カンボジア国立図書館

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カンボジア国立図書館
2014年
施設情報
前身 プノンペン国立図書館[1]
事業主体 文化芸術省[1]
開館 1924年[1]
所在地 カンボジアの旗 カンボジア
プノンペン
Oknha Hing Penn St. (61)
位置 北緯11度34分35.4秒 東経104度55分10.5秒 / 北緯11.576500度 東経104.919583度 / 11.576500; 104.919583座標: 北緯11度34分35.4秒 東経104度55分10.5秒 / 北緯11.576500度 東経104.919583度 / 11.576500; 104.919583
統計・組織情報
蔵書数 125,000点[1](2020年時点)
来館者数 1日あたり35-50人[2](2006年)
職員数 30人[1]
公式サイト nlc.gov.kh
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カンボジア国立図書館(カンボジアこくりつとしょかん)とは、カンボジアの国立図書館である。1924年にプノンペン国立図書館として設立されたが、1975年から1979年にかけてのポル・ポト政権下では、豚小屋や倉庫として使われた。1979年以後は、海外の支援のもとで再建に取り組んでいる。

歴史[編集]

フランス保護領インドシナ政府時代[編集]

1924年12月24日、フランス保護領インドシナ政府により、プノンペン国立図書館として設立された[3][4]。蔵書のほとんどはフランス語の書籍であり、運営を担当する職員もフランス人であった[3]。なお、クメール人が初めて館長となったのは1951年である[3]。プノンペン国立図書館を利用するのは、主に公的機関の職員やフランス人であり、利用も制限されていた[5]

旧カンボジア王国時代[編集]

カンボジア王国がフランスから独立した1954年以降は、カンボジア人による出版活動が栄えた[3]。それを受けて、国立図書館におけるクメール語の蔵書も充実した[3]

ポル・ポト政権時代[編集]

1975年から1979年のポル・ポト政権下では、閉館を余儀なくされた[3]。国立図書館は政権メンバーの宿舎として使われたほか、食料倉庫や豚小屋としても使用されたという[3][6][7]。また、数万部の蔵書が焼却され,残ったのは数百部であった[6]。なお、蔵書は調理用の燃料や、タバコの巻紙として使用されたという[8]。さらに、職員の多くが虐殺や飢餓により死去しており、1975年に国立図書館で働いていた40人のうち、1979年時点で生存していたのは6人であった[5]

ポル・ポト政権崩壊後[編集]

ポル・ポト政権が崩壊した翌年の1980年に、カンボジア国立図書館は再開した[3]。ポル・ポト時代以前に勤務した職員でこの時復帰したのは、夜警と秘書補の2名のみであった[8]

国立図書館は、フランス、ソ連、ベトナムといった外国政府の様々な支援を受け、再建に取り組んだ[3][9]。1989年には、コーネル大学のカンボジア関連蔵書をマイクロフィルム化したコピーをカンボジアに送付し、国立図書館の再生に役立てるプロジェクトに、カンボジア政府が許可を与えている[6]。また、2005年にカンボジア国立図書館はISBN付与業務を開始し[2]、2006年には、カンボジア関連資料 "Cambodia" の目録を公開した[10]

納本制度[編集]

カンボジアでは、著者もしくは出版社が出版物を所蔵庫に送付することとなっている[1]。国立図書館は1タイトルにつき5部受領し、そのうち2部を閲覧用、2部を貸出用、1部を法定納本部門に割り当てている[1]

利用者サービス[編集]

2004年に、週末を除き国民に公開されるようになった[9]。2020年時点で、閲覧、複写、貸出サービスを実施している[1]。また、各図書館や関連団体と連携しての読書推進プログラム,情報リテラシープログラムなども実施している[10]

閲覧については、学生、僧侶、図書館職員および公務員のみに認められている[1]。また、貸出については、登録料を払って貸出カードを作成する必要がある[1]。なお、貸出用コレクションの構築は2005年7月から開始しているが、これはカンボジア国内初の試みであった[2]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j 南 2020, p. 9.
  2. ^ a b c E526 – 【連載】アジア・オセアニアの図書館事情:(2)カンボジア」『カレントアウェアネス-E』第88号、2006年8月2日、 オリジナルの2023年9月25日時点におけるアーカイブ、2024年1月7日閲覧 
  3. ^ a b c d e f g h i 南 2020, p. 8.
  4. ^ Jarvis 1995, p. 391.
  5. ^ a b Margaret A. Bywater (1998). “Libraries in Cambodia: Rebuilding a Past and a Future”. IFLA Journal 24 (4): 224. https://www.ifla.org/wp-content/uploads/2019/05/assets/hq/publications/ifla-journal/archive/jour2404.pdf. 
  6. ^ a b c 山口学「CA623 – カンボジア国立図書館の再生へ向けて――コーネル大の援助プロジェクト――」『カレントアウェアネス』第122号、1989年10月20日、 オリジナルの2024年1月7日時点におけるアーカイブ、2024年1月7日閲覧 
  7. ^ 宮島安世「CA1069 – カンボジアの図書館の現状」『カレントアウェアネス』第202号、1996年6月20日、 オリジナルの2024年1月7日時点におけるアーカイブ、2024年1月7日閲覧 
  8. ^ a b Jarvis 1995, p. 392.
  9. ^ a b 北野康子「カンボジアの図書館事情と日本の支援 (特集 開発途上国における図書館の役割と支援活動)」『アジ研ワールド・トレンド』第126巻、2006年、26頁、doi:10.20561/00047448ISSN 13413406 
  10. ^ a b E713 – CDNLAO 2007カントリーレポート(1)オーストラリア,カンボジア」『カレントアウェアネス-E』第116号、2007年10月31日、 オリジナルの2023年6月6日時点におけるアーカイブ、2024年1月7日閲覧 

参考文献[編集]

  • Jarvis, Helen (1995). “The National Library of Cambodia: Surviving for Seventy Years”. Libraries & Culture 30 (4): 391-408. JSTOR 25542801. 
  • 南亮一「ベトナム・カンボジア・ラオスの国立図書館は今 -シンポジウム&ワークショップ「東南アジア地域研究情報資源の共有化をめざして」での報告を元にして- (その2 カンボジア・ラオス国立図書館)」『アジア情報室通報』第18巻第2号、2020年、8-10頁、CRID 1520291855528977408NDLJP:11510898 

外部リンク[編集]