大学基金
大学基金(だいがくききん、英: University endowment)とは、大学において資産運用の対象となる資金プールのことである[1]。ただし、明確な定義はない[1]。この資金は原則として、元本には手を付けず、運用収益の全部または一部が大学の一般会計の収入部門に繰り入れられる[1]。
概要
[編集]日本の私立大学においては、古くから学費・補助金・寄付金などに基づく学校運営が行われており、余剰資金を運用することで経費や研究資金などに充てる取り組みが存在した[2]。日本の私立大学の大学基金は、自己資金を積み立てる方法が一般的である[2]。私立大学に対して、かつての国立大学・公立大学では、資金運用を行う必要性がなく、資産運用も禁止されていた[2]。
日本の大学においても基金の設立・運用は進んでおり、東京大学は149億円、京都大学は197億円、慶應義塾大学は783億円、早稲田大学は294億円の大学基金を有する(2019年度時点)[3]。なお、個人や法人からの大学基金に対する寄附については、所得税法上の寄附金控除の対象となる特定寄附金(所得税法第78条第2項第2号)と、法人税法上の全額損金算入を認められる寄附金(法人税法37条第4項第2号)がある。
アメリカ合衆国での運用
[編集]アメリカの大学の多くは、寄付金収入を集めて大学基金(エンダウメント)を設立する方法が一般的である[2]。財団や基金を設立することで、大学の一般会計とは別建ての資金プールとして管理される[1]。2015年度のハーバード大学は、大学基金が約3兆8,800億円 [4]、年間の寄付金が約800億円、年間15%収益の3500億円があった。一方、大学内で、基金を運用する担当の責任者数人の年収が数十億円に達したといわれ、基金の拡大と運用に関する批判もある。
日本政府による10兆円規模の大学ファンド
[編集]日本の大学は海外の大学と比べて大学の資金力が乏しく、研究基盤がとても弱い。一方、海外の有力大学は各自の大学基金を用意し、それを積極的に資産運用してその運用益を研究資金に充当しているのが実情である。そこで、日本政府は、10兆円規模の大学ファンド(基金)を創設する計画を発表した。その大学ファンドの運用益を活用し、将来の研究インフラ、研究資金へ配分するのが狙いである。制度検討は文科省と連携し、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の下に専門調査会「世界と伍する研究大学専門調査会」を設置して行った。また、同専門調査会下に「大学ファンド資金運用ワーキンググループ」を設置し、資金運用に係る専門的な事項を検討した[5]。
大学ファンドは2022年12月に公募が始まり、2023年3月末に締め切られた[6]。ファンドの運用は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が行う。運用元本は、政府出資約1.1兆円と財政投融資からの借入金約8.9兆円で構成されている。財政融資資金は、2042年度以降、20年かけて順次償還される予定。運用目標は年4.49%[7]。運用益を活用して年間2800億円を上限に文部科学大臣の認定を受けた「国際卓越研究大学」に配分する。
国際卓越研究大学については、「国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力」「実効性高く、意欲的な事業・財務戦略」「自律と責任のあるガバナンス体制」 を選定要件に公募された[8]結果、東北大学が認定されることとなった[9]。国際卓越研究大認定のため設置が求められる「合議体」には学外委員を必要とし、その学外委員は文科省の承認が必要なため、外部の関与が強まり、自治が損なわれることが指摘されている[10]。
文部科学省は、2025年第2期公募で、東大・東京科学大学・早稲田大学・名古屋大学・京都大学・大阪大学の計6大学を現地視察すると決めた。視察は10月の予定で、研究現場の状況などを把握する[11]。
参考文献
[編集]- 資産運用における新たなリスク管理 米国大学基金の運用実態をふまえて - 日興コーディアル証券(2006年5月30日)
- 驚異の利回り!米国名門大学が実践する「エンダウメント投資」 - 幻冬舎 GOLD ONLINE (2021年4月2日)
- 魅力的な大学運営に向けた米国大学基金の資金運用モデルの活用 - みずほリサーチ&テクノロジーズ コンサルティングレポート(vol.2、2022)
出典
[編集]- ^ a b c d 寺山 恵. “大学の資産運用を考える(2)~大学基金の作り方~”. SMBC日興證券グループ. 2025年11月18日閲覧。
- ^ a b c d 徳島勝幸. “大学と大学ファンドの資産運用”. 不動産証券化協会. 2025年11月18日閲覧。
- ^ “研究大学の基金の状況”. 文部科学省. 2025年11月12日閲覧。
- ^ http://utf.u-tokyo.ac.jp/necessity/
- ^ “大学ファンドの資金運用の基本的な考え方(概要)(第7回世界と伍する研究大学専門調査会)”. 内閣府. 2021年6月16日閲覧。
- ^ “大学ファンドとは 最新ニュース・解説”. 日本経済新聞 (2024年6月14日). 2024年6月15日閲覧。
- ^ “10兆円の大学ファンドが直面する課題と展望”. 第一生命経済研究所. 2024年6月16日閲覧。
- ^ “国際卓越研究大学のニュース一覧 ニュースイッチ by 日刊工業新聞社”. ニュースイッチ by 日刊工業新聞社. 2024年6月15日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2024年6月14日). “東北大学を「国際卓越研究大学」に 初の認定へ 文科省 | NHK”. NHKニュース. 2024年6月15日閲覧。
- ^ “大学に「服従のワナ」が仕掛けられた…なぜか「学外委員」に強い権限を持たせる政府方針を危ぶむ:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年6月15日閲覧。
- ^ https://www.todaishimbun.org/kokusaitakuetsu_20251001/