巡回行列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

巡回行列(じゅんかいぎょうれつ)または循環行列(じゅんかんぎょうれつ、: Circulant matrix)は、テプリッツ行列の特殊なものであり、各行ベクトルが1つ前の行ベクトルの要素を1つずらして配置した形になっているものである。数値解析において、巡回行列は離散フーリエ変換によって対角化されるため、それを含む線型方程式系高速フーリエ変換で高速に解くことができる。

定義[編集]

の行列 が次のような形式であるとき、これを巡回行列と呼ぶ。

巡回行列は1つのベクトル で完全に表すことができる。そのベクトルは の最初の列で表されている。他の列はそれを回転させたものになっている。 の最後の行は を逆の順序にしたものであり、他の行はそれを回転させたものになっている。

性質[編集]

固有ベクトルと固有値[編集]

巡回行列の規格化された固有ベクトルは

で与えられる。ここで1のn 乗根で、虚数単位である。

対応する固有値は

で与えられる。

その他の性質[編集]

の巡回行列の集合は、n-次元ベクトル空間を形成する。

任意の2つの巡回行列 について、 も巡回行列となり、 が成り立つ。従って、巡回行列は可換代数を形成する。

与えられたサイズの巡回行列の固有ベクトルは、同じサイズの離散フーリエ変換行列の列である。その結果、巡回行列の固有値高速フーリエ変換 (FFT) で簡単に計算できる。

巡回行列の最初の行のFFTを行った場合、その巡回行列の行列式はスペクトル値の積となる。

(固有分解による)

ここで

  • の巡回行列である
  • は、ユニタリーな離散フーリエ変換行列である
  • は、固有値が 対角行列である

最後の項 は、スペクトル値の積と同じである。

巡回行列を使った線型方程式系の解法[編集]

線型方程式系を行列で次のように表す。

ここで、 が大きさ の巡回行列であれば、循環畳み込みとして次のように方程式を表せる。

ここで、 の最初の列であり、ベクトル は双方向に循環的に拡張される。畳み込み定理を使うと、離散フーリエ変換を使って循環畳み込みを次のような形式にできる。

従って、次のようになる。

このアルゴリズムは通常のガウスの消去法よりも高速であり、特に高速フーリエ変換を使えば高速になる。

グラフ理論における応用[編集]

グラフ理論において、隣接行列が巡回行列になっているグラフをcirculant graph(循環グラフ、巡回グラフ)と呼ぶ。グラフが circulant であるとは、その自己同型群(automorphism group)に全長サイクル(full-length cycle)が含まれる場合を指す。circulant graph の例としてメビウスの梯子がある。

外部リンク[編集]