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== 伝熱の形態 ==
== 伝熱の形態 ==
温度差や温度勾配を駆動力として熱移動が起きる現象は、熱伝導、熱伝達、熱放射に大きく分類される。
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この他に[[相変化]]を伴う熱移動や、物質の濃度勾配と熱移動の関係を示す[[ソーレー効果]]や[[デュフォー効果]]など、電場と熱移動の関係を表す[[ペルチェ効果]]や[[ゼーベック効果]]、[[トムソン効果]]などもこの伝熱現象となる。
この他に[[相変化]]を伴う熱移動や、物質の濃度勾配と熱移動の関係を示す[[ソーレー効果]]や[[デュフォー効果]]など、[[電場]]と熱移動の関係を表す[[ペルチェ効果]]や[[ゼーベック効果]]、[[トムソン効果]]などもこの伝熱現象となる。


=== 熱伝導 ===
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[[熱伝導]]は、物体の移動なく物質内でその温度勾配に比例した[[熱流束]](単位時間に単位面積を横切るエネルギー量)を生じる現象であり、[[フーリエの法則]]として下記の式で表される。


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[[熱伝達]]は、温度差に比例した熱移動を表すものであり、物質の流れや[[凝縮]][[蒸発]]、濃度の変化など他の物理現象を伴った熱流束を表す。

'''[[熱伝達]]'''は、温度差に比例した熱移動を表すものであり、物質の流れや凝縮や蒸発、濃度の変化など他の物理現象を伴った熱流束を表す。


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<math>dq</math> は単位時間に単位面積を横切って移動した熱量 W/m<sup>2</sup>、<math>h</math> は熱伝達率、<math>T_f</math> は流体の温度、<math>T_s</math> は固体表面の温度。
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'''[[熱放射]]'''は[[プランクの法則]]に従って固体表面から[[電磁波]]として放出されるエネルギーであり、そのエネルギーの交換はキルヒホッフの法則などに従う。温度に関わる主なものとしてステファン-ボルツマンの法則がある。
[[熱放射]]は[[プランクの法則]]に従って固体表面から[[電磁波]]として放出されるエネルギーであり、そのエネルギーの交換は[[キルヒホッフの法則]]などに従う。温度に関わる主なものとして[[ステファンボルツマンの法則]]がある。

プランクの法則は、波長範囲 <math>\lambda\sim\lambda+\Delta\lambda</math> においての光のエネルギー W/m<sup>3</sup>は


プランクの法則は、波長範囲 <math>\lambda\sim\lambda+\Delta\lambda</math> においての光のエネルギー W/m<sup>3</sup>は
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この式を光の全波長で[[積分]]したものが
と表せる。ここで <math>h</math> は[[プランク定数]]、<math>\lambda</math> は光の波長、<math>k</math> はボルツマン定数。

この式を光の全波長で積分したものが

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となる。この[[黒体]]の放射エネルギーが物体の温度の4乗に比例するという法則をステファン・ボルツマンの法則と言う。方向性のない熱放射は固体表面の[[放射率]] <math>\varepsilon</math> によって、<math>\varepsilon\sigma T^4</math> となる。2つの固体間の放射熱交換は、それぞれの固体が相手を見る[[立体角]]に関係する[[形態係数]] <math>F_{1\rightarrow 2}</math> などを用いて計算される。


より詳細には、固体表面はその電気電子的性質によって波長依存性を持つ[[光吸収]]、[[光反射]]、放射、[[光透過]]などの現象の組み合わせという複雑なエネルギー移動現象である。
となる。この[[黒体]]の放射エネルギーが物体の温度の4乗に比例するという法則を[[ステファン・ボルツマンの法則]]と言う。方向性のない熱放射は固体表面の[[放射率]] <math>\varepsilon</math> によって、<math>\varepsilon\sigma T^4</math> となる。2つの固体間の放射熱交換は、それぞれの固体が相手を見る[[立体角]]に関係する[[形態係数]] <math>F_{1\rightarrow 2}</math> などを用いて計算される。


== 脚注 ==
より詳細には、固体表面はその電気電子的性質によって波長依存性を持つ[[光吸収]]、[[光反射]]、放射、[[光透過]]などの現象の組み合わせという複雑なエネルギー移動現象である。
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<!-- == 参考文献 == {{Cite book}}、{{Cite journal}} -->


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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* [[熱工学]]
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* [[フーリエの法則]]
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* [[ニュートンの冷却の法則]]
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2012年4月12日 (木) 05:15時点における版

伝熱(でんねつ、: heat transfer[1])とは、エネルギーが、空間のある場所から別の場所に移動する現象熱移動ともいう。伝熱は、熱の移動現象を扱う工学であり、熱工学の一分野である。

伝熱の形態

温度差温度勾配を駆動力として熱移動が起きる現象は、熱伝導熱伝達熱放射に大きく分類される。

この他に、相変化を伴う熱移動や、物質の濃度勾配と熱移動の関係を示すソーレー効果デュフォー効果など、電場と熱移動の関係を表すペルチェ効果ゼーベック効果トムソン効果などもこの伝熱現象となる。

熱伝導

熱伝導は、物体の移動なく物質内でその温度勾配に比例した熱流束(単位時間に単位面積を横切るエネルギー量)を生じる現象であり、フーリエの法則として下記の式で表される。

は熱流束 W/m2熱伝導率 W/mK、温度 K、位置 m。

熱伝達

熱伝達は、温度差に比例した熱移動を表すものであり、物質の流れや凝縮蒸発、濃度の変化など、他の物理現象を伴った熱流束を表す。

は単位時間に単位面積を横切って移動した熱量 W/m2 は熱伝達率、 は流体の温度、 は固体表面の温度。

熱放射

熱放射は、プランクの法則に従って、固体表面から電磁波として放出されるエネルギーであり、そのエネルギーの交換はキルヒホッフの法則などに従う。温度に関わる主なものとしてステファン・ボルツマンの法則がある。

プランクの法則は、波長範囲 においての光のエネルギー W/m3は、

と表せる。ここで、プランク定数 は光の波長、ボルツマン定数

この式を、光の全波長で積分したものが、

となる。この黒体の放射エネルギーが物体の温度の4乗に比例するという法則をステファン・ボルツマンの法則と言う。方向性のない熱放射は固体表面の放射率 によって、 となる。2つの固体間の放射熱交換は、それぞれの固体が相手を見る立体角に関係する形態係数 などを用いて計算される。

より詳細には、固体表面はその電気電子的性質によって、波長依存性を持つ光吸収光反射、放射、光透過などの現象の組み合わせという、複雑なエネルギー移動現象である。

脚注

  1. ^ 文部省日本物理学会編『学術用語集 物理学編』培風館、1990年。ISBN 4-563-02195-4http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi 

関連項目