大桑層

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大桑層
犀川河床の大桑層露頭
読み方 おんまそう
英称 The Omma formation
地質時代 第四期中期更新世
絶対年代 1.7Ma-0.8Ma
分布 富山県小矢部市~石川県金沢市
岩相 中粒砂岩を主とし、数枚もの凝灰岩層や礫岩層を挟在し、一部石灰質岩相がある。
傾斜 緩く北に傾斜
産出化石 海生斧足類、腹足類、腕足類、ウニ類、フジツボ類、海生哺乳類、鳥類、硬骨魚類、軟骨魚類(サメ)
変成度 ほぼ皆無
命名者 望月勝海
提唱年 1930年
模式露頭 金沢市大桑町犀川河床
層群 北陸層群
同時異相 頭川層(富山県)、田川層(富山県)等
外部リンク 北村晃寿, 近藤康生「前期更新世の氷河性海水準変動による堆積サイクルと貝化石群集の周期的変化:模式地の大桑層中部の例」『地質学雑誌』第96巻第1号、日本地質学会、1990年1月、19-36_1、doi:10.5575/geosoc.96.19ISSN 00167630NAID 1100030241132020年6月26日閲覧 
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大桑層(おんまそう、Omma Formation)は石川県金沢市から富山県小矢部市にかけて分布する新生代第四紀前期(約1.7-0.8Ma)の地層であり、水酸化鉄(II)イオンを含む、細粒砂岩で構成されている[1]。模式露頭が石川県金沢市大桑町の大桑貝殻橋から大桑橋までの犀川河床まで広がる。

概要[編集]

模式露頭の大桑層は層厚約210mで、岩相・貝化石群集から下部・中部・上部に分けられる。各部はさらに4.1万年周期の地軸の傾きによる氷河性海水準変動に起因する堆積シーケンスの累重からなる。これらの堆積シーケンスは酸素同位体ステージ56から21.3に対比される。典型的な堆積シーケンスは層厚が約7mで、下位より貝化石密集層、淘汰の良い細粒砂岩、泥質細粒~極細粒砂岩、淘汰の良い細粒砂岩の順に重なる。密集層基底の侵食面はラビンメント面で、シーケンス境界、海進面でもある。1つの堆積シーケンスでは寒水系種を主体とする貝化石群集から、暖水系種を主体とする貝化石群集へと変遷し、再び寒水系種を主体とする貝化石群集が現れる。この貝化石群集の変遷は1つの堆積シーケンスの堆積深度は約20-30mから約100-120mまで変化したことを示唆する。

犀川大桑層で発掘された貝の化石。

大桑層の貝化石群集の変遷はまた、間氷期ごとに対馬海流日本海に流入するようになったのが酸素同位体ステージ59 (1.7Ma) からであることを示唆する。これは日本海南方海峡が1.7 Ma に出現したこと、つまり、この時から日本が現在のような島嶼になったことを意味する。現在の対馬海峡より西150kmに位置するチェジュ (済州) 島の化石記録から、南方海峡は、対馬海峡より南に位置し、その形成過程は2 Ma頃に始まったフィリピン海プレート沈み込み方向の変化に伴う沖縄トラフ北縁部のリフティングに関連すると解釈されている。

クジラの頭骨など発見[編集]

2014年5月10日クジラ頭骨の大部分が原形をとどめ発見された。過去にも断片的なクジラの骨は見つかっていたが、今回の発見ほどの大きなものはなかった。下顎を地表に向けた状態で体長は約1.9m、幅約1.3m。発見者は三重大学准教授栗原行人と楓達也(瑞浪市化石博物館(岐阜県)ボランティアスタッフ)で、2人が大桑層を調査中、楓が脊椎動物化石を発見、石川県立自然史資料館が連絡を受け調査、クジラの後頭部にある聴骨胞を確認しクジラ類と判断。7月14日には発掘現場で学芸員、専門家らによる、マスメディア向けの説明会が開催された[2]

脚注[編集]

  1. ^ 渡邊嵩大『岩石學序説』(月ヶ丘書房)
  2. ^ 日本セトロジー研究会北陸支部長 平口哲夫は、大きさやと形状からヒゲクジラ亜目に属する判断、と報道された(<お探しのページは存在しないか、削除されました。> 100万年前のクジラ頭骨発見 金沢市の地層で、原型とどめる 2014/07/14 【北國新聞】[リンク切れ]

参考サイト[編集]