酸味

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梅干しを見ると、その酸味を想像するだけで唾液が溢れてくる。

酸味(さんみ)とは、味覚のうちの一つで、一般に「すっぱい」と形容されるものを指す。代表的な酸味としては梅干のすっぱさやヨーグルトのすっぱさがある。酸味を感じさせるための調味料を「酸味料」という。

概要

味は甘味塩味苦味、酸味、旨味、の5基本味に大別され、さらにこれらはそれぞれ異なる味細胞受容されることが分かっている。例えば甘味受容体はT1R2/T1R3、旨味受容体はT1R1T1R3、苦味受容体はヒトでは25種類あるT2Rと呼ばれるGタンパク質共役型受容体が担い、II型細胞に発現する液性が酸性である場合が多くなっている[1]

酸味に関してもその受容機構が解明されつつあり、III型細胞反応するため酸味受容細胞と考えられる。III型細胞にはイオンチャネル型受容体PKD2L1が発現し、PKD2L1発現細胞を特異的にジフテリア毒素により死滅させたマウスでの実験では、酸味刺激に対する味神経応答がなくなったことなどから、PKD2L1発現細胞が酸味受容体であることが判明した。PKD2L1は、葉状乳頭、有郭乳頭でPKD1L3分子と共発現する。この2つは相互作用により味細胞の先端部に局在する。また、両分子のヘテロマーPKD1L3/PKD2L1が酸応答性を持つことも培養細胞での実験で判明している。しかし、現状では酸味受容機構の全体像が解明されているわけではなく、酸味受容体の機能を担う分子がPKD2L1以外に存在することも十分あり得ると考えられる[1]

酸味はpH低下依存的に惹起される感覚であるが、酸溶液のpHを段階的に下げていくと、酸味を感じ始めるpHの閾値は酸の種類によって異なることが確認されている。同じphならた酸の種類により酸味強度が異なる。また酸の種類によって酸味の味質が異なる。酸は体性感覚系および嗅覚系でも受容されるため、食事に際しにヒトが広い意味で酸味として捉える感覚は、以上を混合した複合的感覚であろうと考えられている。体性感覚系および嗅覚系への作用は酸の種類によっても異なる[1]

味覚を左右するph

pHは酸性度合いを表す数値だが、7が中性、7より小さければ酸性、大きければアルカリ性である。一般に、人が食品をおいしく感じるのは弱酸性のpH4〜6の間で、pH8になると味がぼやけ、pH3になると酸味を感じるとされる。例えばのpHは2.5〜3.5、レモンカボススダチなど酸味の強い柑橘類果汁がpHは2.5前後と強い酸性であり、こうしたい柑橘類を料理に加えることで、phの低下があり、味が引き締まる[2]

脚注

  1. ^ a b c バイオミディア 酸味を感じる仕組み 石井翔(株式会社ミツカングループ本社中央研究所研究員)
  2. ^ ニッスイ 美味しさを科学する「酸味」