聖職者

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聖職者(せいしょくしゃ)とは、宗教上重要な地位に就いている人間のことである。また比喩的には、教職など、一部の清廉高潔とされる職業に従事している人間を指す場合もある。

宗教上の聖職者

信奉する宗教において、生活の大半を教義信仰のために送る人間のことを指す。たいていの場合は、各宗教により特別な地位や呼び名がつけられている。(キリスト教における司祭や、仏教における僧正など。)

ある宗教に対して信仰心が厚いだけでは、聖職者とは呼ばれない。この場合は、どれほど熱心であったとしても、信者と呼ばれる。これに対し、宗教で定められている規範に則り、その宗教を深く信仰することを誓約した場合(主に入信、入門と呼ばれている)、その宗教を信仰する上での基本的な知識や作法を学ぶことになる。この課程を修了して、各宗教団体内で認められ、一定の地位または呼称を授与されてから、はじめて聖職者と呼ばれるようになる。

例外的に、宗教団体から階級の授与がなされていない者や、破門を受けた者の場合であっても、多くの人からの尊敬を集めるような善行をたくさん行っている人間であれば、聖職者と呼ぶ場合もある。

イスラームにおける聖職者

イスラームにおいて聖職者に当たるのはウラマーと呼ばれる人々である。キリスト教やユダヤ教やイスラームなどのアブラハム教系の一神教においては聖職者(Priest)とは神と人間の間を取り持つという意味があり考え様によっては一般の人より神に近い、つまりより神聖であると考えられうる。イスラームの建前としては神と人との間に仲介役を入れる、あるいは信徒間に階級差を設けることを嫌う傾向があり、ウラマーは聖職者ではないとかイスラームには聖職者はいないと主張される。日本語の「聖職者」はアブラハム教系一神教独特の事情とは関係ない概念であるが、一部のイスラーム教徒がこのような主張をするので意味が通じず誤解が起こっている。

キリスト教における聖職者

キリスト教では、「聖職者」と呼ぶ範囲・対象について、教派ごとに違いがある。

正教会では神品主教司祭輔祭)が聖職者と位置づけられる。神品以外の教衆副輔祭誦経者詠隊堂役等)は教役者には含まれるが、聖職者には含まれない[1]

カトリック教会では司教司祭助祭が聖職者であるとされる[2]。カトリック教会では聖職者と教役者はほぼ同義となっている[3]

聖公会では主教司祭執事が聖職者でありかつ教役者とされる。[4]伝道師等は教役者には含まれるが聖職者には含まれない。聖公会においては各教会の管理責任者は牧師の役職として位置づけられる[5]

プロテスタントでは万人祭司の教理から、牧師を聖職者とは呼ばず、教役者もしくは教職者と呼ぶ。教会での説教など職務の内容や性格は他から見てカトリックの神父などと同様に見える部分はあるため、一般的な日本語においては牧師も聖職者と呼ばれる [6] が、牧師が司祭(聖職者)でないというのは、プロテスタントの教義においては重要な点である。

職業上の聖職者

宗教とは関連しないものの、その活動自体に公益性が高く、尊敬に値する職業に就いている場合に、その職を聖職、その職に従事する人を聖職者と呼ぶ場合がある。これは特に教育関係の職業において顕著である。これは弁護士や医者ほど専門性のないにも関らず教師が「先生」と呼ばれることからも、日本において教師の社会的地位および教育に対する社会的期待をあらわすものである。ただし最近では、教師のスキャンダルなどの報道をうけて、宗教以外の職業に従事する人間を聖職者と呼ぶことは少なくなってきている。

脚注

  1. ^ 聖職者と修道士
  2. ^ キリスト教入門・火曜講座
  3. ^ 喜びと希望(Gaudium et spes)
  4. ^ 日本聖公会東京教区の"more"ページ
  5. ^ 聖アンデレ教会で皆さんをお迎えする聖職者たち
  6. ^ 新村出(編)『広辞苑 第五版』岩波書店、2004年、項目「聖職者」「牧師」頁。 

関連項目

外部リンク