ペイト氷河

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氷河から融解した水が流れ込むペイト湖。

ペイト氷河(ペイトひょうが、Peyto Glacier)とは、北アメリカ大陸の北西部、カナディアンロッキーに存在する、氷河の1つである。また、ワプタ氷原から流れ出す氷河の1つとして知られる。

なお、この氷河はバンフ国立公園内の氷河の1つでもある。

概要[編集]

ペイト氷河は、カナダアルバータ州に存在する氷河の1つで、おおよそ、北緯51度40分41秒、西経116度32分50秒付近に位置する。ここは、バンフの町の北西約90kmにあたり、アイスフィールド高速道路英語版(Icefields Parkway)を使えば近くまで来ることができる。ちなみに、この氷河の末端部で融解した水は、付近にあるペイト湖(Peyto Lake)へと流れ込んでいるが、この水には氷河が削り出した微細な粒子が含まれているため、入射する太陽光が散乱され、この湖はターコイズブルー(トルコ石の青色)に見えるので、観光名所となっている。

縮小しつつあるペイト氷河[編集]

ペイト氷河は急速に後退(融解)している氷河として知られており、特に20世紀の後半に入ってからの後退は激しい。1896年から1996年の100年間で、この氷河の体積は1088.5×106 m3を失ったとされる [1] 。 また、初めて行われた学術調査の時と比べると、その質量の70%が失われたとの報告もある [2] 。 なお、この氷河の近くに自動気象観測装置が設置されたのは1987年のことで、それ以降については、日射量、気温変化、降水量のデータが存在する。

ちなみに、近年縮小傾向にあるのはこのペイト氷河だけではなく、ペイト氷河が流れ出しているワプタ氷原自体も縮小しており、さらに同氷原から流れ出している他の氷河(ボウ氷河など)も縮小傾向にある。

出典[編集]

  1. ^ Wallace, Alistair Lennox (1995).
  2. ^ Demuth, M.N. and R. Keller, 2006

参考文献[編集]

  • M.N. Demuth, D.S. Munro and G.J. Young Eds. "Peyto Glacier: One Century of Science."(ペイト氷河、この100年間について) National Hydrology Research Institute Science Report 8: 83-132
    • Demuth, M.N. and R. Keller, 2006. "An assessment of the mass balance of Peyto Glacier (1966-1995) and its relation to recent and past century climatic variability."(ペイト氷河の質量に関する調査、および、この100年間の気候変動との関係)
  • Wallace, Alistair Lennox (1995). "The volumetric change of the Peyto Glacier, Alberta, Canada, 1896-1996"(ペイト氷河の体積の変化) (M.A. thesis). Wilfrid Laurier University.
  • CBC News (2003年01月10日付け) "Prairies losing out on water from melting glacier."(北アメリカ大陸の平原地帯は、氷河から融解して流れてくる水を損ないつつある) 2006年07月02日閲覧。
  • Munro, D. Scott. "Temperature trends in the Peyto Glacier weather station record."(ペイト氷河付近に設置されている自動気象観測装置から得られた気温の傾向) 2006年07月02日閲覧。
  • Ommanney, C. Simon L. "Glaciers of the Canadian Rockies."(カナディアンロッキーの氷河) United States Geological Survey (USGS、アメリカ合衆国地質調査所)提供 Satellite Image Atlas of Glaciers of the World. 2006年07月04日閲覧。