定常集合

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数学、特に集合論モデル理論において定常集合(ていじょうしゅうごう、: stationary set)という言葉には少なくとも三つの異なる意味がある。:

古典的な意味付け[編集]

を非可算な共終数を持つ基数とするとき、部分集合の いかなるclub集合とも交わるならば、内の定常集合という。 定常でない集合は非定常集合という。

が定常でがclubなら、その共通部分はまた定常である。 それは、をclub集合とするとはclub(二つのclub集合の共通部分はclub)であり、 は空でない集合となる。 ゆえに、は定常である。

非可算な共終数に制限したのは無意味なものを避けるためである。の共終数が可算であったとして、 内で定常であるのは内で有界であることと同値である。 特に、の共終数が であるなら任意の二つのの定常集合の共通部分は定常である。

これはの共終数が非可算なときは起こらない。 実際、正則基数をその中の定常集合とすると、個の互いに交わりのない定常集合に分割できる。この結果はロバート・ソロヴェイ英語版によるもので、後続型基数のとき、 このことはスタニスワフ・ウラムによって、 いわゆるウラム行列(Ulam matrix)と呼ばれるものを使って容易に示された。

イェフによる意味付け[編集]

の部分集合にも定常集合の概念は定義される。 ここで、のことである。 が定常であるとは、前者と同様にSが全てのclub集合と交わることをいう。 の部分集合がclubであるとは、の下で非有界かつ、 以下の長さの鎖の合併の下で閉じていることをいう。 この二つの定常集合の概念は一般には異なるが、とすると が定常であることと、 の中で定常であることは一致する。

フォドアの補題はこの文脈でも同様に流用できる。

一般化された意味付け[編集]

三つめの意味は、モデル理論的な概念で、一般化された定常性として参照される。 この概念はM. Magidor英語版, M. Foreman英語版, サハロン・シェラハらによるものとされ、ヒュー・ウッディンによって顕著に使用された。

Xを空でない集合とする。がclubであるとは、 関数を満たすものが存在することを言う。 ここでの有限部分集合全体による集合のことである。

で定常であるとは、Sがの全てのclub集合と交わることを言う。

モデル理論との関連を見る。を対象領域をとする可算な言語上のストラクチャー、 へのスコーレム関数であるとすると、定常集合の初等部分構造をもつ。 実際、が定常であることは、任意のこのようなストラクチャーに対して、の初等部分構造がに属することと同値である。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

Matthew Foreman, Stationary sets, Chang's Conjecture and partition theory, in Set Theory (The Hajnal Conference) DIMACS

Ser. Discrete Math. Theoret. Comp. Sci., 58, Amer. Math. Soc. , Providence, RI. 2002 pp. 73–94 File at [1]

外部リンク[編集]