逆流性食道炎

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逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)とは、胃酸や十二指腸液が、食道に逆流することで、食道の粘膜を刺激し粘膜にびらん・炎症を引きおこす疾患名。

胃食道逆流症: Gastroesophageal Reflux DiseaseGERD)の一つ。

症状

以下のような症状がある。

  • 胸焼け(: heartburn)、みぞおちや上胸部痛などが起こる
  • 食事中・後、横になったとき、前屈したときに喉や口に胃酸が逆流する
  • 胸部違和感、不快感
  • 喉の違和感、声のかすれ
  • 腹部膨満感
  • 嘔吐・多くは過度のおくび(げっぷ)を伴う。
  • 流涎
  • 食物による食道痛
  • 就寝中逆流物の気道への誤嚥による呼吸器症状

要因

以下のような要因が知られている。

重症度

「逆流性食道炎」は内視鏡による重症度分類は様々なものが提唱されているが、ロサンゼルス分類が一般に広く用いられている。なお、グレードNとグレードMCは日本独自の分類である。

  • Grade N:正常粘膜
  • Grade M:明らかな糜爛や潰瘍がなく、発赤だけを認めるもの
  • Grade A:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以内のもの
  • Grade B:粘膜障害が粘膜ひだに限局し、5mm以上で相互に癒合しないもの
  • Grade C:複数の粘膜ひだにわたって癒合し、全周の75%を超えないもの
  • Grade D:全周の75%以上にまたがるもの

検査

内視鏡検査
食道上皮に発赤や糜爛(びらん)・潰瘍、腫瘍がないか検査する。
分光画像内視鏡では、胃・バレット食道・正常食道の粘膜の色調の変化から判別を行う。
拡大内視鏡では、血管走行や腺構造の違いが調べる。
食道内pHモニタリング
食道への胃酸逆流を評価する。24時間検査し、食道内pHが急速に4以下に低下したときに酸逆流と認める。

診断

症状から胃酸逆流を疑い、食道内pHモニタリングで確定診断する。内視鏡は重症度分類の助けとする。

治療

日常生活においては消化の良いものを取り、過食をさけ、食後横になるなどの逆流を増強する行為を避け、就寝時には頭を高くする(Fowler体位)。 一般的な薬物療法では、胃酸を抑える目的で、最も効果が強いプロトンポンプ阻害薬(-そがいやく、: Proton-pump inhibitor: PPI)の投与が選択され、場合によってはH2ブロッカー: Histamine H2-receptor antagonist)を使用あるいは併用する。消化管運動賦活薬なども併用される。PPIに対する日本の保険適用は胃潰瘍としては8週間までと定められている。難治性の逆流性食道炎には、PPIの長期投与が保険上も認められている。 食道裂孔ヘルニアを併発し、症状が著しい例では手術(噴門部形成術など)を行う場合もあるが、一般には施行されないことが多い。原因がはっきりしている場合を除いては、ストレスによって発症する例が大部分を占めるため、薬物療法に加えて根治を目的とした精神科的治療を平行して行う場合もある。治療は長期化する場合が多い。

胸焼け(: heartburn)や消化不良(: Indigestion)には、対症療法としてアルギン酸ナトリウム: Sodium alginate)、炭酸水素ナトリウム: Sodium Hydrogen Carbonate)、炭酸カルシウム: calcium carbonate)などが胃酸過多に対して制酸剤として使用されている。

関連項目