ユニオシ

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ミッキー・ルーニー演じるグロテスクにカリカチュアされた日本人男性
醜さを強調するために口に出っ歯のマウスピースを嵌めている。

ユニオシ, I.Y. とはトルーマン・カポーティ原作の短編小説ティファニーで朝食を』(1958年)およびこの小説をもとに作られた映画版に登場する日系アメリカ人日本人の男性である。後述するように小説版と映画版ではその描写が大幅に異なり、映画版の方は典型的な人種差別描写として批判された。

原作小説のユニオシ[編集]

主人公ホリー・ゴライドリーと同じアパートに住む日系人2世の雑誌カメラマンという設定であり、彼がアフリカで撮った写真から、アフリカへ渡ったホリーの消息が語られるという筋立てとなっている[1]。ホリーに対しては好意的である[2]。登場人物のジョー・ベルはユニオシをJapと呼ぶ部分がある一方、語り手の「私」はユニオシのことを差別的に語っていない[3]

ユニオシの名前の由来は、20世紀前半のアメリカで活動した日本人画家・国吉康雄ではないかと言われている[4]

映画版のユニオシ[編集]

ミッキー・ルーニーが演じた。映画版のユニオシのキャラクターは、監督のブレーク・エドワーズの創作と言われる[5]。映画版ではホリーと同じアパートに住む日本人カメラマンという設定だけは原作と似ているが、以下の部分で描写が異なる。

  • 背が低く、メガネ出っ歯などといったステレオタイプ的な醜い容姿の日本人として描かれている(小説版では背が低いという点以外、ユニオシについての身体的特徴の描写はない)[6]
  • 「うるさいね」「痛い!」など、彼の日本語のせりふはかなり正確な発音である。いっぽう、英語のせりふでは、たとえばMiss. Golightlyを"Miss. Gorightry"のように発音するなど、[r]と[l]を混同する日本人的な英語の特徴が意図的に描写されている。
  • 映画ではホリーはニューヨークに留まるため、上述のアフリカの写真のエピソードは削除されている[7]
  • 部屋のカギをもち忘れたホリーがユニオシを訪ねるシーン(このシーン自体は小説版にもある)では、ユニオシの部屋が俗悪な日本趣味として描かれる上、起こされたユニオシは極めて狼狽する[8]
  • ホリーに起こされることが何度も続いたユニオシは、更に階下でうるさいパーティーをやられたことから彼女に反感を抱き、警察を呼んでホリーを逮捕させる(小説版ではマダム・スパネラがホリー追い出しを画策する)[9]

こうした映画版の描写について、村上由見子太平洋戦争前後のアメリカにあった、日本人を「先天的幼児」とみなす風潮と関連付けている[10]

批判[編集]

映画版が公開された当初は、ユニオシについては好意的な評価があったが[11]、1990年にはボストン・グローブが「攻撃的でゆがんだ民族描写」と批判した[12]。1993年にはロサンゼルス・デイリーニュースも「攻撃的なステレオタイプであり、侮辱と傷をもたらした」と批判するなど[13]、映画版ユニオシへの批判が相次ぐ。

ニューヨークのブルックリンブリッジパークBrooklyn Bridge Parkでの映画祭で、この映画の上映への反対運動が起きた際、ニューヨーク・デイリーニュースでは反対運動に同情しつつ、過去のアメリカが犯した人種差別の歴史を隠さずに直視しすべきだという意見が載った[14]

[編集]

  1. ^ 村上由見子『イエロー・フェイス ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』朝日新聞社、1993年、86頁、澤野雅樹「謎のユニオシを求めて」『ユリイカ』1995年4月増刊号、302-303頁
  2. ^ 村上86頁
  3. ^ 村山瑞穂「『ティファニーで朝食を』の映画化にみる冷戦期アメリカの文化イデオロギー」『愛知県立大学紀要言語文学編』39、2007年、106-107頁
  4. ^ 村山108-109頁、Gordon H. Chang“Emerging from the Shadows, The Visual Arts and Asian American History”, Journal of Transnational American Studies, 1(1), 2009, p10
  5. ^ 澤野303-304頁
  6. ^ 村上85-86頁
  7. ^ 村山105頁
  8. ^ 村山105頁
  9. ^ 村上85-86頁
  10. ^ 村上85-86頁
  11. ^ Weiler, A.H. (October 6, 1961). "The Screen: Breakfast at Tiffany's: Audrey Hepburn Stars in Music Hall Comedy". New York Times. Retrieved September 24, 2011.
  12. ^ Koch, John (April 1, 1990). "Quick Cuts and Stereotypes". The Boston Globe (Boston). Retrieved September 24, 2011.
  13. ^ "Breaking Barriers". Los Angeles Daily News. September 7, 1993.
  14. ^ Yang, Jeff (17 July 2011). "'Breakfast at Tiffany’s' protest is misguided: Let’s deal openly with the film's Asian stereotypes". NY Daily News. Retrieved 19 July 2011.