としては、住民票の写しと戸籍の附票の写しが代表的な証明書だが、それぞれを用いた場合の特徴を表す。

住民票を用いるメリット
  • 同一市区町村内での異動履歴、またはその市区町村に入る直前の住所からの異動履歴に関しては、現在居住している市区町村で発行する住民票の写しで証明できる
住民票を用いるデメリット
  • 市区町村をまたいだ住所異動を繰り返した場合、異動した全ての市区町村の住民票の写しが必要になる
  • 住民票の最低保存義務は住所の異動後5年間であり、異動から時間が経っている場合、記録そのものが残っていない場合がある
戸籍の附票を用いるメリット
  • 戸籍の異動を行っていない場合、何度住所の異動をしたとしても1箇所への請求で証明できる
  • 住民票同様最低保存義務は5年だが、本籍の異動を行っていない場合、履歴の廃棄が行われる可能性が少ない
戸籍の附票を用いるデメリット
  • 請求先は本籍地の市区町村のため、居住地とは違う市区町村に請求しなければならない場合がある
  • 戸籍の異動を行っていた場合、住民票の写しを用いるよりも証明が難しくなる場合がある
住民票の写し 戸籍の附票の写し
請求先 住所を置いていた市区町村 本籍を置いていた市区町村
証明可能な範囲 同一市区町村内での異動、および該当市区町村の直前の住所 該当戸籍に入った時点の住所から該当戸籍から除かれた時点の住所まで
最低保存期間
(確実に証明できる期間)
住所を異動してから5年(市区町村による) 戸籍を異動してから5年(市区町村による)

相続人の調査[編集]

連絡先の分からない相続人など、血縁関係者の住所を調べる際にも戸籍の附票の写しは使用される。

代表的な例として被相続人Aが死亡して相続が発生したが、Aの兄弟であるB以外はその事実を知らず、他に相続人がいるか分からない場合がある。この場合、Aの相続人が他にいるか調査し、いる場合は連絡を取る必要があるが、まず相続人になりうる者を戸籍謄本などで調査し、該当者がいた場合は戸籍の附票の写しを使って住所を調べることになる。

このように、血縁者の住所の調査をする必要がある場合には対象者を特定するために戸籍謄本などを請求し、その後戸籍の附票の写しを請求することになるが、実際に交付されるかどうかは、請求先の市区町村が目的の正当性を判断した上で決定される。

脚注[編集]

関連項目[編集]