冬眠

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冬眠(とうみん、Hibernation)とは、季節的な低温に対して、動物が摂食や運動を中止して代謝活動を著しく低下させた状態で冬季を過ごすこと。

陸生変温動物の冬眠

ヘビカエルカメ昆虫など変温動物が越冬するときに広くみられる。体温は外囲の温度に並行して低下する。

恒温動物の冬眠

コウモリヤマネシマリスなどの小型の恒温動物も冬眠を行う。小型恒温動物は、体重に対する表面積の割合が大きいため、体温を維持するために大量のエネルギーを必要とする。しかし、食料の乏しい冬季では体温を維持するだけの栄養を摂ることが出来ず、小型恒温動物は冬眠せざるを得なくなる。

冬眠前には巣の中に食料を蓄えたり、体内に脂肪を蓄えたりする。また、体内の脂肪の不飽和度を上げることにより、凍結することを防ぐ。冬眠時、体温は気温よりやや高い一定温度(コウモリでは5℃,ヤマネでは0℃くらい)を維持する。また、通常に比べ、代謝レベルが数十分の1まで低下する。

大型のクマアナグマも冬眠を行う。かつては体温の低下がわずか数℃以内でわずかな刺激でも目覚めるため、冬眠ではなく睡眠に近い状態だと考えられていたが、研究の進んだ近年では真の冬眠と考えられるようになってきた。

動物園等で飼育されるクマは冬眠(冬ごもり)することはないが、2006年~2007年にかけて上野動物園で飼育されているツキノワグマ(雌のクー)を冬眠させる実験が行われた。冬眠中飲まず食わずと言われていたが、冬眠明けの頃目覚めて水を飲んで再びまた眠るなどの行動が見られた。

冬眠と冬ごもりが混同されていることが多く、シマリスなども時折目覚めて溜め込んだ木の実などを食べているので冬眠なのか冬ごもりなのか定義も諸説ある。

また、リスがときどき冬眠から目覚めるのは、睡眠不足を補うためであるとする説もある。この説によると冬眠と睡眠は全く別のものであり、リスは冬眠し続けると睡眠不足になってしまうので、2週間おきに冬眠から覚めて睡眠を補う。[1]

「人間の冬眠」と話題に上がった事件

人間は冬眠しないが、極低温状態での生存例が報告されている。日本では2006年10月7日兵庫県神戸市六甲山で男性がガケから落ちて骨折のため歩行不能となり、10月31日に仮死状態で発見されて救助される事件があった。当初は「焼き肉のたれで生き延びた」などと報道されていたが、実際は遭難から2日後の10月9日には意識を失い、発見されるまで23日間、食べ物だけでなく水すら飲んでいなかったことが分かった。発見時には体温が約22℃という極度の低体温症で、ほとんどの臓器が機能停止状態だったが、後遺症を残さずに回復した。「いわゆる冬眠に近い状態だったのではないか?」と医師が話している[2]

2012年2月17日、ロイター通信がスウェーデン北部の林道で、前年の12月19日から約2カ月間、食料なしで雪に埋もれた車の中にいたという男性(45)が通りかかった人に発見され、救出されたと伝えた。報道は男性が31度前後の低体温の冬眠状態になり、体力を消耗せず生存できたのではないかとの医師の見方を伝えている。 [3]

その他

  • SF作品に登場する人工冬眠については、コールドスリープを参照。冬眠中は脈拍等が減少する。端的にいえばそれだけ寿命が長くなるとも考えられている。また、現在不治の病とされている患者に対し、冬眠に似た状態に保つことで、将来の医学に期待する方法も模索されている。SFを題材にした小説で、良く登場する手法である。
  • 冬眠の季節に入る前のシマリスは、冬眠をする場所の確保や食糧の貯蔵等で常に縄張り意識が高く、殺気立っている為、たとえ人に馴れているペットであっても秋になると野生の本能が戻り、凶暴になる場合がある(その場合、指をかまれ、爪に穴があく危険性もあるので注意が必要となる)。

参考文献

  1. ^ 市瀬史・著「人工冬眠」への挑戦 (ブルーバックス) による。
  2. ^ “Japanese man in mystery survival”, BBC News, (2006-12-21), http://news.bbc.co.uk/2/hi/asia-pacific/6197339.stm 2008年6月19日閲覧。 
  3. ^ Swedish man survives for months in snowed-in car http://uk.reuters.com/article/2012/02/18/uk-sweden-snow-idUKTRE81H0JX20120218

関連項目

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