我が秘密の生涯

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1888年リプリント版、タイトルページ

我が秘密の生涯』(わがひみつのしょうがい、My Secret Life, The Sex Diary of a Victorian Gentleman)は、1884年‐1894年にベルギーで私家刊行された、英語による自伝風の官能小説性愛文学である。オリジナル版は11巻、184章、116万6670語で、4,200ページに及ぶ。

作者、すなわち一人称の主人公「ウォルター Walter 」は、ヘンリー・スペンサー・アッシュビー(1834‐1900)であるとする説が最有力である。

主人公の性癖とその性的体験の遍歴を幼児期から晩年に至るまで記述した内容で、当時のヨーロッパ、およびヴィクトリア朝時代イギリスの社会の性的側面の実相を社会学的、歴史的につぶさに知ることもできるものである。

出版[編集]

『我が秘密の生涯』は、この私家版を入手し、1901年に『性の目覚め』と題して出版したチャールズ・キャリントンによって世に出ることとなるが、キャリントンは別の書籍でこの『性の目覚め』について「金持ちの老イギリス人が自分の楽しみのために厖大な原稿を密かに自費出版したいと言った」と語っている。イアン・ギブソンは自著『エロトマニアック』の中で、こうした事情や、キャリントンがアシュビーのエロティカ蒐集のヨーロッパをつなぐパイプ役として活動を行っていたことや、書誌目録出版の代理人を務めていたことなどの複数の状況証拠から、『我が秘密の生涯』をアシュビーであるとほぼ断定口調で推察している[1]。それ以外の候補としてはアイルランドジャーナリストフランク・ハリスなどの名が挙げられることもあるが、実名としてはアシュビー以外の名が挙げられることはほとんどない[2]

その猥褻とも受け取ることができる内容から、出版関係者が司直の手にかかるなど、一部で物議を醸した。現在では無削除版で読むことができる。

真偽と評価[編集]

内容の真偽については『我が秘密の生涯』の前書きでは事実であると述べられているが、ギブソンをはじめ、フィクションであるという見方が多い。これに対してイギリス文学を研究する小林章夫は自著『エロティックな大英帝国』において「実体験をもとにそれを膨らませて書いたと考えられる」と述べている[3]

一人の男性の50年にもわたる性描写を淡々と詳細に語るその内容について、開高健田村隆一訳の『我が秘密の生涯』の解説で「ファーブルヘミングウェイの文体でセックスを書いたらこうなるだろう」とまとめている。また、『我が秘密の生涯』の無削除版をインターネット上で公開するMy Secret Life­ by Walter[1]では、いかに即物的表現であるかの指標としてカントファックプリックなどの表現をカウントしており、それぞれ、5,357回、4,032回、3,756回という値が提示されている[4]

邦訳[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Gibson
  2. ^ 小林、p.22。
  3. ^ 小林、p.193。
  4. ^ 小林、p.185。

参考文献[編集]

  • Ian Gibson (2001). The Erotomaniac: The Secret Life of Henry Spencer Ashbee. Faber and Faber. 
  • 小林章夫 『エロティックな大英帝国』 平凡社、2010年ISBN 9784582855296

外部リンク[編集]