観光

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観光(かんこう)は、一般には、楽しみを目的とする旅行のことを指す。

語源は『易経』の、「国の光を観る。用て王に賓たるに利し」との一節による。大正年間に、「tourism」の訳語として用いられるようになった。ただし、学者や論者によって定義が違うこともある。例えば、国土交通省『観光白書』では「宿泊旅行」を「観光」「兼観光」「家事・帰省」「業務」「その他」に分けている。この解釈によると、家事・帰省、業務、その他を除いた旅行が「観光」である。

国の審議会における位置づけ

観光政策審議会の「今後の観光政策の基本的な方向について」(答申第39号、1995年6月2日)」では、観光の定義を「余暇時間の中で、日常生活圏を離れて行うさまざまな活動であって、触れ合い、学び、遊ぶということを目的とするもの」とし、「時間」、「場所・空間」、「目的」の3つの面から規定している。

さらに、「21世紀初頭における観光振興方策について」(答申第45号、2000年12月1日)によると、「いわゆる『観光』の定義については、単なる余暇活動の一環としてのみ捉えられるものではなく、より広く捉えるべきである。」としている。

2008年10月1日国土交通省外局として「観光庁」が発足し、第1種旅行業者の登録は、従来の国土交通省大臣登録から観光庁長官登録に変わった。

日本における観光の意味の変遷

日本における「観光」という言葉の初出は、「観光丸」であるといわれる。昭和5年(1930年濱口内閣の時国際観光局は創設された。「観光立国」の筆者である岸衛の進言によって創設された。名称は、鉄道大臣江木翼の意見によったと言われている。博識であった鉄道大臣江木翼が『易経』を引用した[1]。この時期には、「大変珍しいもの」という程度で用いられていたといった見方もあるが、ツーリスト・ビューローの出版物TOURIST(1918年3月号)では、アイヌ文化を詳しく伝えて、国の光=文化の概念の普及に努めている。

概括的に言えば、観光は明治時代からある単語ではあるが、きわめて限定的にしか用いられず、むしろ今日で言う外国人観光客誘致、インバウンド誘致といった意味合いが込められていく。ツーリズムの訳語として充てられたのも、そうした時代背景がある。

なお、中国では「観光」は一般的ではなく、旅游、遊覧が用いられるようである。当時から、国内観光には、遊山、遊覧、漫遊、行楽などの用語が用いられ、今日の意味合いで、つまり、国内旅行の意味も含めていうところの「観光」が定着したのは1960年代以降とされる[2]

近年、再び國の光を観るという「易経」の解釈が引用されることが多くなってきた。原義を厳密に解釈すると、文字通り「見物」「物見」であろうが、「」という比喩的表現で対象が幅広く多様な解釈が可能な事も一因であろう。

庶民に観光と言うものが流行り出した当初は、観光に行くという事自体に価値があり、場所や何をするのかということは重点に置かれなかった。しかし、次第に観光に行くということ自体は当たり前となり、何処に行くのかということがステータスとなった。観光地を大きい見出しにしたパンフレット等が流行り出したのもこの時期のことである。しかし、その時代も長くは続かず、たいていの観光地には行ったことがある人が増え、何処に行ったということが自慢になる時代は終わりを告げた。

この頃から観光はステータスではなくなり、純粋な楽しみとしての観光が広まることになる。具体的には場所ではなく目的が観光を引っぱる時代となった。○○をしたいからそれができる場所を観光しようということである。体験型観光が流行り出したのもこの時期からである。現在はこの時代にあると言われるが、もう一歩進んだ次元にあるという考え方もある。それは目的だけでは客は来ない、具体的には楽しい気持ちになりたいとか、癒されたいとか、ゆったりした時間が過ごしたいとか、そういった感情が観光を引っぱる時代となったという考え方である。実際そういう言葉がパンフレット等に登場し始めていることも事実である。

なお狭義には、観光事業を指すこともある。

観光とツーリズム

使い分け

特に近年、「観光」という用語に物見遊山的な、あるいはビジネス的・事業的なニュアンスを感じる場合、あえて「観光」を用いず「ツーリズム」という用語を充てることも増えてきた。原義であるtourは、ろくろで回すという意味があるとされ、そういう意味では「周遊」に近い概念と言える。ただ、今日では「ツーリズム」は、「観光」とイコール、さらに広義では業務も含む「旅行」そのものと解釈されている。

しかし、近年はツーリズムという言葉は特に観光業者の間では特別なものと認識されることも増えてきた。かつての物見遊山的な観光をサイトシーイングとして昔の物とし、ツーリズムとは体験型観光として位置づける動きが強まっている。そして、ツーリズム自体もその特性によりさまざまな言葉を付加して区別している。環境に配慮したツーリズムをエコツーリズム、自然特に山や森などを扱うツーリズムをグリーンツーリズム、自然特に海を扱うツーリズムをブルーツーリズムと呼んだり、地域独自のツーリズム名が生まれたりしている。

観光関連団体

都道府県や市町村の観光協会・観光連盟等でも「ツーリズム」を冠する団体が見られるようになってきた。例えば、兵庫県では、「社団法人ひょうごツーリズム協会」と、大分県では「財団法人ツーリズムおおいた」と「観光」を冠していない。また、大分県竹田市では市町村合併に伴い旧自治体単位であった観光協会を統合、「竹田市観光ツーリズム協会」として再発足した(2006年3月)。

ツーリズムの付く用語

ツーリズムのつく用語は非常に多い。ただ、概念や理念が先行しているものもある。

アーバンツーリズムエアラインツーリズムエコツーリズムエスニックツーリズムオールタナティブツーリズムカルチュラルツーリズムグリーンツーリズムクルーズツーリズムアニメツーリズム産業ツーリズムサスティナブルツーリズムスポーツツーリズムセックスツーリズムソーシャルツーリズムソフトツーリズム体験型ツーリズムニューツーリズムネイチャーツーリズムハードツーリズムバリアフリーツーリズムフィルムツーリズムブルーツーリズムヘリテージツーリズムヘルスツーリズムマスツーリズムメディカルツーリズムルーラルツーリズム歴史文化ツーリズムなど。
※表記法として「ツーリズム」の前に「・」を付ける場合もある。

「観光化」の光と影

宿泊を伴うか否かにかかわらず「観光旅行」の普及と発展は、「観光地」にさまざまなプラスのまたはマイナスの影響を引き起こす。このような現象は「観光(地)化」と呼ばれるが、これについてはマスツーリズムに詳しい。

ビジター産業

「ツーリズム」には観光産業という意味もあるが、これに対して「ビジター産業」と呼ぶこともある。もともと米国発の発想で、目的の如何を問わず、その地を訪れる全ての人(ビジター)を対象にしていこうという考え方である。ただし、米国では来訪による移動の距離や宿泊を伴うかどうかにより、近隣や日帰りの場合は除外することもある(溝尾前掲書)。

脚注

  1. ^ 富田 昭次『ホテルと日本近代』(学芸出版)
  2. ^ 前出、溝尾前掲p8

参考文献

  • 溝尾良隆『観光学 基本と実践』(古今書院、2003年)を参考とした。観光分野の第一人者の著作で、諸外国での解釈や「観光」と「レクリエーション」「レジャー」等の異同についての詳しい説明もある。

関連書

  • 小口孝司 編 前田勇、佐々木土師二『観光の社会心理学―ひと、こと、もの 3つの視点から』千葉大学文学部人文科学叢書 北大路書房 ISBN 4762824968
  • Charles R.Goeldner,J.R.Brent Ritchie『TOURISM』 - 欧米の観光学のバイブルである。心理学からマーケティングまでP624の著書である。研究者、大学院生は、必読書である。 John Wily & Sons,Inc. ISBN 9780470084595

関連項目

外部リンク

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