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タブ・ガーナード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タブ・ガーナード
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: カサゴ目 Scorpaeniformes
: ホウボウ科 Triglidae
: ホウボウ属 Chelidonichthys
: タブ・ガーナード C. lucerna
学名
Chelidonichthys lucerna
(Linnaeus, 1758)
シノニム[2]
  • Trigla lucerna Linnaeus, 1758
  • Trigla hirundo Linnaeus, 1758
  • Trigla corvus Rafinesque, 1810
  • Trigla corax Bonaparte, 1834
英名
Tub Gurnard

タブ・ガーナード(学名Chelidonichthys lucerna)はホウボウ科に分類される魚類の一種。大西洋東部に分布し、食用魚として漁獲されている。「世界大博物図鑑 2 魚類」の中で、ヒカリホウボウと云う和名が提唱されている[3]

分類と名称

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1758年にカール・フォン・リンネの著書である『自然の体系』第10版の中で、タイプ産地が「北洋」として初めて正式に Trigla lucerna として記載された[4]。同書の中でリンネは Trigla hirundo を記載し、1896年にデイビッド・スター・ジョーダンバートン・ウォーレン・エバーマンT. hirundo をホウボウ属の基準種に指定した。ホウボウ属は1876年にヨハン・ヤーコプ・カウプによって記載された。T. hirundo は現在本種のシノニムとされる[4][5]。種小名はラテン語で「ランプ」を意味し、形態的に似ているニシセミホウボウのラテン語名である。この名前は少なくとも大プリニウスにまで遡り、彼は燃えるような赤い舌が夜に光るためとしている。その名前は後にルネサンス時代にリグーリア州ヴェネツィアでホウボウ類に使用された[6]

分布と生息地

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ノルウェーからヨーロッパアフリカの海岸に沿って南はガーナまで、東大西洋に分布する。地中海全域と黒海にも分布する。マデイラ島アゾレス諸島では記録されておらず、カナリア諸島周辺には分布する[1]。水深20 - 300 mの砂、泥、または砂利底に生息する[7]。夏の間は水深10 mほどの浅場に多く、幼魚はラグーン河口汽水域で見られる[8]

形態

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頭部は固く大きく三角形で、多くの突起と棘があり、後頭部に溝は無い[7]。吻端には2つの棘状の突起があり、目は比較的小さい[9]。口は大きく、頭の低い位置にあり、顎と鋤骨は密に並んだ歯で覆われる[8]。背鰭は2基あり、第一背鰭は8 - 10棘から、第二背鰭は 16 - 17軟条から成る。臀鰭は14 - 16軟条から成る。頭蓋棘は短く、胸鰭の上に位置し、胸鰭の4分の1の位置まで伸びる[7]。胸鰭は大きく、下の3本の鰭条は遊離しており、厚く指のようで、移動と獲物の探知に使用される[8]。胸部と腹の前部に鱗は存在せず、体には小さく埋め込まれた鱗があり、側線鱗は小さく管状である[7]。尾鰭はわずかに突き出た扇形である[8]。全長は通常30 cmだが、最大で75.1 cmに達し、ホウボウ科では最大である。体重は最大6 kg[2]。体色は濃い赤褐色からピンクがかった赤で、腹側はピンクがかっている。胸鰭は青色で中心に緑の斑点があり、縁は赤い[9]

生態

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底生生物、特に甲殻類や小魚を食べる日和見的な捕食者である。地中海北西部での研究では、食事の大部分は甲殻類で、主に十脚目、特にカニで、エンコウガニ科Goneplax rhomboidesシワガザミ属の一種などが含まれ、コエビ下目シンカイエビジャコ属も含まれる。魚はモトカタクチイワシクロハゼ[10] (Gobius niger)が大半であった。食事の内容は夏には甲殻類が多く、冬には魚が多かった[11]軟体動物多毛類を捕食することもある[12]。底質の中の獲物を、胸鰭の遊離軟条の感覚器官を用いて感知する[13]。分布域の北部では5月から7月にかけて産卵し[7]エジプト沖では11月から2月にかけて産卵する[14]。産卵の際、雌雄は明確なペアを形成する[2]。卵は遠洋性であり、仔魚の胸鰭条は遊離していない[8]。全長13 cmで性成熟する個体が現れ、全長20 cmで全ての個体が成熟する[14]。1997年のマルマラ海での調査によると、採取された個体の魚齢は1 - 6年、体長は12 - 42 cm、体重は15 - 610 gであった[15]と周りの筋肉を使って発声し、群れをまとめる際に音を出す[13]

人との関わり

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商業漁業の対象だが、漁獲量は比較的少なく、2011年から2015年の間で世界の水揚げ量の平均は4,429トンであった。多くは北海(52%)と英仏海峡東部(37%)で捕獲されるが、実際に水揚げされる際はホウボウ類で一纏めにされ、明確な分類はされていない。Chelidonichthys cuculusハイカナガシラとともに潜在的な商業種として認識されており、水揚げ量の監視が勧告されている。しかしそのデータは欠如している[12]ムニエルあるいは煮付けで食べられることが多い[2]

脚注

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  1. ^ a b Nunoo, F.; Poss, S.; Bannermann, P.; Russell, B. (2015). “Chelidonichthys lucerna”. IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T198752A15597014. doi:10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T198752A15597014.en. https://www.iucnredlist.org/species/198752/15597014 12 May 2024閲覧。. 
  2. ^ a b c d Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Chelidonichthys lucerna" in FishBase. May 2024 version.
  3. ^ 荒俣宏(2021)『普及版 世界大博物図鑑 2 魚類』平凡社、427頁
  4. ^ a b CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Chelidonichthys”. researcharchive.calacademy.org. 2024年5月12日閲覧。
  5. ^ Triglinae CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Triglinae”. researcharchive.calacademy.org. 2024年5月12日閲覧。
  6. ^ Order Perciformes (Part 12): Suborder Triglioidei: Families Triglidae and Peristediidae”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (10 June 2021). 12 May 2024閲覧。
  7. ^ a b c d e J-C Hureau. “Trigla lucerna”. Fishes of the NE Atlantic and the Mediterranean. Marine Species Identification Portal. 12 May 2024閲覧。
  8. ^ a b c d e Giuseppe Mazza. “Chelidonichthys lucerna”. Monaco Nature Encyclocpedia. 2024年5月12日閲覧。
  9. ^ a b Alwyne Wheeler『The Pocket Guide to Salt Water Fishes of Britain and Europe』(1997版)Parkgate Books、1992年、82頁。ISBN 1855853647 
  10. ^ 週刊世界動物百科 (朝日新聞社) 147: 18. (1974). 
  11. ^ Staguioni, M.; Montanini, S.; Vallisneri, M. (2012). “Feeding of tub gurnard Chelidonichthys lucerna (Scorpaeniformes: Triglidae) in the north-east Mediterranean”. Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom 92 (3): 605–612. doi:10.1017/S0025315411000671S. 
  12. ^ a b Ian McCarthy; Andrew Marriott (2018). “Age, growth and maturity of tub gurnard (Chelidonichthys lucernaLinnaeus 1758: Triglidae) in the inshore coastal waters of Northwest Wales, UK”. Journal of Applied Ichthyology 34 (3): 581–589. doi:10.1111/jai.13614. 
  13. ^ a b Tub gurnard”. The Aquarium Project. 12 May 2024閲覧。
  14. ^ a b Sabry; Elserafy, Sabry; Fahmy, I et al. (2015). “Age, Growth and Reproduction of the Tub Gurnard, Chelidonichthys lucerna (Linnaeus, 1758) from the Egyptian Mediterranean waters off, Alexandria”. International Journal of Fisheries and Aquatic Sciences 4: 13–20. doi:10.19026/ijfas.4.2116. 
  15. ^ Lütfiye ERYILMAZ et al. Some Biological Characteristics of the Tub Gurnard, Chelidonichthys lucernus (Linnaeus, 1758) in the Sea of Marmara (PDF)

関連項目

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