贋作

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贋作(がんさく)とは、他者を偽る意図をもって絵画彫刻などの芸術品や工芸品に似せて模倣品を作成すること、またその作品のこと。偽作(ぎさく)とも言う。これに対して本物の作品のことを「真作」(しんさく)と称する。

概説

一般的に美術品や工芸品に使用され、書物の場合は偽書とも言う。また、偽造紙幣や偽造貨幣などは、贋作とは呼ばれない。

贋作の歴史は古く、ストックホルム博物館にはエジプト時代のパピルスにガラスから宝石を作り出す方法が書かれたものがある。また古代ローマの詩人ホラティウスなども『風刺詩』で贋作について言及したことがある。

贋作の作成の目的には金銭的目的・宗教的目的・権威付け目的・名誉目的・愉快犯などが挙げられる。また広義では、名声を貶めるためのものも贋作に含められる。ただし、模造品を作ること自体は違法ではない。例えば絵画では、先人の画風を見て、それを真似て描くことは、学校の美術の授業などで、ごく普通に行われている行為である。また、偽る意図のない模写・複製・レプリカなども、一般には問題視されない。模造品の真作と偽ると違法となる。

贋作を作成する人物は贋作家と呼ばれるが、これらの人物は裁判などでは「模写をしただけ」などの主張をする事が多く、単純な模写と専門技術を使った贋作との差が裁判の際には問題となることもある。

贋作鑑定

鑑定方法も多岐に及ぶ。基本的なものとして

  • 関連文書による鑑定
  • 作者別鑑定(同一作者の他物品と比較する方法)
  • 拡大鏡による視覚鑑定(絵画の場合なら筆のタッチなど)
  • 様式鑑定(ルネサンス時代ならルネサンス様式を守っているかどうか、など)
  • 用途鑑定(例えば、古代の本に手による汚れが付いていない事はありえない)
  • 技術鑑定(その時代にはない道具を使われた痕がないかなど)
  • 科学鑑定

などが上げられるほか、物品によっては味見・嗅覚による鑑定などもある。ただし、科学鑑定は時間と予算がかかるため、収集家には好まれていない。アメリカで行われた複数の科学鑑定の結果、鑑定だけにかかった金額が7,500ドルに達した例がある。

また、メトロポリタン美術館の絵画修復主任を努めたヒューバート・ヴォン・ゾンネンバーグは、科学的検査はかなり欠陥のある鑑定方法だとしている[1]

有名な贋作家

関連項目

脚注

  1. ^ 『にせもの美術史』トマス・ホーヴィング著、雨沢泰訳(ISBN 4-02-257361-9