トランキング

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電気通信におけるトランキング: trunking)とは、複数の回線や周波数チャネルを個別に割り当てるのではなく共有することで、多数の利用者へ同時にネットワーク・アクセスを提供する通信システムの概念を指す。例えば、電話のシステムや警察のVHF無線でよく使われている。最近ではコンピュータネットワークでもポートトランキングが使われている。

トランク (trunk) は2地点間を結ぶ伝送路であり、各地点は交換局やノードである。

語源[編集]

1つの説としては、1本の木の幹 (trunk) から多数の枝が伸びている様子から、これと似た構成を持つものの呼び名に用いられたと考えられている。この用語が電気通信で使われるようになった由来は定かではないが、インドの Grand Trunk Road、カナダの Grand Trunk Railway など、それ以前に鉄道の線路で使われていたことは確かで、木のと枝をモデルにした命名である。電気通信でも似たようなアナロジーから使われるようになったと思われる。

別の説もある。初期の電話では、多数の回線(線対)をまとめた(直径10cmほどの)太いケーブルが使われていた。これが鉛で覆われていたため色や形がゾウの鼻 (trunk) に似ていたという説である[要出典]。この説の場合、太いケーブルにまとめる以前の最初期段階、電話交換機同士を1つ1つの回線で接続していた当時はどう呼んでいたのかが不明である。

無線通信[編集]

双方向無線通信においてトランキングとは、空いているチャネルをアルゴリズム的プロトコルで探し通信する方式を指す。普通の(トランキングしない)無線では、1つのサービスのユーザーは1つまたはそれ以上の無線チャネルを占有し、使う際には順番待ちをしなければならない。これは例えばスーパーのレジに並ぶ客にたとえることができ、個々のレジ係は自分のところに並んでいる客だけに対応する。レジが無線チャネルに相当し、客が無線ユーザーに相当する。スーパーが混雑してくると、レジの位置によって並んでいる客の数はまちまちとなり、非常に長く待たされることもあるし、すぐに対応してもらえることもある。

トランク無線システム (TRS) は、言ってみれば客を一列に並ばせ、店長(サイトコントローラ)が次々に客を空いているレジに割り振っていく方式である。

TRSで特筆すべきこととして、1回の会話を複数の異なるチャネルを移動しながら行う場合があり、空いている全てのレジに家族客の1人1人を同時に案内するようなこともできるし、何度もレジを通る客は毎回異なるレジに案内される可能性がある。

トランク無線システムは管理コストは増大するが、効率が良くなる。店長の指令は全ての買い物客に伝達する必要がある。このため、1つ以上の無線チャネルを「制御チャネル」に割り当てる。制御チャネルはTRSが動作している制御局からデータを送信し、その地域にある無線機は全てそれを常に監視している。それによってメンバーはグループ間の様々な会話がどのチャネルからどのチャネルへ移動しているかを知ることができる。

TRSは複雑化しつつ巨大化しており、現在、米国では州単位や複数の州をカバーするシステムが構築されている。これはスーパーのチェーン店化にも似ている。買い物客は通常、最も近所のスーパーに行くが、そこが混雑している場合は隣の店に行くことができる。店と店は互いに通信でき、必要なら異なる店の買い物客の間でメッセージを受け渡すことができる。ある店が改装のために閉店している場合、他の店が買い物客に対応できる。

TRSでは、店長(サイトコントローラ)との通信ができない状態になると、トラフィックを管理できなくなるという弱点がある。そうなると大抵の場合、TRSは自動的に従来の操作に戻る。このような危険性はあるものの、TRSは通常、妥当な使用可能時間を維持している。

TRSは通常の無線システムより傍受が難しい。しかし、大手メーカーの無線機には少し追加のプログラミングをするだけでTRSを非常に効率的に傍受することができる機種もある。

有線通信[編集]

トランク回線[編集]

トランク回線 (trunk line) とは、電話交換装置間を接続する電気回路であり、電話交換機と個々の電話機あるいは情報終端装置をつなぐ加入者線回路と区別する用語である。

構内交換機 (PBX) の場合、電話会社からPBXに入ってくる電話線がトランク回線である[1]。これは、PBXから個々の電話に伸びる線と区別するための用語である。通常、全ての電話機から一斉に外線に接続することは考えられないため、トランク回線はそのPBXに接続されている電話機数よりも少なくて済み、トランキングはコスト低減に役立つ。この場合のトランク回線は、アナログの電話線、T1 (DS1)、E1、ISDNPRIなどである。

トランク呼[編集]

イギリスおよび英連邦諸国では、長距離通話を「トランク呼 」(trunk call)と呼ぶ。

電話交換[編集]

トランキングという言葉は、電話交換機内のスイッチや回路の接続を指すこともある[2]。また、加入者線で共通に使用する回路をトランクと呼ぶこともある。これにより回路数を削減している[3]

コンピュータ・ネットワーク[編集]

リンク集約[編集]

コンピュータネットワークにおけるトランキングは、複数のネットワーク・ケーブルと入出力ポートを同時に並列に使うことで、単一のケーブルやポートよりもリンク速度(ビット毎秒)を上げ、同時に冗長性の向上による耐障害性を得ることを指す。これをポートトランキングあるいはリンク集約と呼ぶ。特にネットワークスイッチ間の相互接続で使われる。

この通信線路の集約は、IEEE 802.3ad によってリンク・アグリゲーション・コントロール・プロトコル(Link Aggregation Control Protocol)として標準化された手順が規定されている。

VLAN[編集]

VLANにおいて、シスコシステムズはVLAN多重化を「トランキング」と称している。これは、複数のVLANを「トランキングプロトコル」を使って単一のネットワーク・リンクで接続するものである。複数のVLANのトラフィックを1つのリンクに載せるには、個々のVLANのトラフィックを識別できなければならない。このためによく使われるのが IEEE 802.1Q で、イーサネットヘッダにタグを追加し、そのフレームが属するVLANをそこで表示する。802.1Qはオープン標準だが、マルチベンダ環境ではオプションでしかない。シスコは独自のトランキング・プロトコル Inter-Switch Link (ISL) を提供しており、イーサネットのフレームを独自のコンテナに格納し、そのコンテナで属するVLANを表示する。

脚注・出典[編集]

  1. ^ Versadial, Call recording encyclopedia, last accessed 18 Apr 2007
  2. ^ Flood, J.E., Telecommunications Switching, Traffic and Networks Chapter 4: Telecommunications Traffic. New York: Prentice-Hall, 1998.
  3. ^ The Genesis Group, Trunking Basics, last accessed 13 February 2005.