キバナヘイシソウ

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キバナヘイシソウ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
: ツツジ目 Ericales
: サラセニア科 Sarraceniaceae
: サラセニア属 Sarracenia
: キバナヘイシソウ S. flava
学名
Sarracenia flava
和名
キバナヘイシソウ
英名
biscuit-flower, huntsman's-horn, trumprtlearf, trumpets, umbrella-trumpets, watches, yellow pitcher plant[1]

キバナヘイシソウ Sarracenia flavaサラセニア属植物の1つ。本属を代表する種で、背の高い捕虫葉を持ち、黄色い花を付ける。

特徴[編集]

多年生草本食虫植物[2]。葉は筒状になり、直立して高さ120cmにも達する。基部は細く、先に向かって次第に太くなる。先端にある袋の口では、その口径が3-8cmになる。蓋は斜めか直立に立ち、ほとんど円形で先端は尖る。その縁は波打つ。その基部は左右から外側に巻いて細くなっている[3]。葉全体が黄緑色から緑色で葉脈が赤く色づくものもあり、全体に深紅色になる個体もある。特に蓋の基部の内側には赤みが差し、この部分の着色の程度には変異が多い。夏から秋にかけては袋にならない、左右から扁平な剣葉が出る[4]

花期は本属のものの中では最も早く、3月半ばから5月頃まで。花茎は捕虫葉よりやや低く、高さ50cmほど。萼片は長さ3-5cm、幅は大きいところで3-4cm、黄緑色。花弁は黄色で倒卵円形、長さ5.5-10cmになる[3]。 花には強い芳香がある[5]

分布と生育環境[編集]

アメリカ合衆国の、ノースカロライナ州サウスカロライナ州バージニア州アラバマ州ジョージア州フロリダ州に分布する。開けた湿地に多く、国道沿いのブナ林混じりのところなどにはよく見かける[4]

花粉媒介など[編集]

花は下向きに咲き、雌蕊が傘状に広がっており、傘の骨の先に柱頭がある。隣の柱頭との間を花弁が塞いでいる。その上にある雄蕊が熟すと、花粉は雌蕊の傘の底に貯まる。この花の花粉媒介は主としてマルハナバチとされており、八が花弁を押し分けて雌蕊の傘の上に入る時、他花から持ってきた花粉を柱頭に押し付けることになる。また雌蕊の上を歩く時にこの花の花粉を身体に付け、そして花弁を押し広げて出て行く。果実は9-10月に熟し、朔果で球形、直径約2cm。500個ほどの種子を含む。この季節は雨が多くハリケーンも来る時期に当たり、種子洪水強風で散布されると思われる[6]

分類[編集]

本種は、本属の中でもっともよく知られたものであり、本属を代表する種である[7]

変異に富む種であり、以下のような亜種が上げられている[8]

  • Sarracenia flava var. flava:基準変種。蓋の基部の内側(喉)に赤みが差し、その付近の葉脈が赤くなることもある。
    • var. rugelii:喉の部分が鮮黄色に染まる。ジョージア州、フロリダ州に分布。
    • var. maxima:赤い色素が全く出ない。特に大きくはない。フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州に分布。
    • var. ornata:捕虫葉広くの葉脈が赤くなり、赤い網目がかかったようになる。フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州に分布。
    • var. cuprea:蓋が褐色に染まる。フロリダ州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州に分布。
    • var. atropurpurea:蓋から筒全体に渡って赤く染まる。フロリダ州と、ノースカロライナ州・サウスカロライナ州の沿岸域に分布。
    • var. rubricorpora:筒の外側が赤く、内側が黄色く染まり、喉から蓋にかけては葉脈が赤く染まる。フロリダ州北西部、パンハンドル沿岸域に分布。

利用[編集]

観賞用に栽培される。日本に渡来したのは明治の末期である[9]。日本に入っている系統は多くない。

出典[編集]

  1. ^ 大事典(1994),p.1080
  2. ^ 以下、主として大事典(1994),p.1080
  3. ^ a b 近藤・近藤(1972),p.197
  4. ^ a b 田辺(2010),p.106
  5. ^ 本田他(1984),p.94
  6. ^ メリチャンプ(1997),p.55
  7. ^ メリチャンプ(1997),p.54
  8. ^ 田辺(2010),p.106-107
  9. ^ 本田他(1984)

参考文献[編集]

  • 田辺直樹『食虫植物の世界 魅力の全てと栽培完全ガイド』(2010)、(株)エムピージェー
  • 近藤誠宏・近藤勝彦『食虫植物 入手から栽培まで』(1972)、文研出版
  • ローレンス・メリチャンプ、「サラセニア科」:『朝日百科 植物の世界 7』、(1997)、朝日新聞社:p.54-56
  • 『園芸植物大事典 1』(1994)、小学館
  • 本田正次他監修『原色園芸植物大圖鑑』(1984)、北隆館