カルシウム・パラドックス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

カルシウム・パラドックス(calcium paradox)とは、元々は1967年にZimmermanらが心筋を潅流(かんりゅう)する実験において、カルシウム欠乏溶液で処理した後にカルシウムを含む溶液に移し変えると、心筋細胞中にカルシウムが流入し心筋が損傷・壊死する不思議な現象に対して名づけた用語である[1]。その後、カルシウム摂取をめぐる逆説的な(パラドックス)いくつかの現象に対して使われている。定義が定まっていないが学術雑誌や専門書等にもしばしば引用される。

カルシウム摂取不足とカルシウム・パラドックス[編集]

カルシウム摂取が不足すると血管等の軟部組織にカルシウムが逆に増え、動脈硬化、糖尿病、高血圧など様々な疾病が起こる現象をカルシウム・パラドックスと呼ぶもの[2]。カルシウム摂取不足により血中カルシウム濃度が低下すると、副甲状腺ホルモンの働きにより骨からカルシウムが溶出し血液中に流入する。このカルシウムが血管へ沈着(動脈石灰化)し動脈硬化を引き起こすと考えられる。骨粗鬆症患者では動脈石灰化症による冠状動脈疾患・心臓病が多くみられることはよく知られており、calcification paradox(石灰化パラドックス)とも呼ばれる[3]

カルシウム摂取過多とカルシウム・パラドックス[編集]

カルシウムの摂取量が多い国にの疾患が多いという現象を[4]、カルシウム・パラドックスと呼ぶことがある。骨の材料となっているカルシウムを摂取しているにもかかわらず、骨折骨粗鬆症が多いという、逆説的なことが起こっていることから、このように呼ばれている。

2002年に世界保健機構 (WHO) は、カルシウム・パラドックスに言及し動物性たんぱく質による酸性の負荷に触れており[4]、2007年にWHOは、タンパク質中の含硫アミノ酸メチオニンシステインの酸が骨のカルシウムを流出させるため骨の健康に影響を与えるため、カリウムを含む野菜や果物のアルカリ化の効果が少ないときカルシウムを損失させるため骨密度を低下させると報告した[5]

一方、カルシウムをサプリメントから摂取すると心臓病などの冠状動脈疾患リスクが高まることも報告されており[6][7] 、これをカルシウム・パラドックスと呼ぶこともある[8][信頼性要検証]

出典[編集]

  1. ^ Piper, H (2000). “The calcium paradox revisited An artefact of great heuristic value”. Cardiovascular Research 45 (1): 123–127. doi:10.1016/S0008-6363(99)00304-1. http://cardiovascres.oxfordjournals.org/content/45/1/123.long. 
  2. ^ Fujita T (2000). “Calcium paradox: consequences of calcium deficiency manifested by a wide variety of diseases”. J. Bone Miner. Metab. 18 (4): 234–6. PMID 10874605. 
  3. ^ Persy V, D'Haese P (2009). “Vascular calcification and bone disease: the calcification paradox”. Trends Mol Med 15 (9): 405–16. doi:10.1016/j.molmed.2009.07.001. PMID 19733120. 
  4. ^ a b joint FAO/WHO expert consultation. "Chapter 11 Calcium", Human Vitamin and Mineral Requirements, 2002. pp.166-167.
  5. ^ WHO/FAO/UNU合同専門協議会、日本アミノ酸学会監訳 『タンパク質・アミノ酸の必要量』 医歯薬出版、2009年ISBN 978-4-263-70568-1 2009年5月。ISBN 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007. 日本語:172-173頁。
  6. ^ Bolland MJ, Grey A, Avenell A, Gamble GD, Reid IR (2011). “Calcium supplements with or without vitamin D and risk of cardiovascular events: reanalysis of the Women's Health Initiative limited access dataset and meta-analysis”. BMJ 342: d2040. PMC 3079822. PMID 21505219. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=3079822. 
  7. ^ Xiao, Qian; Murphy, Rachel A.; Houston, Denise K.; Harris, Tamara B.; Chow, Wong-Ho; Park, Yikyung (2013). “Dietary and Supplemental Calcium Intake and Cardiovascular Disease Mortality”. JAMA Internal Medicine 173 (8): 639. doi:10.1001/jamainternmed.2013.3283. ISSN 2168-6106. 
  8. ^ Rheaume-Bleue Vitamin K2 and the Calcium Paradox(2011年12月2日時点のアーカイブ