オイフォン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

オイフォン (euphon) は、静かな場所でから聞こえる単調な高音である。生理的耳鳴りともいう。

特徴[編集]

「ミー」「シーン」と表現できる持続的な音。普段は脳が外部の音を優先的に処理しているので聞こえにくいが、無響室や大湿原、就寝前の静かな部屋にいると聞こえやすくなる。成人のおよそ2人に1人がこの音に自覚的であり、そのうち95%の人が不快感を示している。 静かな場所で永続的に聞こえる場合のほか、雑音のある環境で数秒間同様の音程が聞こえる場合もある。

歴史[編集]

ドイツ・ロマン派の代表的作家E.T.A.ホフマンの『クライスレリアーナ』のなかの一節で初出した。音楽好きなひとりの男がいて、この音が聞こえると間もなくインスピレーションがやってくると分かる。その音を彼自身「オイフォン」と名付けている。という内容である。

ポール・ヴァレリーはオイフォンについて「例外的で強烈で純粋なこの音は、無限にして特殊な聴覚の『宇宙』を開くのだ。」[1]と述べている。

1951年、ジョン・ケージハーバード大学の無響室で、完全な沈黙を体験しようとしたが、オイフォンが聞こえた。それによってケージは、人が生きる限り音はあり続け、「沈黙は存在しない」という認識に至った。そのことから、翌年、まったく無音の作品「4分33秒」を制作した。[2]

科学的正体[編集]

オイフォンは耳鳴りの一種であるが、健康上問題はない。蝸牛の有毛細胞の自発振動によって生成する音である。

オイフォンの機能について、アンディ―・ハントは脳をCPUに喩え、「このCPUは『アイドルループ』を用いて処理をしています。CPUが特に何も処理していないとき、割り込み(きっかけとなる入力)が入ったときにすぐに処理できるよう、内部では途切れることのない音が生成されています。これが耳を澄ましたときに頭の中で聞こえる、小さな『声』の正体です。」[3]と述べている。

科学的にまだ詳しく検証されていない現象のひとつである。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ポール・ヴァレリー『ヴァレリー・セレクション 下』,コローをめぐって,p75,平凡社ライブラリー,2005 より一部改編
  2. ^ ICC ONLINE http://www.ntticc.or.jp/Exhibition/2012/Openspace2012/Works/anechoic_j.html
  3. ^ アンディ―・ハント『リファクタリング・ウェットウェア 達人プログラマーの思考法と学習法』,p36,オライリー・ジャパン,2009

関連項目[編集]