出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
| この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。出典を追加して記事の信頼性向上にご協力ください。(このテンプレートの使い方) 出典検索?: "巡回行列" – ニュース · 書籍 · スカラー · CiNii · J-STAGE · NDL · dlib.jp · ジャパンサーチ · TWL(2017年5月) |
巡回行列(じゅんかいぎょうれつ)または循環行列(じゅんかんぎょうれつ、英: Circulant matrix)は、テプリッツ行列の特殊なものであり、各行ベクトルが1つ前の行ベクトルの要素を1つずらして配置した形になっているものである。数値解析において、巡回行列は離散フーリエ変換によって対角化されるため、それを含む線型方程式系は高速フーリエ変換で高速に解くことができる。
の行列
が次のような形式であるとき、これを巡回行列と呼ぶ。

巡回行列は1つのベクトル
で完全に表すことができる。そのベクトルは
の最初の列で表されている。他の列はそれを回転させたものになっている。
の最後の行は
を逆の順序にしたものであり、他の行はそれを回転させたものになっている。
固有ベクトルと固有値[編集]
巡回行列の規格化された固有ベクトルは

で与えられ、これらは正規直交系を成す。ここで
は1のn 乗根で、
は虚数単位である。
対応する固有値は

で与えられる(以上の事実は実際に Cvj を計算してみればわかる)。
その他の性質[編集]
の巡回行列の集合は、n-次元ベクトル空間を形成する。
任意の2つの巡回行列
と
について、
も
も巡回行列となり、
が成り立つ。従って、巡回行列は可換代数を形成する。
与えられたサイズの巡回行列の固有ベクトルは、同じサイズの離散フーリエ変換行列の列である。その結果、巡回行列の固有値は高速フーリエ変換 (FFT) で簡単に計算できる。
巡回行列の最初の行のFFTを行った場合、その巡回行列の行列式はスペクトル値の積となる。
(固有分解による)



ここで
は
の巡回行列である
は、ユニタリーな離散フーリエ変換行列である
は、固有値が
の対角行列である
最後の項
は、スペクトル値の積と同じである。
巡回行列を使った線型方程式系の解法[編集]
線型方程式系を行列で次のように表す。

ここで、
が大きさ
の巡回行列であれば、循環畳み込みとして次のように方程式を表せる。

ここで、
は
の最初の列であり、ベクトル
、
、
は双方向に循環的に拡張される。畳み込み定理を使うと、離散フーリエ変換を使って循環畳み込みを次のような形式にできる。

従って、次のようになる。
![{\displaystyle \ \mathbf {x} ={\mathcal {F}}_{n}^{-1}\left[\left({\frac {({\mathcal {F}}_{n}(\mathbf {b} ))_{\nu }}{({\mathcal {F}}_{n}(\mathbf {c} ))_{\nu }}}\right)_{\nu \in \mathbf {Z} }\right]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b682183caadd5e5974485e99ea87d1b8bbd53ba0)
このアルゴリズムは通常のガウスの消去法よりも高速であり、特に高速フーリエ変換を使えば高速になる。
グラフ理論における応用[編集]
グラフ理論において、隣接行列が巡回行列になっているグラフをcirculant graph(循環グラフ、巡回グラフ)と呼ぶ。グラフが circulant であるとは、その自己同型群(automorphism group)に全長サイクル(full-length cycle)が含まれる場合を指す。circulant graph の例としてメビウスの梯子がある。
外部リンク[編集]